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申立ての準備(その2)【中小企業の自主再建型民事再生】

 今回は、民事再生の申立ての準備・その2です。

 前回は、民事再生の申立ての準備として、申立てる際にどのような資料の提出が必要なのか、民事再生規則14条1項についてご紹介し、その中で最も重要な資料である資金繰り表について解説をしました。

 今回は、
・債権者一覧表について
・財産目録・非常貸借対照表について
・申立日をいつにするか

という順に解説をします。

1 債権者一覧表について

 民事再生規則14条1項3号では、債権者一覧表の提出が求められています。

③ 債権者の氏名又は名称、住所、郵便番号及び電話番号(ファクシミリの番号を含む。)並びにその有する債権及び担保権の内容を記載した債権者の一覧表

 法人破産用のものですが、横浜地裁の破産手続開始申立書のひな型を添付します。この中に債権者一覧表のひな型が含まれていますので、ご覧いただくとイメージがわきやすいと思います。
 統括表というものと、担保権付きの債権や租税・公租公課債権、労働債権、一般債権など、債権のグループごとに作成した債権者一覧表の2種類を作成するとわかりやすいです(ひな型をご参照ください。)。

 債権者一覧表は、裁判所が再生債務者の負債の状況を確認したり、再生手続開始決定通知等の通知の送付先リストとして活用したりする資料ですので、漏れのないように作成する必要があります。

 債権者の特定方法ですが、相手先別に補助簿を作成しているようであれば、それを確認すればよく、債権者一覧表の作成は容易かと思います。
 補助簿を作成しておらず、債権者を容易に把握できない場合、試算表から買掛金や未払金、借入金等の残高を特定し、その勘定科目の相手先別内訳を調査したうえで、債権者一覧表に転記していくことになるかと思います。

2 財産目録・非常貸借対照表について

(1)財産目録

 財産目録は、資産科目ごとに残高の内訳を記載するとともに、帳簿額と評価額の関係を明らかにする明細です。
 民事再生規則14条1項4号により提出が求められています。

④ 再生債務者の財産目録

 法人破産用ですが、横浜地裁の財産目録のひな型を添付します。ご覧いただくと、イメージがわくと思います。

 各資産の評価額は、現時点で換価した場合、具体的にどの程度の金額で換価できるか、という観点で評価をする必要があります。
 例えば、不動産については、事業の清算のために早期売却をしようとした場合にどの程度の金額で処分できるか、という観点で評価をすることになります。この評価は、不動産鑑定士による鑑定評価に基づいて行うことが望ましいですが、申し立てまでに時間的猶予が無い場合には、取り急ぎ路線価や固定資産評価額により評価するという選択肢もあります。
 また、売掛金については、貸し倒れの可能性(回収可能性)を考慮して評価する必要があります。
 棚卸資産については、売却可能性が乏しければ、相当の減額ないしゼロで評価する必要があります。

(2)非常貸借対照表

 非常貸借対照表は、清算、破産、会社更生、民事再生、合併など非常時に作成する貸借対照表です。
 誤っているかもしれませんが、民事再生規則14条1項5号により提出を求められているものと思われます。

⑤ 再生手続開始の申立ての日前三年以内に法令の規定に基づき作成された再生債務者の貸借対照表及び損益計算書

 非常貸借対照表の資産の部は、申し立て直前時点の試算表や上の方で検討した財産目録をベースに作成します。
 負債の部は、申し立て直前時点の試算表や上の方で検討した債権者一覧表をベースに作成します。

(3)清算配当率の試算

 非常貸借対照表を作成したら、清算配当率を試算することになります。
 清算配当率は、申し立て時点において会社清算を行ったと仮定した場合、再生債権に対してどの程度の配当ができるのか、残余財産の分配率を計算して算出したものです。
 民事再生においては、この清算配当率を超える弁済が行われるよう再生計画案を作成していくことになります。清算配当率を下回る弁済しかしない場合、債権者としては、それであれば破産をしてもらった方が得だ、となってしまうからです。

3 申立日をいつにするか

 民事再生手続開始の申立日は、次のような事情を考慮してスケジュールを立てます。

① 申立準備のための事実関係確認、資料収集、方針の検討に要する時間
 事案の複雑さなどによるでしょう。

② 債務者の資金繰り状況
 予納金を含めた手続費用及び申立後の業務遂行に必要な現預金を確保できるタイミングはいつか。
 多くの事案で現預金残高の多い日が申立予定日の候補となります。

③ 約束手形が不渡りになるおそれがあるか、ある場合にはいつ不渡りになるか
 約束手形が不渡りになると、事業継続が困難になってしまいますので、約束手形にも配慮が必要です。

 以上の事情を考慮して、申立日を決定し、申立ての準備をしていくことになります。
 なお、裁判所への事前相談をすべき事案においては、事前相談の時期(申立予定日の1週間前までには実施するのが一般的)も見越して準備を進めていく必要があります。

 今回は以上です。
 2回にわたり再生申立ての準備事項についてごく大まかに解説しましたが、イメージが着いたでしょうか?

 次回は、民事再生手続開始申立てをして、裁判所が民事再生手続開始決定をするに際して、どのような対応をする必要があるかについて解説をします。


 記事をご覧いただきありがとうございました。

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