「ロストケア」【映画感想】
ジグソーパズルのワン・ピースが、どうしても見つからない。後ひとつで完成するのに…
貴方はそんな時、どうしますか?
家中を探し回る人、同じ物をもう一度買う人、頭にキテ、メチャメチャにしてしまう人…色んな人が居ると思います。
私?
私は、そのまま放置します。いつの日かピタリと当てはまるワン・ピースが現れるまで、そっとそのまま仕舞っておきます。
ほんの少しだけ涼しさを感じる朝、
おはようございます、sanngoです。
お休みの昨日、何処にも行かないって決めてたのに、足りない物をスーパーへ買い物に行った。
地下駐車場は、お盆休み最後の日を楽しもうと買い物を終えた多くの家族達が満タンに詰め込んだカートを押していた。
核家族化が叫ばれて久しい我が国だけど、長いお休みの時にはこうして集まるんだな、家族っていいなって微笑ましく思って見ていた。
そんな一人きりの私が(寂しくなんて、寂しくなんて、ないやーい!)Amazonプライムで観た映画のご紹介。
結論から言って、一人暮らしの人、心が弱い人は観ない方がいいと思います。
レビューは、どれも高評価ですし、作品の完成度、俳優の演技、演出…等、申し分ありません。
でも、よほど真念を持って観ないと、暫く落ち込みます。それほど壮絶に現在の日本の高齢化社会の介護と向き合った映画だと思いました。
我々一般人が観るよりも行政に携わる方に観て知ってもらいたい映画だと切実に思いました。
介護士でありながら、斯波(松山ケンイチ)は42人もの人を殺害した。そんな彼に事情聴取をして裁くのが、検事である大友秀美(長澤まさみ)だった。
斯波は自分のことを「穴に落ちた人間」だと言い大友を「安全地帯向に居る人間」だと言う。
検事の「正義」と殺人犯の「正義」がぶつかり合うようでいて違う、すれ違う。
私が印象深く残った斯波の台詞に
「人が人を殺したら罪で、国が殺すのは罪にはならない」
という言葉だった。先日「あの花が咲く丘でまた君と会えたら」を観たばかりだったからかもしれない。
それに対しての大友の返事は何だったのか、忘れてしまったのだから、私が納得出来るものではなかったのだと思う。
斯波の一人目の殺害は実の父親(柄本明)だった。脳梗塞の後遺症と認知症で寝たきりとなった父は、息子の斯波に懇願する。
「お前に迷惑を掛けたくないから殺してくれ、お前が分かるうちに」
この時の柄本明の怪演ぶりが、誰なのか分からないほど凄い(語彙力)これだけ観てもいいかもしれない。
そして斯波は、それから40人以上の老人を殺害するに至ったわけだが、彼は
「救った」
のだと強調する。介護で疲れ果てた家族とその殺害した本人を…
物凄く真面目に現代の日本へ問いかけた映画であり、どのシーンも素晴らしいのだが、見終わった後にどーんとした重い気持ちから、なかなか抜け出せない。
人間の「死」と「尊厳」に対して、真正面から取り組んでいるが、観ても明確な答は得られない。
どこからどこまでなら介護をして生きていていいのか、ここからなら殺していいのかなんて、線引きは誰にも引けないと思う。
ただ、この映画が川面に投げた小石の波紋が大きな輪となって広がればいいなと思う。
家の中に溜まるゴミや汚れた紙オムツを付けたまま動き回る老人、物を投げつけたり暴力を振るう者…リアリティのある自宅介護の現状をまざまざと見せつける傑作だが、敢えてお薦めはしない。検事の前で斯波の事を
「救われました」
と言う家族と裁判の途中で、斯波を
「人殺し〜!」
となじる家族と両方が居る。
それだけ人の思いは違うし介護への思いと許容範囲も違うと思う。
観ないでいいと思う。
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