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君は、本当の孤独を知らない、と云う。私は貴方の言葉をよく噛んで反芻する。波のように流れる兎の尾を掴もうとした時、味のしないおにぎりを食べた事を思い出した。
片目から見える貴方を切り取って、鏡の中でさえも触れられない肌に鋭く、海が刺さった。開くドアの向こう側に見える景色がいつもと違っていた時、脊髄反射のように貴方はさらりと奪われて、認識出来ない程遥か遠くに花が咲いていた。
感覚論に溺れ、崩れ去ってゆく海岸を眺めていたら、自意識が水槽に蝕まれていた。岩波文庫が好きだった君の、揺れる文学が好きだった。縦に斜めに揺れる文字を集める事に精一杯で、捲っていないカレンダーは幸せに飲み込まれて病まない拍手で称えている。
私は概念になりたかった。他人の模倣に塗れながら彼らの為に存在している事が、音を鳴らすぬいぐるみのように見えてしまって仕方がありません。
憎悪を覆う完全な静寂に、静かに見つめられる私の確執は、文学に乗せて誰かをさらりと奪い種を植える。
いつかあなたは望まなくなる。そのときが、
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