見出し画像

JUDGE

前置き

 さて、またまた久しぶりの投稿になってしまいました。
私事になりますが、少し時間もできたので久しぶりにnoteを認(したた)めてみようと思います。開幕戦のレビュー記事を書いてもう少しやれるかなと思ってみましたがやはり3日坊主の私には無理でした笑

 それではお付き合いください。

 Jリーグも後半戦に差し掛かり熱戦が繰り広げられております。そんな今年も様々なトピックスがありました。皆さんは何を思い浮かべますか??私は個人的にヴィッセル神戸のサポーターなのでこれまでのよもやの快進撃に驚きと興奮の日々を過ごさせていただきました。
 そんなJリーグですが6月にJFAの扇谷(オウギヤ)審判委員長からこのような発言があったと話題になりました。

『J1第15節までの得点やPK、退場などの重大な事象において、主審31件・副審27件の誤った判定があったと明かした。』

https://web.gekisaka.jp/news/jleague/detail/?385452-385452-fl

 15節までに合計58件の誤った判定があったということです。皆さんは多いと思いますか?少ないと思いますか??またこちら『得点やPK、退場などの重大な事象において』とあるのでスローインの刺し間違えや細かなファールを取った取らなかった等ではないということです。15節までで58件ということは単純計算1節あたり4件弱、試合は9試合あるので2つに1つの会場で重大なインシデントが起こっているということになります。VARの介入で正されたジャッジも含まれている。とのことですが僕自身は非常に多いと感じました。その要因はどこにあるのか、いくつかに分けて分析させていただきます。また後半では私自身が今年から神戸市社会人リーグの審判を担当させていただく中で感じたや審判の難しさについても少しお話しできればと思います。ヴィッセルの試合はここ3年間程ほぼ毎試合現地で観戦し、ジャッジリプレイ等も殆ど視聴しているようなサッカー漬けの生活を送っておりますのででサポーター、選手、審判、色々な角度からお話しできればと思います。

見解

①VARの運用についての問題

 VARはドイツブンデスリーガとイタリアセリエAで2017年-2018年シーズンから本格的に導入が始まりました。同2018年のロシアW杯でも導入され一躍世界中のサッカーファンに認知されるようになります。Jリーグでは2019年のルヴァンカッププライムステージ準々決勝に試験的に導入、2020年シーズンから本格的に運用が始まりました。2023年の今年で4年目、意外と早いものですね。
 このVARですがあくまでサポートです。名前の通り『アシスタント』です。何度も言われている通り『はっきりとした明白な間違い』がない限り介入ができない。というのが大前提になっています。VARは私からすると審判の性善説によって運用がされていると思っています。例えば、ひとつのプレーを取り上げてみましょう。

 こちら2023年6月3日のFC東京vs横浜Fマリノスの試合でFC東京の松木玖生選手が退場になったシーンです。DAZNの「ジャッジリプレイで取り上げて」の中で司会の桑原さんが『このシーンはノーファールからレッドカードになりましたが最初の時点でイエローカードが出ていたらVARは介入していましたか?』との問いに『イエローカードが示されていればVARは入らなかった可能性が強いのではないか』と国際審判員の家本さんが仰りました。また、いくつかの映像がある中で『この映像を見ればイエローに見えるし別の映像を見ればレッドに見える』とも発言しておられます。大前提、私より明らかに家本さんの方が審判に関する知識も見識も経験も深い方ですのでそういう見方なんだと納得はしていますが、プレーヤー目線からすると納得できない面もあるのではないでしょうか。このシーンで言えば松木選手の肘が顔に当たっているという事実は一つです。またその強度や勢い、スピード等も事実として存在するのは一つです。上記に記した点で問題だと思うのは2点、①点目は映像によって判定が覆るのであればいくつかの映像を見比べて最終ジャッジを下すべきではないか。②点目は審判が事象について認識していればVARは介入できない。この2点です。①点目の映像についてですがこの角度から見れば退場で逆にこの角度から見れば退場に値しない。というのであれば複数の視点から複合的に判断を下すべきです。にも拘わらず、一つの視点からのみ判断していることに私は納得することができません。一番見やすい角度からのみ確認して判定を下すべきではないということです。
 そして②つ目の方が私自身としてはVARの運用として深い問題があると考えています。このシーンを取り上げて考えると主審の清水主審は松木選手の腕が当たっていること自体を認識できていませんでした。そのためVARが介入してレッドカードに変更になった訳ですが、もし清水主審が腕が当たっていることを認識した上でプレーを継続させた場合はVARが介入することが難しくなる。というのが現行のVAR運用ルールになります。実際この接触は本当に一瞬です。その程度や強度について瞬時にまた正確に判定を正すことは非常に難易度が高いことだと考えています。だからこそ例え接触が確認できていたとしてもその程度や強度について正確に把握できていない場合やVAR担当が何度か確認する中でその主観をもってOFRするべきだと考えたならばVARが強くリコメンドするべきだと私は考えています。

②VARが審判の決定力に作用しているのではないか

 VARがJリーグで運用開始されてから早4年目、特に最近『それVARなかったら流されてたけど本当に大丈夫なの!?!?』と思う判定が増えてきているように感じます。

 こちらは2021年10月24日の名古屋グランパスVSヴィッセル神戸の試合で起こった事象になります。動画の2:13あたりを確認してください。ペナルティエリア内でボールキープをした武藤選手が右足でボールを運び出したタイミングで逆の軸足である左足に吉田豊選手がタックルを仕掛けます。ボールからは1m程離れており、武藤選手はその場に倒れ込みます。しかし、今村主審は笛を吹くことなくプレーの継続を選択しました。後にVARが介入してPKに判定が変更されましたが明らかにファールかと思われたこのプレーにその場でファールやイエローカードの判定は下されませんでした。私自身今村主審へのリスペクトは大前提としながらも彼のポジションについてはその技量を疑わざるを得ないと考えています。

ペナルティエリアに侵入、左に主審を確認できる。
ボールを持ち運びカメラアングルが変わるも主審に動きはない
ファールのシーンも主審の位置は確認できない
プレーが完結して漸く主審の場所が確認できる。
その場所でプレーはきちんと目視できたのか??

 ペナルティエリアにボールが入った瞬間にグッとプレーをフィーチャーしますがそこからボールが移動するに伴って本来であればペナルティアーク右あたりにポジションを変えなければなりません。恐らく今村主審のポジションさ大きく変わっていないのではないかと思います。4枚目の写真にしてようやくペナルティアークにポジションが変わっていることが分かります。
 これが今村主審本来の能力なのかはわかりません。ただ私は『「VAR」があるから何かあっても後から確認すればいい』という慢心があるのではないかと思います。もちろん主審としての責務を全うする思いを持ってピッチに立ってらっしゃるのは理解しています。しかし『難しい判定はVARを確認してから最終のジャッジを下せばいいんじゃないか。』と考えているのではないかと思うシーンの象徴でした。
 またこういったシーンは何度も見かけます。先日の国立競技場でのFC東京VSヴィッセル神戸のパトリッキ選手の被ファール+PKも上記と似たようなシーンなのではないかと考えていますし、こういった「VARがなければ見逃されていた判定」が散見されるのはVARがあるからこその慢心、弊害なのではないかと考えています。

実際に主審をしてみての雑感

 大学2年次にサッカー審判資格4級を取得し、一度消失しましたが、昨年サッカー審判資格3級を取得しました。今年よりアクティブ3級として活動しております。アクティブ3級は体力テストが2級相当に設定されており、活動内容としては神戸市社会人サッカー1部の主審に派遣されております。私自身2級を目指したいとかプロを目指したいとかは全く考えていませんが自身のサッカー観の醸成に大事になるのではないかと考え活動しております。
 一番苦労するものの1つに「ポジション取り」があると思っています。そしてそのポジション取りは主審をしていく中で最も重要な要素の1つだとも考えています。サッカーのボールより人間が速く走れることは絶対に不可能です。その為プレーを予測してポジションを取ることが大切ですが、プレーの事象は本当に一瞬です。そのプレーに注目していても見逃すことは多くありますし、見ようとした瞬間にその事象との間に他の選手がフレームインしてくることもよくあることです。草サッカーであれば意図したプレーとは全く違う結果になってしまう。(蹴ろうと思った方向にボールが飛ばないなど)という事もこれもまたよくあります。プロであればそのスピードはより増しますしこれを全て正しく人間の目で判定する事等、絶対に不可能なと感じています。細かいプレーで選手から謂れのない言葉を浴びせられることも多々ありますし、生活が懸かっているプロ選手であればより一層その言葉には重みが違ってくると思います。その言葉を受ける、試合を捌く審判の責任の重さも非常に伝わってきているところです。

今後のVARの運用への提言

 ここまで非常に長くなりましたが最後に私自身の今後のVARの運用に関しての意見を記して終わりにさせていただければと思います。
 結論、もっと柔軟にVAR(特にOFR)を確認していくべきだということです。人の見れる範囲なんて本当にたかが知れています。審判がプレーにだけ集中していては職務が全うできないことも理解しています。現状のVARでは主審が『全く確認できなかった事象』のみに運用が限られています。審判がゲームを進めていく中で「いや、ちょっと今のは自信ないな…」とか「ぶっちゃけ今のは見えなかったな」と感じればVARに要求してどうだったか確認できるように運用を変えるべきだと思います。ゲームの流れ等を心配する声もあると思いますが現状適用されている「得点かどうか」「PKかどうか」「退場かどうか」「警告・退場の人間違い」は全てVARをチェックする以上に試合の流れを変えかねない決定的な要素になります。
 また先日バスケットボールのW杯で知ったのですがバスケットにはヘッドコーチチャレンジというものがあるそうです。野球でいうところのリクエスト、監督が審判にビデオチェックを要求できる制度のことです。サッカーも試験的に取り入れてみるのはどうでしょうか?試合の中で成否に問わず1度だけ絶対にOFRをチェックしなければならない仕組みです。バスケや野球と違って1点が決定的に重いサッカーでは難しい気もしますが人間には限界がある以上テクノロジーの力をもっともっと借りるべきではないでしょうか。
 更に付け加えるとこれほどまでに審判の名前と顔がNET上で晒され、謂れのない言葉を受けることも考えるとやはり審判の報酬は更に上積みされるべきということもお伝えしておきます。現状J1の主審で1試合12万円、副審で6万円です。プロフェッショナルレフェリーは現状日本に主審で14名、副審で4名しかいません。J1で全節主審で笛を吹いたとしても400万円ちょっと、カップ戦や天皇杯、J2、J3の審判をしたとしてもサラリーマンの平均年収を少し上回る程度でしょうか。責任と報酬が釣り合ってない様に思います。よりリーグとしての価値を上げなければ報酬に反映しづらいという点もあるかと思いますが、この問題もきちんと今後考えていくべきではないでしょうか。

 非常に長くなりましたが私自身が現状の審判制度特にVARに関して抱えていると感じる問題点と簡単ではありますがその打開策について述べさせていただきました。また機会ありましたら記事の執筆もさせていただければと思います。長い文章最後までお読みいただき本当にありがとうございました。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?