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さんぽ絵日記 長勝寺の水行

海岸のイメージが強い材木座だけれど、それよりはだいぶ内陸に入った、横須賀線の線路に近いあたりにある長勝寺ちょうしょうじ。道路から見ると白っぽく新しい塀が目立つのでそんなに古いお寺ではないのかも、なんて思っていたが、やはりそんなことはなかった。鎌倉だもの。

境内にある法華堂と呼ばれる建物は、創建当時のもので、室町時代に建てられたのだという。

この日長勝寺に向かったのは年に一度行われている水行みずぎょうがあるからで、さんぽついでに立ち寄ってみようと思ってのことだった。山門や本堂には五色の布がかけられていて、さながら建物が正装しているような姿に私まで身が引き締まる。

水行専用の四阿あづまやの下にはなみなみと水の満ちた水盤があり、既に多くの見物客が集まっている。ほどなく、ふんどし姿の男性数名が登場。経を唱えながら桶でくんだ水を頭からじゃんじやんかぶりはじめた。

頭から水をかぶる修行僧たち

かぶりつきにいた私の方へもかなりの水が飛んでくる。2月11日、極寒の建国記念日。寒い!よく見れば慣れた見物客やカメラマンたちはレインコートにカメラを守るビニールなどを用意して準備万端で待ち構えていた。

もちろん水をかぶっている方々が一番寒くはあると思うのだけれど…勢いよく頭の上からかぶっている水は、気のせいかもしれないけれど、ほとんどが肩にあたって周りに飛び散ってているようにも見えなくもなかった(笑)

とはいえ、水行を終えた僧の体からは湯気が上り、見るからに寒そう。彼らは千葉にあるお寺で100日の厳しい修行を終えたのち、最後の仕上げにここで水行をするという。そう思ってみればみなそれぞれに凛としたお顔に見えてくる。

修行を終えた僧侶が記者のインタビューを受けているのが聞こえてきたのだけれど、感想は?と聞かれて、特にないと答えていた。もう何回もやっていることなので、と。

そうか、でも何度もやりたくなってしまう魅力があるのかしら、それともやる人がいなくて毎年頼まれてやっているとか、などと勝手に想像してみる。いずれにしても究極の修行は無の境地になるということだろう。感想など湧いてこないのが修行の成果なのかもしれない。

長勝寺の由来は、日蓮が松葉が谷に庵を結んだ場所だからだと言われているけれど、実はこの松葉が谷がどこであるか、特定できてはいないようで、近くのいくつかのお寺がそれぞれ、ここが松葉が谷だと言っていて、どこが本当の松葉が谷かの決着はついていないという。

名前こそよく聞く日蓮だけれど、名前くらいしか知らないので興味を持って調べてみると、この方、どうやら、なかなかの過激派だ。自分の宗派以外を焼き払おうとしたので、逆にほかの宗派から疎まれて、松葉が谷を追われてしまったのだと言われている。歴史は勝者によって書き換えられるから、本当のところはわからないけれど。ちなみに、追われた先で白猿が現れてかくまってくれたのが、逗子にあるお猿畠さるばたけで知られる法性寺ほっしょうじ。法性寺は長勝寺から1キロほど東の山の中にある。

帰りは本堂脇の塀にあった裏口のようなところから出て帰ったのだけれど、あとで調べたところでは、本来の正面はこちら側で、昭和33年に90度ずらした今の方角に山門が移設されたのだそうだ。この寺にいつもなんとなく閉じられた感じを抱いていたので、そういうことならと納得。

2月の鎌倉は寒かったけれど、しぶきを浴びてなんとなく晴れやかな気分にもなり帰りは材木座海岸へ。青空の海岸にはいつもどおりウェットスーツを着たウインドサーファーがたくさん。ある意味この方達も修行だよな、と思ったり。



山門の移設についてはこちらを参考にさせていただきました。


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