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寝言に怯える

彼岸花

中秋の名月も過ぎ、陽も落ちると少し肌寒く、もう一枚羽織ろうかと感じる季節になった。
野原、道ばた、街路の植え込み、はたまた我が家の庭にまで、彼岸花が咲いている。
「彼岸花」
ちょっと可哀相な名前をつけられて、それでも、秋を彩るべく、ひと華咲かせようと赤く色づく「いじましさ」が感じられて、私にはちょっと切なく伝わってくる。

金木犀

私の働く事業所は、地方の一都市にしては広大な敷地を持っているのだが、本部庁舎前の通路脇などに、キンモクセイの低木が、そこかしこ植えてある。
出退勤時などに歩いていると、良い香りがあたりを漂っているのに出くわして、そんな「香りの付いた空気の固まり」と言ったものの中を歩いている自分が、都会の人にはない贅沢をしている気がして、ニヤリとし、ちょっと嬉しくなる。

おいのり

何回も記事に書いていて申し訳ないが、出勤時に見かける、自転車に乗った小さな男の子とそれを押す若い母親の姿。夏に比べてあまり見かけなくなってきたけれど、それでも今朝は見ることができた。
そんな光景をみただけで、純粋に幸せを貰った気持ちになる。
「どうかこの母と子に、つらいことなど何ひとつない、ただただ幸せだけを、ずっとずっと与えてやって下さい」
いったいどの神様にお願いしたのかもわからないような変なお祈りを、ひとり車のなかで呟いたりもする。

寝言

先日の朝。私の後に起きてきた嫁の、おはよう代わりの開口一番に驚愕してしまった。
「おとうさん。あたしが昨夜、寝室に行ったら、あんた、布団の中でなんだかうなされていたよ」
「え?まじ?」
「まじですよー。『うーんうーん』でもないんだけと、なんかやたら唸っていた。なんていうか悲鳴に似たような声」
そう言われれば、昨夜、女の夢を見たことをハッと思い出した。
そして思わずポッと顔を赤らめ、次にすぐ不安になり顔面蒼白になってしまった。
変な事を言わなかったのだろうか、まさか秘密の恋人の名前を・・・
ただでさえ私は、妻を呼ぼうとして、あの子の名を言いそうになり「じ、あうあうっ、何でもない!」と慌てて取り繕った事があるからだ。
最近の私と言ったら、男子中学生よろしく、恋人のことばかり思い巡らせては、いつもぼんやりとしている。

見出し写真のクマさん

先の連休最終日に登った里山。トレッキングコースの入り口には看板が立てかけられていた。

(↑見出し写真を見られよ!)

この、今にも襲ってきそうに両手を挙げた、おどろおどろしいクマの絵を見よ!
可愛いクマのイラストならそんなに緊張感もなかったろうに、絵を見た瞬間、私は寒さに震える子犬のようにプルプル身体を震わせてしまっていた。
そうして、このあとの私と言ったら、登っていても気持ちは周囲の気配にピリピリしてばかり。しまいには自分のバッグが揺れて服と擦れた音にさえびっくりし、足を止め2,3歩と後ずさりしたほどである。
恥ずかしながら、ケツの穴の小さい、ちっちぇえ男を自覚させられました。反省。