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脳出血当事者でも働きたい!納得できるキャリア設計の方法①

「以前の仕事に復職するぞ…!」「今の自分に合った仕事で復職したい…!」など復職を目標にリハビリをする方はさまざまな決意を抱いていると思います。

この記事では24歳で脳出血を発症した後、発症前と同じWeb編集者として復職した私の経験から、復職を目指している脳出血当事者、そのご家族に向けて「復職前に必要な準備」についてご紹介します。

▼脳出血を発症した経緯と闘病についてはこちら

復職に必要な身体機能を改善させる

まず、回復期リハビリでは入院時に「リハビリテーション計画書」を担当医と相談しながら作成します(入院後は担当医が月次で作成し、当事者と家族が確認する)。

もちろん日常生活での自立も重要ですが、当事者が復職を希望している場合は「復職するためのリハビリをしたい」と明確な目標を担当医へ伝えて、リハビリ計画に取り入れてもらう必要があります。

なぜなら、復職をするのために必要なリハビリは当事者の職業や職場環境によってさまざまなので、個人に合わせた応用的なリハビリが必要だからです。つまり復職のためのリハビリは次のような構造になります。

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私の場合は都内の人混みの中で通勤が必要になったため、都市部の通勤ラッシュ時に電車に乗って通勤のリハビリを実施していただきました。

また職業がメディアのWeb編集ライターであり、当時は取材記事も多く担当していたため、リハビリの担当医に協力いただいて取材を実施し、その後に文字起こし・編集・校正をする実務のリハビリも複数回実施していただいています。

復職のためのリハビリの中でも実務訓練を計画に盛り込んでいただくためのポイントは、復職を予定している仕事の内容をなるべく詳細に担当医へ伝えることです。複数人の担当医にも伝わりやすいよう、口頭ではなくペラ一枚の資料を作成するのがおすすめです。

当時、私が担当医にお渡しした資料の項目は次のとおりです。

通勤の様子:経路、乗換回数、利用駅の大まかな利用者数(鉄道各線のHPなどで調べられます)

仕事の様子:仕事内容、仕事をする環境(コミュニケーション量は社内と社外どちらが多いか、作業環境は静かか雑音が多いか)

最もリハビリが必要だと思っていること:麻痺や脳機能の低下に対して仕事で必要になる動作や脳機能のギャップが大きいこと

復職前に知っておきたい3つのこと

次に回復期リハビリから復職するまでの流れや心構えが理解しやすいよう、私の経験をもとに「復職前に知っておきたい3つのこと」をご紹介します。

復職までの流れや復職後についてイメージしてみてくださいね。

〔1.復職に必要な情報や資料を早めに準備すると良い〕

基本的には企業担当者の働きかけにより、復職の日程調整などが行われますが、脳出血当事者やそのご家族が用意することで復職がスムーズになる情報や資料もあります。

復職前に時間がある期間を活用して担当医から情報を収集し、資料を作成しておきましょう。

資料の作り方とサンプルデータについては後ほどご紹介します。

〔2.復職前に認知できていない症状もある〕

急性期から回復期までは、病院内などの静かな場所で大半の時間を過ごすため、情報量や人間関係が限られています。

一方で復職後は、チャットや複数人の会議など方々から届く情報を処理する必要があり、関わる人の数も増えるため負荷がかかります。

これらの要因からWAIS-Ⅲや入院時の様子からリハビリ担当医が高次脳機能障害の診断をしていなかったとしても、環境の変化で高次脳機能障害のような症状が出ることもあります。

▼高次脳機能についての参考記事はこちら

〔3.病前のパフォーマンスを発揮できない場合もある〕

後遺症の程度や、低下した脳機能と復職ポジションに必要な能力の関係性などによって差はありますが、病前のようなパフォーマンスを発揮できないこともあります。

ただし、仕事のスケジュール管理やツールの活用などの工夫次第では、会社から求められた目標を達成することも可能です。工夫をしても成果が出せず、悩んでしまう場合は上長と相談して、ポジションの変更や業務調整も視野に入れておくと安心です。

復職に役立つ情報とは

復職に役立つ情報とは「人事や上長が復職可否を判断するための情報」です。

主に次のような項目が挙げられます。

・身体と脳機能の状態

・業務にかかる時間(タイピングや書類作成など)

・配慮が必要なこと

これらの情報を収集したら、復職に必要な資料を作成します。資料の作り方とサンプルを次の章でご紹介します。ぜひ、活用してください。

復職に必要な資料の作りかた

リハビリ病院の場所が復職先の企業と近い場合、担当医と企業担当者(人事など)が直接情報交換することも可能です。

しかし、かつての私のようにかかりつけリハビリ病院が遠方かつ、オンラインミーティングなどに疎い企業担当者の場合は担当医と企業間の情報交換が円滑に行われない場合もあります。

また担当医と企業間の情報交換が可能な場合でも、復職に際して身体や脳機能についてまとめ、実際の業務に結び付けて書面で報告できることは、ある意味当事者の能力を示す指標です。

▼以下に2018年当時、私が復職する際に作成した報告書のサンプルを格納いたしましたので必要な方はぜひご活用ください。

人事・部署のメンバーとコミュニケーションをとる

復職の準備が済んだら、人事や部署のメンバーに連絡をしてみましょう。部署のメンバーとのコミュニケーションは可能であれば急性期の頃から断続的にとっておくと安心です。

なぜなら私は会社の規定どおり人事と連絡を取り、復職日が確定していたにも関わらず、復職前日まで人事から部署に情報が伝わっていなかったからです。

▼当時の様子はこちらから

幸いにも懇意にしていた先輩と急性期から連絡をとっていたため、復職日前日に先輩を通じて部署内に復職することが伝わりました。

部署メンバーとコミュニケーションをとっておくメリットは復職日が部署内に正確に伝わるだけではなく、復職後の働きやすさにも繋がるでしょう。

復職初日を成功させるポイント

復職初日は「満員電車に乗れるかな…」「メンバーと話せるかな…」と不安を感じる場面も多いと思います。

そんな不安を解消して1日を成功させるポイントをいくつかご紹介します。

〔1.通勤ラッシュを避け、余裕をもって通勤する〕

通勤ラッシュを避けて、余裕をもって自宅を出発できるように事前に電車の時間を調べておきます。

リハビリ病院の退院から復職までの期間が開いていれば、通勤ラッシュ時の電車に乗って模擬出社(会社付近のカフェなどに行く)をしておけばさらに安心です。

〔2.会話は「相手から聞かれたら話す」「相手の様子を伺う」が基本〕

復職初日は久しぶりの出社で感情的になりやすいですが、自分が休職中に仕事をしてくれていたメンバーの様子を観察しながら会話をすると良いでしょう。

相手ファーストの会話を心掛けることで復職後の自分がどのようなポジションにいるのか、また部署のようす(繁忙なのか、変革期でギクシャクしているのか…など)が分かりやすくなるメリットがあります。

〔3.定時で退社し、1日の業務を振り返る〕

念願の復職で「もっと仕事がしたい…!」と思うかもしれません。

しかし復職初日はもちろんですが、復職後半年~1年は定時内で仕事をこなすことが大切です。

復職直後に残業をしすぎて体調を崩しては、部署のメンバーや人事も当事者に仕事を任せることに不安を感じてしまうからです。

仕事量が多ければ上長と相談しながら多少の残業をするか、仕事量を調整してもらえるよう相談してみましょう。

この記事が復職を目指す脳出血当事者やそのご家族の一助になれば幸いです。

▼脳出血当事者の自己分析と就職活動・転職活動について知りたい方はこちら

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