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【聴覚障害×選挙】 Nothing About us without us

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これは、わたしの家から職場に到着するまでにある選挙看板の数。電車に乗っている時間も含めて30分足らずの道のりでこんなにもたくさん見ると、なんとなく候補者達の顔が「なんか見たことあるな」というものに変わってくるような気がしている。

この前たまたま上司と帰るタイミングが一緒になったからおしゃべりしながら歩いていたんだけれども、それがちょうど看板が設置された頃で。あの大きな看板を眺めて「ええー。今回30人も立候補するの‼︎考えるの大変じゃん!」と言って笑う姿を見て、わたしはこの上司に一生ついていこうと思った。

こんなnoteを書いちゃうくらいには、選挙に行く人に絶大なる信頼をおいている

そんなわたしが、今回は【聴覚障害×選挙】について日頃感じていることを忘備録というか備忘録としてまとめておこうと思います。

■投票当日は、あまり困り感がない。

投票当日の、投票券を持って指定の投票所に行くか期日前投票所に行くかして受付を通って投票するという流れは聴者と同じです。

導線も分かりやすく、投票自体もユポ紙に鉛筆で記入するという全て見て分かるものになっています。最初は戸惑うこともあるかもしれませんが、何度も投票を重ねていればそんなに困ることなく投票を済ませることができます。

■聴覚障害者には、「投票する相手を決める」という過程に大きな困り感があります。

介助者や代理投票、郵送による投票をあまり必要としないところは、他の障害者と大きく異なる点かもしれません。しかし、わたしたち聴覚障害者は投票する相手を決めるという過程に大きな困り感があります。

◎選挙看板

最初にも書いた通り、選挙看板は見て分かる情報源のひとつ。道端で何度も顔が見られたり名前や所属政党が大きく書かれているそれは、母語を手話として日本語が得意ではない聴覚障害者にとっても分かりやすいものです。

というか、視覚情報を主な情報源とする聴覚障害者は健常者以上にあのインパクトの大きなポスターは頭に残りやすいかもしれません。逆に、たまにポスターいっぱいに文字が書いてあったり、顔写真のないポスターなどもありますが、あれはハナから見ない人もいるんじゃないかなと思います。

これはきっと、聴者と平等に情報を得られる数少ない手段のひとつ。

○選挙公報

選挙に際して立候補した全ての候補者や政党の政見などを記載した文書で、公費で有権者に配布されるこれは、綿密な内容が記載されていることが多いです。

日本語の読み書きに不自由なく、ある程度の知識のある聴覚障害者にとってはこれが一番の情報源になるのではないかと思います。

かくいうわたしも、これが投票の決め手になることが多いですが、読むのにもかなりの労力がいりますよね。日本語の読み書きが苦手な聴覚障害者の人たちの中には、すぐにゴミ箱行きになる人も多いようです。

これはきっと、聴者も同じなのではないでしょうか。読む気になるか、読むだけの政治知識をもっているか、日本語の読み書き力をもっているか、そのあたりでだいぶ差が開き始めるところでしょう。

でも、SDGsなどの観点で考えると紙の無駄遣い感も否めなかったり。電子版だけでも良いような、でもまだまだアクセスできない方もいるだろうと思うので、配布の仕方については検討が必要だろうと思ったり。

○投票マッチングサイト

最近は、20の質問に答えるだけでその人の考えに近い政党を教えてくれるマッチングサイトもできています。今回の選挙選ではどのようなことが争点になっているのか、自分はどんなことに興味があるのか、を考えるのにも便利なサイトです。


この結果が全てではないけれど、何十人もいる候補者の中から自分の考えに近い政党や自分とはあまり考えが合わない政党がなんとなく絞れてくるので、参考に使っています。

これも視覚情報のみで情報を得られるので重宝していますが、日本語自体がだいぶ難しく、20問の設問に答える途中で挫折してしまう人もいそうです。「どちらでもない」という選択肢があるので(その政策に言及していない政党がここに含まれます)分かる政策だけに答えていっても良いかもしれませんね。

△街頭演説

駅前とかでやってますよね。候補者の方や応援の方が直接来て、大きな声で通行人に演説している姿。

「ほぉ。これがあの写真の人なのね。」とフムフム眺めはしますが、あんなに大きな音だと音割れしてわたしの補聴器ではなにも聴き取れません。ビラをもらっても、その候補者のことしか分からないしすぐにゴミ箱行きなので、それこそもったいない……!

最近は手話通訳を付ける候補者の方もちらほら見受けられるようになってきましたが、それも候補者次第。このことについては、この後また考えていきます。

△政見放送

これは、立候補者個人および政党・政治団体が、テレビ・ラジオにおいて政見を発表する放送番組。

テレビはまだしも、ラジオについては機械音ということもありききとれる聴覚障害者はだいぶ限られてきます。わたしも補聴器をiPhoneとBluetoothで繋げばなんとかきき取れるけれども、それも相手の声質にもよるのでわざわざきかないです。

テレビ番組には、字幕や手話通訳をおく政党・候補者もいますが、それも候補者に委ねられています。

■街頭演説や政見放送の手話通訳は、義務ではない。

街頭演説や政見放送、実は全てに手話通訳が付いているわけではないということをご存知ですか?

公職選挙法では2000年から手話通訳者への報酬を認めていますが、通訳を付ける義務はなく、対応する候補者はまだまだ少ないのが現状です。東京新聞によると、今回の参院選では、埼玉選挙区で出馬する候補者15名のうち政見放送に手話通訳を付けたのは8人のみ。

同じ日本に住み、同じ一票を持っているはずなのに、候補者の生の声を知るという時点で、聴覚障害の有無が情報の格差を生んでいます

わたしも、どんなに良い政策を訴えている候補者であっても、その演説や政見放送に手話通訳をおかない候補者は、投票したい人から除いてしまいます。なぜなら、自分の政策をわたしたちに伝える術を用意しない候補者が当選したとしても、わたしたちの声に耳を傾けてくれるとは到底考えられないからです。

■ Nothing About us without us(私たちのことを私たち抜きで決めないで)

この言葉は、国連で「障害者の権利に関する条約」が採択された際の合言葉です。この言葉には

「障害者の権利を守る国際的な条約は必要だが、それを障害者ではない人た ちだけで作るのはおかしい、障害のある人自身がその条約づくりに参画しなければならない」

という意味が込められているといいます。

わたしたち障害者には、福祉サービスを利用したり障害者年金を受給したりと国や地域のサービスを活用しながら生活している人たちが多くいます。どんな支援が必要か、その支援について真剣に議論をしてくれる候補者を選ぶ権利があるのは当然のことですし、慎重にその人たちを選んでいかねばならないと思います。

だからこそ、候補者のマニュフェストをしっかりと理解し、わたしたちの言葉を代弁してくれる政治家は誰なのかを見極めることが必要なのではないでしょうか。もしそれが仮に「いない」と判断したとしても、自分の投票用紙を白紙にして「いない」ことを訴えて、わたしたちが政治に関心を持っていることを伝えるべきだと考えています。

よし。投票行って、外食するぞ!

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