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#54 国立マンション訴訟① 明和地所は何を学んだのか

 国立マンション訴訟とは、東京都国立市での高層マンション建設を巡って複数回争われた一連の裁判である。狭義では、反対住民が明和地所に対して行った建築物撤去請求訴訟(民事訴訟)を指し、1審判決(2002年12月)は、原告側の主張を認め、竣工済みの高層マンションの20m以上の部分について撤去を命じた。しかし、その後の高裁判決、最高裁判決では認められず、確定した。

 JR国立駅から一橋大学前を通って南に伸びる大学通りは、サクラ・イチョウの並木と広々とした風景が広がり、学園都市・国立のシンボルとして長年市民に親しまれていた。そこに明和地所が高さ44メートルの14階建てマンション(343戸)を建築しようとしたことから問題は始まった。

 問題はこじれにこじれた。最終的には明和地所の勝訴という形で結審したが、明和地所が本当の意味で勝ったのかどうか、私には疑問だ。事実、明和地所は利益、社会的信頼など、多くのものを失った。市民の心、件のマンションに入居した人たちの心、それを想像すると胸が痛む。

 いま、海老名市の相模国分寺跡隣接地に住民・市民の反対を無視して、明和地所による14階建てマンション建設が計画されている。
  疑問なのは、住民・市民から建設反対の声が上がることが明らかなのに、明和地所は、何故相模国分寺跡隣接地に高層マンションを建設しようとしたのかということだ。国立での経験があれば、そのようなことを計画しないはずなのに。
 明和地所は国立マンション訴訟で、環境問題、企業倫理、人権など多くのものを学んだはずだ。しかし、その学びのなかから、「いまの法律では計画を阻止されることはない」ということを最優先させているかのような振る舞いを続けている。その結果、「相模国分寺跡マンション建設問題」として再び社会問題となってきた。

 住民・市民は傷付き、マンション入居者も傷付く。お互いが傷付く建築物ってなんなのだろう。明和地所は国立と同じことを繰り返しているように見える。
                            (22.12.16)

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