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鹿島槍天狗尾根遭難を総括する(遭難)(原文)⑯

学習院大学山岳部 昭和34年卒 右川清夫

他の原因は成立しない

 この遭難の原因として幾つかの意見があったが、いずれも、現場の実態に照らして誤りであり、原因にはならない。 結論についての疑問にも触れておいた。

(1)雪庇の踏み抜き?

 かなり長い間、新雪表層雪崩ではなく雪庇を踏み抜いたのではないかとの意見があったが、2010年7月25日、OB舟橋明賢の招集で、小谷明、細井久栄、芳賀孝郎、右川清夫らが部室に集まった。この場で、小谷明の証言によってこの件は解決した。

 小谷は、待機している間4名の降った方角を偵察したが、テントを出てすぐの急斜面が始まるところで、新雪表層雪崩の跡を確認している。 この場所に雪庇は全くなかったと言う。 遭難当時の捜索過程でも、小谷の案内で星野がこの雪崩の跡を見ており、実際に現場で確認したことを、小谷は天狗尾根の上部から星野とともに改めて再確認していたのである。

(2)降る方向を間違えたのが原因?

 「彼等は、もっと右よりの尾根に続く正しいルートに向かうべきだったが、左寄りにマカリ澤の方向に降ってしまった。 登った時と同じルートを辿らず、ルートを間違えたのが新雪表層雪崩に巻き込まれた原因である。」というものであって、かなり、根強く繰り返されてきた。

 捜索の過程で、山崎徹、芳賀孝郎等が、天狗の鼻にテントの撤収に向かっているが、山崎徹は、この時の経験を次のように証言している。

「天狗の鼻を真下から見上げると、頂上からの雪崩によって一面草付きの急斜面になっていた。滑りやすいこの斜面を登るのに苦労した。」というのである。

 尾根に続く正しいルートのこの急斜面で、実際に雪崩が発生していたのである。 仮にこの正しいルートに向かっていたとしても、地形、気象状況による雪崩発生の危険性は、マカリ澤へ降るのと同じだったことを物語っている。 繰り返し述べてきたように、周囲はどの方向でも急斜面の降りで、雪崩は一触即発の状態だったのである

 従って、ルート・ファインディングのミスが遭難の原因だとするのは、誤りである。 ルート・ファインディングは技術上の問題だが、この遭難の特徴は、それが技術以外のところで起こったことにある。 技術なら、大鈴、小鈴のレベルは、いずれも高度の水準に達していた。

「鹿島槍天狗尾根遭難を総括する(遭難)(原文)⑮」から

「鹿島槍天狗尾根遭難を総括する(遭難)(原文)⑰」へ

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