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この救急車やたら遅くない!? 〔なんで遅いか知ってます?〕

こんにちは。さんぺーです。
前回の自己紹介の記事で、僕が消防士であることをお伝えしました。

☝コレです。


現在は、救急隊の隊長として救急隊に乗り
日々、急病人や怪我人を病院へ搬送しています。

患者さんの搬送中は、
ある理由でスピードを抑えます。

今回は、その理由について解説します。


結論


細かく説明すれば
いくつか理由が挙げられるんですが、

ひとことでお伝えするならば、


患者さんのため


なんです。

もう少し肉付けすると、


「患者さんを 安静に搬送するため」



あなたが骨折をして救急車を呼んだとします。
その搬送される道中、救急車がぶっ飛ばして
跳ねるは左右にふられるわ、

なんて運転されたらどうでしょう?


きっと骨折したところが痛んで、
「もうちょっと優しい運転して〜」
と思うでしょう。


他にも、“めまい”を訴える患者さんなら、
車酔いで症状が悪化したり、
嘔吐を誘発するかもしれません。


こんなことにならないよう、
患者さんを搬送するときは
”できるだけ、安静に”
搬送しているんです。


そして、もうひとつ大切な理由があります。

それは、

救命処置を行うため


患者さんの心臓が止まっている、
もしくは、止まりそうなとき、
救急救命士の資格を持った隊員が、
“特定行為”を行うことがあります。


”特定行為”というのは、医師の指示のもと
患者さんの腕などの静脈に針を刺し
心臓の動きを強くする薬を流したり、
血圧を保つために輸液を流したり、

というようなことです。



揺れたり跳ねたりする車内だと、
静脈に針を刺せません。


もうひとつ、大事なのが、

電気ショックを正確に行うため


AEDをご存じですか?


そう、誰かが倒れた時に
「もってきて!」
って頼まれる、アレです。


電気ショックを行うときの大事なポイントって、
【患者さんの心臓の状態(動き方)】
なんです。


えっ?

AEDって止まった心臓を
復活させるアイテムなんじゃないの?


と思った人!

これ、
多くの人が誤解してしまっているんですが、

そうではないのです。


あれは、

心臓が正常に動いていない
けいれんのような状態(VFやVTといいます)
のときに電気ショックを行い、
正常な動きを取り戻させることを目的

としています。


で、正常に動いているか
判断するために用いるのが”心電図”で、

患者さんを揺すったり動かしたりすると、
心電図の表示がぶれて
正確に読み取れなくなります。


健康診断などで心電図の装置をつけたとき、
みなさん、「動かないでくださいね~」
って言われますよね?



はい。そゆことです。


救急車には心電図モニターが備わっていて、

救急隊はそのモニターに表示された波形を見て
電気ショックが必要かどうかを判断し、

AEDのほうは、波形は表示されませんが、
心電図波形を自動で読み取って判断しています。


車が悪路を走行していたら、
正しい波形が表示されませんよね。

こんな理由でも、
ゆっくり走ったり、時には停車したりもします。


速く走ることもあるんだよ。


とはいえ、じゃんじゃん走行することも
もちろんあります。


「意識がない」「のどになにか詰まった(窒息)」
など、1分1秒を争うような現場に向かうとき

「多少揺れても、
 1秒でも早く医師の処置が必要」

という状況のときは、
患者さんの搬送中でも飛ばすことはあります。



あとがき 


この記事を書こうと思ったきっかけが、
患者さんの搬送中、ゆっくり走るがゆえに、
後ろが渋滞してしまったりすることが
しばしば起こるから、なんです。


そんな光景を目にすると、聞こえてくるんです。

「救急車のくせに、やけに遅いじゃないか!」
「緊急ならもっとスピーディーに走れよ!」

そんな、後方のドライバーの心の声が!笑


ということで、救急車は


バウンドポイント前で急に減速したり

でこぼこを避けるために道路の真ん中を走ったり

心電図波形を読み取るためにのろのろ行ったり

針を刺すために停車したり


します。


みなさんから見たら
予測不能な動きに見えると思いますが、

こんな理由があることを知っていただき、
納得したうえでご協力いただけたら
互いに気持ちいいだろうな、
と思ってこの記事を書かせていただきました。

この知識が
みなさんのお役に立てたら嬉しいです。


また、消防に関する疑問・質問・ご意見などありましたら、
ぜひコメントください。

こう見えて、消防の中でも、
火消し・レスキュー・救急
119の受付・建物の火災予防の検査業務
など、わりと多くの分野に
携わった経験がありますので!


最後までお読みくださり、
ありがとうございました。

また次回の記事でお会いしましょう!

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