再生計画案の作成【中小企業の自主再建型民事再生】

 自主再建型の民事再生手続の一連の流れを、
① 民事再生手続きを選択するに至るまで
② 民事再生申立ての準備
③ 民事再生手続開始決定
④ 財産評定・債権調査
⑤ 再生計画案を作成し認可されるまで
⑥ 再生計画の遂行・終結

の6つの場面に分けて解説しています。

 前回までで、民事再生手続開始の申し立てをして、民事再生手続開始決定がなされ、財産関係と負債の関係の調査をする(財産評定・債権調査)ところまで解説をしました。
 今回からは、⑤再建計画案を作成し認可されるまでの手続きのうち、再生計画案の作成について解説をしていきます。

1 再生計画(案)の意義

 再生計画案とは、民事再生を申立てた会社が、債権者に対し、債務免除の割合、弁済期間および各回の弁済額などを提案して、債権者集会で賛否を決議してもらうものです。再生計画案が債権者集会で可決されることにより、再生計画になる、というイメージです。

 個人再生の非常に簡易な書式しか見当たらなかったのですが、再生計画案として、次のような文書を作成することになります。

 再生計画の記載事項としては、⑴必ず再生計画の中に定めなければならない絶対的必要的記載事項、⑵(記載しなくても再生計画は無効とならないが)その効力を生じさせるためには再生計画に定めなければならない相対的必要的記載事項、⑶再生計画外で定めても有効だが、再生計画で定めることも可能とされている任意的記載事項があります。

 ⑴ 絶対的必要的記載事項

 再生計画の中に必ず定めなければならない絶対的必要的記載事項は、民事再生法154条1項に定められた次の3つの事項です。

(再生計画の条項)
第百五十四条 再生計画においては、次に掲げる事項に関する条項を定めなければならない。
一 全部又は一部の再生債権者の権利の変更
二 共益債権及び一般優先債権の弁済
三 知れている開始後債権があるときは、その内容

 ⑵ 相対的必要的記載事項

 例えば、不足額が確定していない別除権者の権利に関する定めなどが相対的必要的記載事項とされています。

 ⑶ 任意的記載事項

 例えば、新たな資本を導入するための資本金の額の減少に関する定めなどが任意的記載事項となります。

2 再生計画案作成・提出のスケジュール

 再生計画案の裁判所への提出期限は、一般調査期間の末日から2か月以内の日で裁判所が定める日までです(民事再生法163条1項、規則84条1項)。

民事再生法
(再生計画案の提出時期)
第百六十三条 再生債務者等は、債権届出期間の満了後裁判所の定める期間内に、再生計画案を作成して裁判所に提出しなければならない。
民事再生規則
(再生計画案の提出時期・法第百六十三条)
第八十四条 法第百六十三条(再生計画案の提出時期)第一項に規定する期間の末日は、特別の事情がある場合を除き、一般調査期間の末日から二月以内の日としなければならない。

 実務上は、再生債務者の事業規模や再生債権者の数等を考慮して、再生手続開始決定の日から起算して2か月半から4か月程度とされることが多いようです。
 レナウンの事案では、5月15日が再生手続開始決定日で、8月17日までに再生計画案を提出することとされています。

 さらに、実際には、正式な再生計画案を提出するよりも前に、再生計画案の「草案」を裁判所に提出し、その内容について裁判所と相談をする運用となっています。

3 再生債権の権利変更及び弁済方法

 再生計画の絶対的必要的記載事項の一つが、

一 全部又は一部の再生債権者の権利の変更

でした。

 再生債権者の最大の関心事は、自身が有している再生債権のうち何パーセントがいつ支払われるのか、どの程度の金額について債務免除を求められるのか、です。
 この点が、再生計画案を作成するに当たって最も検討と工夫が必要な事項です。

 再生計画は、清算価値保障原則や債権者間の実質的平等などの法令上の要件を満たす必要があります。なお、清算価値保障原則については、

で説明をしました。
 また、再生計画案は、再生債務者の事業再生という目的を達することができるものでなくてはなりませんし、再生債権者の理解(出席債権者の頭数の過半数かつ、総議決債権者の債権額の2分の1以上の同意が必要)が得られるものでなければなりません。
 さらに、「特別の事情」がある場合を除き、再生計画に基づく弁済期間は、再生計画認可決定確定時から10年以内でなければなりません(民事再生法155条3項)。

(再生計画による権利の変更)
第百五十五条 
3 再生計画によって債務が負担され、又は債務の期限が猶予されるときは、特別の事情がある場合を除き、再生計画認可の決定の確定から十年を超えない範囲で、その債務の期限を定めるものとする。

 再生計画案を作成するに際しては、以上のような要請を満たすものを作成する必要があります。

4 共益債権・一般債権の弁済方法

 再生計画の絶対的必要的記載事項の一つは、

二 共益債権及び一般優先債権の弁済

でした。

 共益債権や一般優先債権の内容については、この記事

で解説をしました。

 再生計画案には、その提出時における、共益債権及び一般優先債権の残高、内容および支払時期を必ず記載しなければなりません。

 仮にすべて弁済済みであっても、未払いの共益債権/一般優先債権はないが、今後発生する共益債権/一般優先債権は随時弁済する旨などを記載する必要があります。


 以上、再生計画案の作成についてかいつまんで説明をしました。
 何となく、再生計画にはどのようなことが記載されており、その前提としてどのように再生計画案が作成されていくのか、ご理解いただけたでしょうか。

 次回は、別除権者(担保権者)との関係をどのように処理すればよいのか、について解説をする予定です。

 記事をご覧いただきありがとうございました。

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