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【prologue】ひとりだけれどひとりじゃない。 #sanmari撮りっぷ Vladivostok

12月の成田空港は、クリスマス一色。あちこちで、サンタクロースを待ちわびている。

ソリは、空を飛べるのだろうか。

小学校の掃除の時間、何度ホウキにまたがっても空を飛べなかったわたしは、「サンタさんは、専用の飛行機に乗ってくると思う」なんていう自説を唱えていたっけ。
当時東北に住んでいたわたしは、わざわざ成田空港まで来ることはなかったけれど、確かにこれだけ空港がクリスマス一色なら子どもたちの期待も膨らむだろう。

チェックインカウンターに向かい、耳が聞こえないことを説明する。メモをバックの奥に入れてしまっていたため、身振りで。伝わったのかどうか不安になるくらい、スタッフのお姉さんは何事もなかったかのように手続きを進めていく。
やっぱり、ちゃんと筆談すればよかったかな……
そう思っていたら、目の前に紙が差し出された。

E-VISAは、ありますか?

わたしは首を縦に振り、iPhoneの画面を差し出す。
お姉さんは「ありがとうございます」と口をはっきりと動かしてわたしのiPhoneを受け取ると、また手続きに戻る。

いくら空港といえども、聞こえないことを伝えると係の人が変わったり複数人で対応されたりすることが多かったわたしは、お姉さんのスマートな対応にびっくりしてしまった。
乗り継ぎがないこともスムーズに進んだひとつの要因だと思うけど(乗り継ぎがあると、チェックインの時点で乗り継ぎ先のスタッフとの情報共有をしてくれる)、耳が聞こえなくても年相応のひとりの利用者として対応してもらえることは本当に嬉しい。

これも一重に、航空会社で働く音のない世界の仲間たちや先輩たちの努力の賜物なんだろう。この旅は、見えないけれどもたくさんの人たちの積み重ねではじまるんだ。そう思うだけでわくわくしてくる。

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機内のCAさんは、ロシア人のみ。機内に入って一番最初に見つけたCAさんに身振りで聞こえないことを伝えると、席につくなりエコノミー担当のCAさんがやってきてくれた。今日はお客さんが少ないこともあってか、丁寧に筆談に応じてくれる。どうやら彼女は英語が苦手らしく、なかなか通じないのだけれど身振り手振りに実物を見せ合い、なんとかコミュニケーションをする。

ある程度コミュニケーションをしたところで、CAさんがフィードバックのプリントを持ってきてくれた。

筆談に対応してくれて嬉しかったこと、これから改善して欲しいこと、そして感謝を書いて降りるときにCAさんに渡した。
こうやって、改善点を書いて欲しいと言われたのは、はじめての経験。拙い英語力で伝えたいことがうまく伝わったかは謎だけれど、これから旅をしていく音のない世界の仲間たちの道標のひとつに、わたしの経験が生かされたら幸せだなぁと思う。

ほっと一息ついたところで、飛行機が離陸した。

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どんな旅になるのだろう。
不安と期待で心がふわふわしている中、青空へと飛び込んだ。

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