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「エッセイ」闇を語っちゃえ!

昨夜、また酔っぱらいが何かを書いたらしい(笑)
(どうも夢遊病か幽体離脱が出来るらしい)
一応、簡単に登場人物なんぞを

ダーちゃん  言わずと知れた私の亡くなった主人
ゴン  ダーちゃんをこよなく愛した我が家のワンコ
父  私の実父

ゴンは、こんな仔

んじゃ、イッテみよう!




カリカリカリ
白い錠剤を噛み砕いた。
古びたマンションの6階のベランダには、ポトスやパキラ、サンセベリア…ああ、皮肉な名前の「幸福ノ木」まであったっけ。

最初はそのまま飛び降りてやろうと思った。
先日、洗濯物を挟んでいた洗濯バサミを手が滑って下へ落としてしまった。
カラカラ、ポーン
洗濯バサミは、風に揺られて一階の家の庭に軽い音を立てて着地した。砂利の中にピンクの点が小さく出来ただけだった。
何も変わらない。


ベランダの柵に手を掛けて下を見下ろした。
舗装されていない駐車場にいつもは停まっていない赤い車が停まっていた。
このまま落ちても、あの赤い車のボンネットを凹ますだけかな……
小刻みに震える手、人間は冷静では翔べない。
恐怖なんて持ってるうちは、自らの命は絶てない。

部屋にとって返すと貯めていたハルシオンの錠剤を持って来た。
カリカリカリ
意識が朦朧としたら翔べるかも……
今の私の命なんて、砂利の中に埋まったピンクの洗濯バサミと同じ重さ。

カリカリカリ
口の中に錠剤を詰め込んで詰め込んで、噛んで噛んで、飲み干す。
お水持ってくれば良かった…

大好きな人は死ぬって言われた。
私は7500万の返済を迫られた。マンションに押し掛ける銀行員、信用金庫、材料屋。この前まで笑顔だっくせに…
病院の女子トイレまで押し掛けて来た奴らが
「奥さん、承諾書に印鑑押してくださいよ」
ニヤけた顔で私に迫った。
ドンドン ドンドン
トイレの個室を力強く叩かれた。

ペロペロペロペロ
ゴンが私の手を舐める
膝にのって、じっと私を見つめる。その目が
『逝くな逝くな バカ』
語りかけるように訴えている。

カリカリカリ
錠剤を飲み過ぎた私は、足がフラついて立ち上がれなかった。
ホントにバカだな、私…

突然
ワンワンワンワン
玄関へ向かってゴンが狂ったように啼いた。

遠のいていく意識の中で父が私の名前を呼ぶ声が聞こえた。

お父さん、買い物から帰って来ちゃったんだ…

口の奥へ指を突っ込まれ、思い切り吐かされた。
溶けていなかった白い粒、蛍光色の胃液がベランダの床に広がる。
胃液って綺麗だな…

その夜、父は私に何も言わなかった。


次の日、痛む頭と胃を抱えて私は電車に乗っていた。何も変わらなかった。
病院へ行かなくちゃ、ダーちゃんの元へ行かなくちゃ…



人は一瞬の狂気を持たないと翔べないんだと思い知らされた私の黒歴史。
死ねないなら生きるしかない。


13年後の今、私は独りで呑気にワイドショーを観ている(笑)




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