見出し画像

鹿島槍天狗尾根遭難を総括する(遭難)(原文)⑨

学習院大学山岳部 昭和34年卒 右川清夫

細井久栄氏の提言(その2)

 2010年7月25日に小谷明氏、細井久栄氏、舟橋明賢氏、芳賀孝郎、右川清夫、井ケ田傅一、贄田統亜、檜山栄司、藤大路美興、永田秀樹による遭難原因究明のための座談会が部室で行われた。

 現場の状況について、小谷氏から克明な説明が行われ、始めて4人の出発後、ある時間が過ぎてものすごい地響きがしたとの発言があり、面発生乾雪全層雪崩に当てはまる雪崩であることが、裏つけされた。

 雪崩の原因は、4人の体重が物理的に亀裂を生じ雪流に巻き込まれて流されたと推察するほかはない。 冬の山では気象と雪を一体化した技術が求められる(日本大学山岳部OB、菅原省司氏)気象変化による雪の結晶と積雪雪崩についてご自分の遭難体験から述べられている言葉を引用すれば下記の通りである。

曰く
 気象学と雪氷学は学問上は別物だが、登山者にとっては空間での現象と積雪となった地上での現象の変化は、一体での判断が求められる。 そもそも雪崩れるとは雪が降らなければ崩れない。 雪が降るためには雪の結晶が空間でできなければならない。 空中での雪の結晶ができるためには、大気の現象の変化によることを知る必要がある。 これらの条件の変化が大きくかかわるのが、雪崩現象である。
 雪崩とは目に見えない現象の変化による、過程での結果である。 言い換えると雪崩に対する判断はいわばひとりひとりが持っている勘に頼ることが多い。 登山者が勘と感を研ぎ澄ませるためには、相当の時間と経験が必要になってくる。  

日本大学山岳部 菅原省司氏

 小谷氏の言葉から受け取れる表現しようのないという言葉の端々からも、共通する教訓がうかがえる。 また、その言葉の中には、一人生存したものが背負う4人への気遣い、責任、事件を伝達する難しさなど、同行して生き残った者だけにしかわからない苦悩がにじむ。

 今回の遭難が、全くの不可抗力であったとはいえず、リーダーのコース選定に判断の甘さがあったことは否定できない。

 最後にこの遭難について、小谷氏は現場にいたものとして「学生山岳部のリーダーが有する能力をはるかに超えていた」という。 かつて大先輩松方三郎氏は「神に召された」と。。。。。

「鹿島槍天狗尾根遭難を総括する(遭難)(原文)⑧」から

「鹿島槍天狗尾根遭難を総括する(遭難)(原文)⑩」へ

#学習院大学 #学習院大学山岳部 #学習院山岳部 #学習院山桜会 #山桜会 #大学山岳部 #遭難 #鹿島槍ヶ岳 #鹿島槍ヶ岳天狗尾根

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?