民事再生を選択する場面(その1)【中小企業の自主再建型民事再生】
前回、自主再建型の民事再生手続きについて、6つの場面に分けて解説をすると申し上げました。
今回は、
① 民事再生手続きを選択するに至るまで
です。どのような場合に自主再建型の民事再生を行うと決断すればよいのかについて解説します。
1 債務整理を検討するきっかけ
まず、会社が債務整理を検討するきっかけとして、どのようなことが考えられるでしょうか。
次のようなきっかけが考えられます。
① リスケ後1年経過しても約定弁済に復帰できない場合
既に1年程度のリスケを行ったにもかかわらず、金融機関からの借入金の約定弁済を再開できない場合には、リスケ更新をしたとしても財務改善の可能性は低いと考えられます。
債務整理を検討したほうが良いでしょう。
② 資金ショートが身近に迫っている場合
資金ショートが身近に迫っている場合には債務整理を検討したほうが良いです。
金融機関などの債務が少なく、リスケで対応できない場合については、資金繰表を作成したところ1年内に資金ショートすることが見込まれるようであれば、債務整理を検討したほうが良いと言われています。
また、リスケ中である場合については、資金繰表を作成したところ、6か月以内に資金ショートすることが見込まれるようであれば、債務整理を検討したほうが良いと言われています。
③ 取引業者への弁済が遅延し、弁済目途が立たず、取り立て対応により事業に多大な損失が発生している場合
①、②は財務上の基準による考慮要素です。
それ以外にも、例えば、取引業者への弁済が遅延しており、今後も弁済の目途が立たず、取り立てへの対応等により他の正常な事業に多大な損失が発生してるような場合には、債務整理を検討したほうが良いです。
2 清算型か再建型か
以上のようなきっかけにより債務整理をすることを決断すると、次は、清算型の手続きを取るのか、再建型の手続きを取るのか、債務整理の方針を検討することになります。
清算型の手続きの代表例が破産です。清算型の手続きを行うと、総財産を換価して債権者に分配し、会社は消滅することになります。
再建型の手続きの代表例が民事再生です。債務を圧縮、分割弁済し、会社を消滅させずに事業再建をすることを目指します。
では、どのような場合に、清算型ではなく再建型の手続きを取ると良いでしょうか。次のようなメルクマールを挙げることができます。
① 営業キャッシュフローがプラスであるか、または今後改善する見込みがあるか
営業キャッシュフロー(営業利益+減価償却費-設備投資)がマイナスであると、かりに現時点の債務を圧縮してもその後の事業再建はままなりません。
② 全部または一部の債務の弁済を停止することにより、当面の資金繰りがあるか
③ 経営者・後継者に事業再建の意欲・覚悟・能力があるか
この記事でも同じような話がありました。
経営者に意欲等が無ければ、事業再建はままなりません。
④ 利害関係人(従業員、取引先、金融機関等)の理解と協力を得られるか
従業員が離れてしまえば、事業継続は不可能です。
また、債務整理をきっかけとする信用不安により、取引先が取引をしてくれなくなれば、事業継続は不可能です。
さらに、一定数の債権者の協力・同意が無ければ、債務の圧縮ができず、事業再生ができません。
これらの点について判断をするため、税理士や弁護士などの専門家に相談をする際には、過去数年分の決算報告書・確定申告書、キャッシュフロー計算書、資金繰表、組織図、従業員名簿、会社の事業内容がわかる資料、資産に関する資料などを持参すると良いでしょう。
今回は以上です。
次回は、「どのような場合に民事再生を行うか(その2)」として、再生型の手続きを取るとしても裁判所を通した方が良いかどうか、などについて解説をしたいと思います。
記事をご覧いただきありがとうございました。
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