全て僕の責任です。(最終話)
それから数日後、俺の遺体が実家近くで発見された。
遺体は陸橋の階段下に転がっており、無数の切り傷や打撲痕などが付けられていたことから、警察は殺人の線で捜査を開始したらしい。
ただ、俺に恨みを抱いていたり、ネット上での殺害予告をほのめかしていた人間があまりに多すぎる事もあり、捜査は難航する見通しだそうだ。
ちなみに、俺が死んだ事により、ネット上で俺のことを誹謗中傷していた人間が全員、容疑者へと変わったことにより、個人情報の開示請求に対するハードルが下がった。
それにより、警察がもう一つの事件として追っていた『青田紀夫誹謗中傷事件』に関係する大量の容疑者が次々と検挙されていった。その数は述べ100万人を超え、その全ての人間が書類送検なり、度が過ぎる書き込みをしていた人間は実刑を求刑されるなど、それなりの罰が下された。
しかし、未だに俺を切りつけ、階段上から落とした犯人は見つかっていない。
もしも、俺が空き巣犯を蹴り落とすような行動を取っていなかったら。
もしも、俺が早々に再就職して働いていたら。
もしも、俺が実家を出て一人暮らしをしていたら。
もしも、俺が結婚をしていたら。
もしも、俺が。。。
今の世の中、誰かのせいにした瞬間に、『他責にするような人間はダメだ』とする自己責任論が蔓延し続けている以上、俺が殺されたのは、誰のせいでもなく俺のせいなんだ。
誰かのせいにした瞬間、ネット上に生息する顔も名前も分からない誰かの怒りに触れて、誹謗中傷を繰り返されることになっていたに違いない。
だから俺は犯人を憎んでいない。
殺されたのは、全て俺のせいなんだから。
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