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元美術史アレルギーによる #重要文化財の秘密 展の感想メモ

「夜の美術館」ってなんだか魅力的に見えてしまいませんか?普段なら17時で閉まってしまう国立近代美術館が期間限定で20時まで開館しているとのお知らせを見て、これはおもしろそうと竹橋まで。

今回の企画展は、東京国立近代美術館70周年記念展の重要文化財の秘密展

学生時代、得意科目の日本史で唯一苦戦した分野が、この美術史。高校生になって芸術科目が選択になったタイミングで、聴覚障害があるにも関わらず美術じゃなくて音楽を選択するくらいには美術史アレルギーで。

でも、どうしてもセンターで満点を取りたかったので、どの分野よりも図録を凝視して頭に詰め込んだ美術史。(ちなみに、当日は満点でした。というプチ自慢をここで。今更、ここでしかこんな自慢できないので。)

ということで、SNSで展示の写真を見かけるたびに「懐かしい‼︎」とニマニマしながら、ちょっと体がかゆいような錯覚を覚えるようになっていたあの作品たち。センター試験から10年を経た今、もしかしたら少しは仲良くなれるかもしれないと淡い希望をもって、夜の東京国立近代美術館へレッツゴー。

日の入りの頃に入館。わくわく。

展覧会概要

会場:東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー
会期:~2023年5月14日(日)
チケット:身体障害者手帳の提示で付き添い者一名も無料(事前予約不要)
休館日:月曜日(ただし5月1日、8日は開館)
開館時間: 9:30-17:00(入館は閉館30分前まで)
※5月2.3.4.7.9.10.11.14日及び金曜・土曜は20:00まで開館

この展示も、身体障害者手帳の提示で、本人と付き添い者が無料で入場できました。ありがたい制度。今回も、利用させていただきました。

重要文化財とは?

年号の数字とか覚えるのも苦手。
前後関係とかでなんとか理解していた記憶があります。

日本にある建物や美術品、工芸品、考古資料などのうち、国が貴重で価値があると定めたもののことです。明治以降の絵画・彫刻・工芸では、現在68件が重要文化財に指定されています。

今回はなんと、そのうち51点が出品されているとのことです。(入れ替えもあるので、随時51点が展示されているというわけではなかったです)

※ 重要文化財は、原則年間で60日しか展示できないらしい。だから、他の展覧会との兼ね合いで入れ替えがあるみたいです。(これも、初めて知りました)

感想メモ

そんなわけで、美術史アレルギーのわたしが「重要文化財の秘密」を眺めながら考えたメモをここに備忘録として残しておきます。(お恥ずかしいくらい、美術的な視点を持たずに29年生きてきたことが分かるメモですん。)

1-① 文化財になるまでのストーリーがおもしろすぎる

村上華岳 日高河清姫図

重要文化財って、制作されてすぐに指定されるものではなくて。たとえば、上記の掛け軸も描かれたのは大正時代だけれども、重要文化財に指定されたのは平成に入ってしばらくしてから。

当時の評価はイマイチでも、時代を経て価値を見出されるものがたくさんあるとのこと。今回の展示では、ひとつひとつの作品それぞれにどんなバックグラウンドがあって重要文化財に指定されたのかのストーリーが紹介されていました。

美術作品単体で展示されていても見応えはあるのかもしれないけれども、「美術、ホントによく分からないんです……」というわたしみたいなストーリー重視派も楽しめる構成になっていました。(この点、歴史とか哲学とか好きなことが、救いになった気がする)

2-① 絵画って、古典の実写版みたいな存在なのかも

安田靱彦 黄瀬川の陣

義経ファンなので、安田靱彦の「黄瀬川の陣」は思わず息を飲みました。平家物語読みながら、頭の中で何度も想像した姿。そうか、安田靱彦もきっと、小説を自分の頭の中で想像しながら描いたのかもしれない……。

絵画ってもしや、現代でいう小説をもとにした漫画とかドラマとか映画とか、そういうイメージで見れば良いのかしら……と思うと、急に親近感が湧いてきました。(美術史アレルギーだったころは、ひたすら図録の写真と作者と題名を丸暗記していただけでした)

3 日本画は平面、西洋画は立体

そんなことを考えながら歩みを進めていくと、次は西洋画で。

高橋由一 鮭

言わずもがな有名な高橋由一の「鮭」は、古来から日本人はずっと日本画で平面を描いてきたけれども、西洋画を学んで立体を描けるようになってより【本物そっくり】に描けるようになったことの象徴として文化財になったとのこと。

ふむ。確かに日本画で描いていた世界は、上村松園の「母子」だって平面を描いていたし、今村紫紅の「熱国之巻」だって異国を描いてもなお平面。それでも、カラフルな色彩から異国へのワクワク感はめちゃくちゃ伝わってきますよね。旅好きの匂いがしました。最高。

今村紫紅 熱国之巻
上村松園 母子
黒田清輝 湖畔

対照的に、黒田清輝の「湖畔」は上村松園と同じ日本人の女性を描いているけれども立体的な西洋画で。やっと、29歳にしてやっと、日本画と西洋画の違いが分かりました(笑)

2-② 絵画って、古典の実写版みたいな存在なのかも

そういえば西洋画って、宗教画がすごく多いイメージがあります。でも、その宗教って聖書だったりそういうものを元に描かれているわけで。ということは、聖書の実写版みたいな感覚で見ていけば、なんとなく難しそうなあの絵たちもストーリーをイメージできるかもしれない……なんてことを改めて考えながら更に歩みを進めます。

1-② 文化財になるまでのストーリーがおもしろすぎる

青木繁 わだつみのいろこの宮

青木繁は、聖書じゃなくて古事記にインスピレーションを受けて描いたとのこと。確かに、日本版の宗教画だと言われれば頷いてしまいます。

実際に、題材も西洋を真似たものが早い時期に文化財に指定されて、青木繁のような日本の伝統を受け継ぎながら西洋の手法を取り入れたものは、後になって指定されたそうです。

他にも、教科書や図録で見たことのある工芸品も多数ありました。

鈴木長吉の 十二の鷹
初代宮川香山 初代宮川香山 三代清風与平
濤川惣助 七宝富嶽図額

以前、ガラス作家の友人にインタビューして目にしたことがあった「七宝」という技法。こちらは無線七宝とのことで、平面に描かれた七宝の現物を初めて見てこれも感動しました。(前知識があること、本当に大切ですね)

まとめ〜日本史勉強しててよかった!〜

今回の展示を見に行って思ったのがとにかく「日本史を勉強していてよかった!」ということです。作品自体はよく分からなくても、描かれている場面のストーリーや、文化財指定の背景は、わたしの頭の中にある日本史の知識でだいぶ補完されたように思います。

あの頃は、図録や教科書に美術品が出てくるたびに「こんなの覚えられないよ……」と見るたびに身体中がムズムズしていましたが、オトナになってあの経験がちゃんと役立つとは。

入館から会場を後にするまでの1時間半。いろんな点と点が結びついて、とてもとても楽しい時間になりました。

見に来てくださりありがとうございます。サポート、とっても心の励みになります。みなさまからのサポートで、わたしの「ときめき」を探してまたnoteにつらつらと書いていきます。