債権調査【中小企業の自主再建型民事再生】
今回は、④財産評定・債権調査の後編、債権調査についてです。
前回は、主としてプラスの財産の調査の役割を果たす財産評定についての解説をしました。今回は、マイナスの財産の調査の役割を果たす債権調査についての解説をします。
1 債権調査の手続き
再生債権の調査については、大きく債権の届出→債権調査→確定という手順を経ます。
⑴ 債権の届出
再生債権者は、裁判所が定める債権届出期間内に、裁判所に対して債権届出をしなければ、自ら有する再生債権をもって再生手続に参加することができません。
(届出)
第九十四条 再生手続に参加しようとする再生債権者は、第三十四条第一項の規定により定められた再生債権の届出をすべき期間(以下「債権届出期間」という。)内に、各債権について、その内容及び原因、約定劣後再生債権であるときはその旨、議決権の額その他最高裁判所規則で定める事項を裁判所に届け出なければならない。
名古屋地裁の債権届出書の書式がインターネット上で公開されていました。
⑵ 債権調査
債権届出がなされたからと言って、債権届出書に記載された内容が必ず正しいとは限りません。
そこで、再生債務者は、届出があった債権について、認否(再生債権届出書記載の債権の内容および議決権の額等が正しいかの認定)を行い、再生債権者は、その結果を確認の上、必要に応じて異議を述べます。このような手続きを債権調査といいます。
日弁連のホームページで、通常再生手続ではなく、個人再生手続のものではありますが、再生債務者が作成する債権認否書のひな型が公開されていました。
再生債務者が認め、調査期間内に届出債権者の異議がないと、届出債権の内容および議決権の数が確定します(民事再生法104条1項)。
(再生債権の調査の結果)
第百四条 再生債権の調査において、再生債務者等が認め、かつ、調査期間内に届出再生債権者の異議がなかったときは、その再生債権の内容又は議決権の額(第百一条第三項の規定により認否書に記載された再生債権にあっては、その内容)は、確定する。
なお、再生債務者は、債権者が届出をしなくとも、自身が知っている債権については、自認債権として、認否書に記載する必要があります(民事再生法101条3項)。
(認否書の作成及び提出)
第百一条
3 再生債務者等は、届出がされていない再生債権があることを知っている場合には、当該再生債権について、自認する内容その他最高裁判所規則で定める事項を第一項の認否書に記載しなければならない。
⑶ 確定
先ほど述べたように、再生債務者が認め、調査期間内に届出債権者の異議がないと、届出債権の内容および議決権の数がそのまま確定します。
再生債権の内容について、再生債務者が認めず、または届出債権者が調査期間内に異議を述べた場合には、その再生債権者は、債権の内容の確定を求めて、裁判所に査定の申立てをすることができます(民事再生法105条1項)。
(再生債権の査定の裁判)
第百五条 再生債権の調査において、再生債権の内容について再生債務者等が認めず、又は届出再生債権者が異議を述べた場合には、当該再生債権(以下「異議等のある再生債権」という。)を有する再生債権者は、その内容の確定のために、当該再生債務者等及び当該異議を述べた届出再生債権者(以下この条から第百七条まで及び第百九条において「異議者等」という。)の全員を相手方として、裁判所に査定の申立てをすることができる。ただし、第百七条第一項並びに第百九条第一項及び第二項の場合は、この限りでない。
裁判所は、査定の申立てがあると、当該申し立てを却下する場合を除き、査定の裁判をします(民事再生法105条4項)。
4 査定の裁判においては、異議等のある再生債権について、その債権の存否及びその内容を定める。
査定の裁判に不服がある場合、不服がある者は、裁判書の送達を受けた日から1か月以内であれば、異議の訴えを起こすことができます(民事再生法106条1項)。
(査定の申立てについての裁判に対する異議の訴え)
第百六条 前条第一項本文の査定の申立てについての裁判に不服がある者は、その送達を受けた日から一月の不変期間内に、異議の訴えを提起することができる。
再生債務者や届出債権者が争う債権についても、このような手続きを経て、その内容を確定させていきます。
2 別除権付再生債権の認否
再生債権者の中には、不動産に対する抵当権など、担保権を有している者がいます。
このように、民事再生手続に左右されずに、実定法上の担保権の対象となる財産等(担保物権)を処分することで回収をすることができる権利を別除権といいます。そして、別除権を有する担保権者を別除権者といいます。
別除権者は、再生手続外で担保権を実行し、債権回収を図ることができます。
(別除権)
第五十三条
2 別除権は、再生手続によらないで、行使することができる。
しかし、別除権者が1000万円の再生債権を有しており、担保権の実行により500万円しか回収できなかった場合、残りの500万円については、再生手続により回収をしていくことになります。
そのため、別除権者は、一般の債権者の届出事項に加えて、別除権の目的である財産及び別除権の行使によって弁済を受けることができないと見込まれる債権の額を届け出なければなりません(民事再生法94条2項)。
(届出)
第九十四条
2 別除権者は、前項に規定する事項のほか、別除権の目的である財産及び別除権の行使によって弁済を受けることができないと見込まれる債権の額を届け出なければならない。
「別除権の行使によって弁済を受けることができないと見込まれる債権の額」を届け出るためには、別除権目的物の評価額を把握する必要があります。
この評価額は、財産評定と同様に、原則として処分価額により評定します。
もっとも、別除権協定(後日解説)において、別除権目的物の評価額は、再生債務者と別除権者との協議により決まるため、別除権協定の評価額と処分価額との間に差異が生じ得ます。
しかし、この程度の際は許容されると解されています。
3 まとめ
債権調査の手続きの概略をご理解いただくことができたでしょうか。
今回は、
・再生債権を調査するための手続きとして、債権届出→債権調査→確定の流れの概略
・担保権実行によっては債権の完全な回収を測れない別除権者による再生債権の届出
について解説をしました。
記事をご覧いただきありがとうございました。
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