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【イベントレポ】多摩美術大学統合デザイン学科卒業・修了制作展2024
2024年1月18日(木)〜1月21日(日)に多摩美術大学上野毛キャンパスにて開催された多摩美術大学統合デザイン学科卒業・修了制作展を訪れた。同大学の修了制作展を鑑賞するのは、はじめて。今回の展示で自分が気になったものについてここで触れたいと思う。
なお、公式図録も販売しているため、個々の展示について詳しく知りたい場合には、そちらを参照していただきたい。
混虫記
米谷颯太
これは昆虫と工業製品の見間違いをきっかけとした作品。
誰でも何かを虫と見間違えるという経験があると思う。
それはその物の動きや色、形などが影響していると考えた。
僕は子供の頃、洗濯バサミがクワガタみたいだと思った経験などから昆虫と見間違いを起こす日用品には何お通ずるものがあると考えた。
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日常生活でもよくある見かけたものが「虫」や「生き物」に見える現象。工業製品と昆虫の共通点を見出し、結合した「混虫」たち。
楽譜アスレチック
中村プロジェクト
山口柚季
楽譜という紙の媒体に対してプロジェクションで映像と音を組み合わせることで、静止した紙面上のグラフィックと投影されたアニメーションとの間に意味のつながりを見出させる作品。
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楽譜の音楽に合わせて、楽譜の上でキャラクタが投影され、楽譜の上で運動している姿はとても可愛らしい。素人には難解な楽譜が、少し身近なものに感じられる。
新視点・五十音
佐野プロジェクト
加藤颯
明らかに薄い墨汁で書かれた文字。私はそれに微かな奥行きを感じると同時に「書道は平面表現である」という認識が揺らいだことを覚えています。当時生じた違和感を「立体表現」として落とし込むことで解消しました。これは文字を新たな角度から鑑賞することを目的とした映像作品です。
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輪郭の再生
菅プロジェクト
山本拓生
夜道を散歩していたとき、ハート型の水溜りを見つけた。雨が降ることで、凸凹の形がはっきりとわかるようになる。そして、水たまりの形は雨量によって常に変化している。この性質を使い、凹凸面に水を注ぎ込み水位を変化させることで、動きを作り出すことができるのではないかと考え制作した。
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水位の変化で動きを表現する試み。潮位で海岸線が色々な表情を見せることにも近いものを感じる。
Objects are connected
菅プロジェクト
東山真子
映像を鑑賞しているとき、ディスプレイの中の作品と自分との間に境界を感じました。その境界を少しでもなくしたいという想いから、制作した作品です。映像とオブジェクトのつながりかたを探してきました。
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3-dimensional input device
中村プロジェクト
田中颯
2つの入力軸をもったデバイスはマウスやタッチバネルなど様々な形態で見る事が出来ます。しかし、3つの入力軸となるとその数を大きく減らします。そこで3つの入力軸を持つ新しいデバイスを作成しました。中央に吊るされているキュープを動かす事で、そのキューブの座標に応じた音を奏でることが出来ます。また、キューブは任意の位置で固定することが可能です。新たな操作体験を是非、その手でお楽しみください。
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XYZ軸での操作を感覚的にできるデバイス。実際に移動した位置で固定することができる。
光3
関凱元
光は一般的に、実体がないという認識がある。私はプロジェクターが鮮明な輪郭がある光を投影できる性質を利用し、パネルや角にぴったり合わせて投影することにより、光そのものが宙に浮かべているように見え、立体的にも見える。また、動きを取り入れ、常に変化している立体的な光は、息しているように感じられ、まるで生物のような感じがする。以上の手法で、純粋なる光そのものの魅力を表現したいと考える。
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精度の高いプロジェクションマッピング。空中の板に寸分狂わず位置で照射された画像(光)は、あたかも空中に光の板が浮かんでいるように見える。
日本の天気 45290日
深澤・長崎プロジェクト
松原一実
国内56都市における、天気を構成する気温、降水、積雪、日照、風、の5つの要素について、124年間毎日の観測記録を可視化したグラフィックを計280枚制作し、5冊の本にまとめた。
データファイル上の数値の羅列から生成された、色鮮やかな粒の集合は各都市固有のビジュアルを描き、ひとつの粒はその日の天気を想起させる。レーザープリント、インクジェットプリント、上質紙、マット紙
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縦軸に年、横軸に日付を配置し、気象データを可視化。モニターではなく、印刷することで、土地間での比較を容易にし、直感的にその差異を把握できる。世界的な都市でのこういった気象データの可視化はよくあるそうだが、日本国内の都市を対象にしたものはないとのこと。
南北に縦断する日本列島。北部と南部の都市の可視化されたデータを比較すると顕著に違いが現れ、直感的にそれを把握することができる。
virtual mass
大前結渡
持ち上げているバケツから、水が注がれている音声と振動が再生されていた場合に、聴覚情報と触覚情報のクロスモーダルによって重さの知覚変化が引き起こされる。
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このバケツには水が注がれることもなく、重量が増えることもない。ただ、バケツをもった時に知覚する水がバケツに注がれた時に感じる人工的な音と振動が発生することによって、あたかもバケツに水が注がれ、重量が増しているような感覚になる。人間の高度で不思議な機能をとても面白く体験することができる。
Vital light
永井プロジェクト
荻田桜子
街中にある電灯は規格の中で一定の光を無機質に灯し続けている。しかし切れかけの電灯を見た時、弱々しさや最後のカを振り絞るような生命力を感じた。その気づきから、人間のような感情や様子を感じさせる「生命性のある光」を制作した。
光の強弱や点滅の仕方、位置を制御することで人間のような感情や様子を表現している。
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Dots!
永井プロジェクト
小嶋桃香
私は元来、具体と抽象の間に興味があった。特に、ドット絵のように限られた要素で表現されるものに魅力を感じている。
そこで身近なものがドットになったらどうなるか?と考えた。
自分を含む日常の場面をモチーフとし、一つのドットを球体として立体に落とし込んだ。全てがドットで表現されている曖昧な空間を制作した。
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卓球のボールのような球で構成された作品。手前の人物に当たるものが実物大の大きさになっており、そこに人間がいるような感覚になったのは不思議だった。
ちょっと嫌、ちょっと不快。
永井プロジェクト
吉田陽可
日々の生活の中において、拾い上げる程ではない小さな不快感が出てきては埋もれていくと考えています。それらに着目し、何気ない嫌/不快感(負の感情)を表現するグラフィックを制作しようと考えました。
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「不快感」を表現する作品にも関わらず、鑑賞者が「かわいい!」と感想を言っていたのがなんとも印象的だった。
日本の漢字と簡体字の比較研究
佐野プロジェクト
劉威杰
漢字は美しい、日本で使われている漢字以外にも繁体字と簡体字が存在します。日本の漢字に似ている繁体字と違い、簡体字はかなりの変形が施されています。その変形はいくつかのルールに基づいており、そのルールを抽出し可視化する作品を目指しています。
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「開発」された簡体字の構成のルールをモーショングラフィックで可視化する作品。
接触は全て文字になるか
菅プロジェクト
上野夢花
文字は書くという身体運動の痕跡である。私たちは、文字を形・意味の記憶、書き運動のリズムの獲得により習得する。それらの知識と経験で断片的な要素でも文字を認識できるようになる。今回、身体に刷り込まれたリズムを研究・再現し、筆記具以外でも文字を書いているように聞こえる作品を制作した。この研究と制作を通して、私たちはなぜ文字を扱うことができるのか、その本質に少しでも近づくことができるのではないかと考える。
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実際に、書く動作の音を聴いてみると、確かにそこに規則性や癖があり、場合によっては、どんな文字を書いているのか、誰が書いているのかの特定もできるのかもしれない。
選ぶ責任
永井プロジェクト
内藤麻帆
私たちは日常の中で商品を買う時に、その商品が環境にどのような影響を与えているのか分からないまま購入をしています。そういった商品を買うことへの選ぶ責任について考える機会を設けたいと思い制作しました。プロダクトに関連するバーコードをiPadで読み込むと、環境に良くない情報の数字が画面上に現れる体験ができます。※数値には試算も含まれます。
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生産した企業情報も含む、商品の「起源」を一般消費者が知るための仕組みは必需品になってくるように感じる。安い商品には、理由がある。
情報の手触り
菅プロジェクト
佐藤晴太
車のハンドル操作のように、直感的な操作には納得感や実感が生まれる。一方コンピューターの中の情報に関しては、マウスやタッチ操作が画面上でのインタラクションに「当てはめられている」ように感じてしまう。この作品では感触に注目した物理的なインターフェースを設計し、情報の「実感のある手触り」をデザインした。
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ゴムのチューブの先端に卓球のボールがついたようなデバイス。この引っ張るという行為と画面上のアクションがうまく連動しており、とても直感的なインタラクションを得られる。シンプルに気持ちがよい。
渡る本
菅プロジェクト
高橋海松
「渡る本」は、人と人との橋渡しとなる本の在り方の提案である。一冊の本が人から人へと渡り、それぞれが告き込みをすることで、紙面を介して、共に過ごし、語り合った時間が級じられていく。さまざまな関係性の人々の書き込みを通して、一番の本の余白に潜む、無数の読解可能性が明らかになる。
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電子書籍のKindleにもハイライトという機能があるが、実物の書籍において、書き込みをし、それを他者と共有する。ひょっとすると、一度読んだ書籍について、他者とのやりとりをするために再度手に取る機会にもつながるかもしれない。
Socket
永井プロジェクト
三好里菜
日常の中で生活するために欠かせないコンセントの存在に着目しました。多くの人が目にし、触れ、時にはコードに足が引っかかったり、気付かない内に無くなったりするコンセント。
そんなコンセントの新しい形、在り方、キャラクターを探り、コンセントと生活の新しい可能性を作品として表現しました。
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多摩美術大学上野毛キャンパス
長い歴史のある上野毛キャンパスには初めて訪れたが、2024年現在一部の建物は改築中。解体されているその姿は、なんとも哀愁漂う風景だった。
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