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闘病記② 初めての入院〜24歳で再生不良性貧血を発症〜

〜前回まで〜
倒れ込むように自宅前の内科を受診すると、血液検査の結果、白血球が異常に少ないのですぐに大きな病院を受診するように言われる。
白血病の文字が頭をよぎる。

白血病かもしれない。

怖かった。急に悪寒が走り、手が震えた。


うちの母は、こどものためだけに生きてきたような人で、貧しいながらも本当に本当に愛情いっぱいに育ててくれました。

子離れのできない、寂しがりやの、とっても心配性な母。

親より長生きしなさい、幸せになりなさい。それが親孝行だ。

口癖でした。

そんな母にはとても、伝えることができませんでした。

でも怖い。どうしたらいいのか、もしかしたら重い病気かもしれない。

私は駅に向かいながら、父に電話しました。

そして駅のホームで、重い病気かもしれないこと、入院になるかもしれないこと、母には言わないでほしいことを、伝えました。

話しながら、涙が溢れました。

父の前で泣いたのは何年ぶりだろうか。
小学生の時、学校でふざけて窓ガラスを割ってしまった時、以来かも知れない。

電車に乗って10分、そこからバスで20分、医療センターへ到着。

紹介状を渡して、受診の手続きを済ませて、血液内科の待合室で待つ間、同僚にメールを入れ、会社に電話をしました。

"病院が長引いてて、午前半休をお願いしましたが、全休にして欲しい。ただどうしてもひとつやることがあるので、終業までには一度顔を出します。"

責任感が無駄に強い私は、とりあえず入院にしてもなんにしても、なんとしてでも一度は顔を出そう、そう思ってました。

そして再び採血。

先ほど内科で5本ほど採ったと思いますが、また5〜6本のシリンジが用意され、ベッドに横になるように言われて、ぼーっとなる頭に若干の心地良さを感じながら採血終了。

結果が出るまでどう過ごしたのか、あまり記憶にありませんが、いつも忙しなく動いている私が珍しくぼーっと、窓のサッシに腰掛けて、途方に暮れていたような気がします。

時々思い立っては、週末の同窓会や友達との約束の断りの連絡を入れたり、今後の予定を見たりしてました。

そして何より、生理の出血がやっぱり多くて何度もトイレに駆け込みました。

結果が出るまで1時間半と言われてましたが、40分ほどで呼ばれて、心の準備もできてなかった私はドキッとしました。

診察室ではまず、

今の時点では、なんとも言えない。

ただ、赤血球、白血球、血小板、全ての血球が異常に少ない。

他に、飲んでる薬(皮膚科で出たビタミン剤と、肩こりの市販薬を飲んでいました)、サプリメントなどあるか、最近変わったことをしなかったか(当時肩こりがひどく針治療をしました)、歯肉(はぐき)出血はないかや、ベッドに寝て、腹部を押さえたり、腫れや痛みの確認があったと思います。

とりあえず、今のままだと大変危険なので、輸血をします。

真っ赤な血液、赤血球と、オレンジ色をした血小板の輸血、4時間くらいかかったかもしれません。

輸血中に、

あ、今日は入院になります。

と、さらっと言われました。

先生、とても大切な仕事があるんです。

あなたの命よりも大切なんですか?

真面目な顔で、そう言われました。

また、両親は心配性なので、できれば伝えたくない、検査入院と言うことにできないかと伝えたところ、そんな状況ではないと一喝。
すぐにご両親を呼んでください、この入院は長くなるよと。

この時の私はまだまだ全然状況が飲み込めてませんでした。

あまりの先生の剣幕に観念し、父に、母に伝えて仕事が終わったら2人で来て欲しいと伝えました。

2人はすぐに来てくれました。

血液内科の病室が空いておらず、婦人科の病室へ入りました。

初めての入院。

知らない人との同室生活。

4人部屋で、なぜか私のベッドにだけ、ビニールで仕切られていて、頭側から風が出ている。

圧迫感が半端ない。

元気なだけに、仰々しくてなんか恥ずかしい。

そして、若い女性たちの好奇の目。

その1番の理由は、このベッド、風が出ている=ファンが回っている=うるさい。

常に、ごめんなさい、という気持ちでいっぱいでした。


さてどうしてこんな、ビニールベッド(クリーンベッド、無菌ベッド)へ入らないといけないのか。

白血球が少ないことで、感染症にかかりやすい。

はーなるほど。元気だけどね。

そして、血小板が少ないことで、絶対安静。
万が一出血したら止まらない。

体の中や頭の中など、ぶつけたり圧迫して出血しても、普通だと自分の力で自然治癒するものも、治らないため。

それから、赤血球が少ないので、酸素が行き渡りにくく、息切れ、動悸がしやすい。貧血になりやすい。倒れやすくなってるので、階段などもってのほか、移動は車椅子で、看護師さんの付き添い必須、まで言われました。

そんな、仕事に行こうとしてる人間が、車椅子?
大袈裟だな〜

と思ってましたが、生理の出血が続いてるせいか、この時すでにトイレに行くだけでもひどい立ちくらみと倦怠感、頭痛で辛かったです。

両親は本当にびっくりしていました。

風邪もそうそう引かない、骨折もしたことがない、今まで健康だけが取り柄だった私が。

なんかよくわからんけど急に入院って。

わからんから、怖い。

はっきりしないから、恐ろしい。

母はいつにも増して優しく、ゼリーやジュース、ふりかけ、梅干し、菓子パン、雑誌、イヤフォンなど、たくさん買い込んできてくれました。

そして大部屋なのに、なんでどうして、何がどうしたの、などと騒いで、大したことないよ、検査検査、と宥めるのに必死でした。

主治医からざっと説明があり、原因がわからないので色々調べたいと言われました。

泣く泣く、会社に電話。どうしても行けないこと、数日休みが欲しいこと、状況がわかれば報告しますと伝えた。

親が帰ったところで、先生に白血病なのかと聞くと、まだなんともわからない、とだけ返ってきました。

その日はタオルを口に当てて、声を押し殺してしくしくと泣きながら寝ました。

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