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鹿島槍天狗尾根遭難を総括する(遭難)(原文)㉑

学習院大学山岳部 昭和34年卒 右川清夫

(4)濃霧で視界がほとんどなかった、というのは朝方気温が高かったという状況を示す。

 気温が高いということは、新雪がドカ雪となって降り積もっている場合には、極めて確度の高い雪崩誘発の原因となる。 毎年、3月の気象予報で、気温が高くなると予測される日は、必ず雪崩注意報が出て、その危険を警告しているのは、誰もが承知していることだ。

 積雪の接地面の雪が、気温の上昇で溶けることによって、しばしば底雪崩を引き起こすことがあるが、これも、春先は底雪崩、厳冬期は表層雪崩と決めてかかるのは誤りである。 一般的にその傾向があるとはいえ、春先でも硬い根雪の上に積った新雪の表層雪崩はあるし、厳冬期に地形、積雪の状況では底雪崩が発生することも充分にあり得る。

 いずれにせよ、気温の上昇、気温が高いことは、そのままで、雪崩発生の引き金となる。 極めて確度の高い赤ランプが点滅しているものと見るべきでる。

 天狗の鼻の場合、(1)~(4) の条件が揃っている上に、(5)の赤ランプが点滅していたのだから、雪崩はほぼ必然だったといってよい。 テントを出発したことが、ただちに新雪表層雪崩に直結したのである。

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