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「日記」深夜のコンビニの恋

仕事帰りの深夜にコンビニに寄ろうとしていた。
その日のお客さんは珍しく飲ませてくれなかったから、代行運転ではなく自分で運転をしていた。家で飲み直そうとビールと煙草を買う為だ(かなり寂しい女だ)
駐車場に車を停めようとすると背の高い若い男とそれを取り囲むように二人の高校生らしい女子が立っていた。
当然のことながら、私の車のライトに照らされる三人の若者たち。
ドキドキした様子で一人の女子はスマホを握り締めている。自転車を停めた顔の小さな若い男は、なにやら戸惑いがちに二人の女子を見ていた。
私が車のドアを開けると会話が飛び込んで来た。

「ずっと此処で待っていたんです」

どうやら、女子の一人の方が若い男に憧れて毎日、此処でこの時間、待ち伏せをしていたらしい。
(あくまでもオバサンの経験による憶測だ)
満更でもなさそうに微笑む若い男は、まぁソコソコのイケメンと言った感じか(私のイケメン観察偏差値は厳しい)
(ふ〜ん、青春だね、いいぞ)
心密かに女子高生頑張れ!とエールを送って、コンビニに入りビールを物色する寂しい一人暮らしの女(私だ)
お会計を済ませて駐車場に戻ると暗がりに移動した三人はまだ話をしていた。
ソコソコイケメンとツーショットの写真を撮り、何やら小さな箱を渡している。

(はぁは〜ん、お誕生日か何かかな?)

今どき珍しい純粋なJKがますます微笑ましくなった。
(頑張れよ!女子高生) 
と思いながらエンジンを掛け、その場を立ち去ろうとした……したら
バックモニターにチャリに乗ったソコソコイケメンがペダルを漕ぎ出した姿が映った。

ひぇ~、危ない危ない!

あの娘達の憧れソコソコを轢いちゃったら、目もあてられないよ(苦笑)
そう思って振り返って確認する為に彼を見た。
ニヤリと嗤った青年の顔には、さっきまでのオドオドとした戸惑いの表情は消えていた。
ポケットに黒いプレゼントの箱を突っ込み
「ちっ」
と舌打ちをすると闇の中へ走り去って行った。

薄暗がりの中、プレゼントを渡せたことがよほど嬉しかったのか、キャーキャーとまだ喜んでいるJKが見えた。

「この恋は止めておけ」

車を走らせながら、ソコソコの不敵な笑みと舌打ちが私の脳裏に蘇る。
まぁ、でも泣くのも悪くないかもね…
裏表のある男に騙されてみるのも良い経験だ。

でも、女の先輩として一つだけ忠告しておきたい事がある。
人生、一世一代の「告白」の時に黒いジャージは止めておけ、女子高生。
完璧にキメてたチャリのソコソコは、常に上から目線だったぞ。ジャージ愛用者の私が言うのも何だが、ファッションにはTPOってものがある。
ズルズルのグダグダのジャージで恋の告白は、最初から負けてたよ、JK。

大谷翔平選手が言ってたじゃないか。
「憧れるのはやめましょう」
ってね。
普段使いのジャージ姿じゃ、『憧れ』のままだ。
恋の勝者にはなれはしないよ。
まっ
あいつじゃ、負けた方がいいか。
酒の肴になったと思うお節介な一人暮らしの女の話し(笑)

既にこの時、自分がくたびれたジャージだったくせに(笑)




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