見出し画像

夏の朝

夏の朝。
遠くから朝陽の差し込む早い時間に、たまたま庭に出て

”朝だ〜っっ!”

って胸いっぱいに朝の空気をすって両手を空に向かって大きく伸ばした。

あ。。。この匂い。。。

どこかすごく懐かしい匂いにつつまれた。

ひんやりしていて、ちょっと水分を含んだ空気。

この匂い、知ってる。。。

遠い昔の夏休み、毎朝通ったラジオ体操。
ラジオ体操カードを首から下げて、近くの小さな神社の広場へ向かう。
このカードは夏休みの宿題の一環だったっけかな?
体操が終わると、カードにスタンプをついてもらえる!
それが地味に嬉しくて。
また、この朝の空気が大好きだった。
土手の草の匂い、田んぼの青々とした稲の匂い、神社の杉の匂い。

あ〜。。。夏休みの匂いだ。
ラジオ体操の匂いだ。

大人になってからは、久しく感じることのなかった感覚。
ひんやりしているのに、身体の中に入ってくると、ほわ〜んって暖かくなる。
瑞々しくて清々しい。

こんなところで出会えるとは。。。

美味しい空気って、旅行先での大自然の中とか、スキー場のてっぺんとか、温泉旅館の朝とか、いろいろあると思うんだけれど。。。

この小学生だった頃の、何でもない夏休みの朝の空気が、とりわけ特別に感じるのはどうしてだろう。
他のどんな素敵な場所で感じたものよりも、キラキラと私のなかに蘇ってくる。

この幸せなひとときは、しばらくすると空気の中に溶け込んでいった。

そんな、私だけの密かな特別な朝でした。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?