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信州から10時間。八甲田山でツリーラン

雪国生まれ雪国育ち。おまけに冬生まれ。
子供のころから冬の遊びはスキーかスノボ。

長野オリンピック開催の地。
それが私の生まれ故郷。

四方八方を山に囲まれ、ゲレンデは選びたい放題。仕事終わりに30分でナイターに行ける。

週末はどこのゲレンデに行こうか。
白馬・戸隠・妙高・佐久平・野沢温泉。

名だたる名山が選びたい放題の、スキーヤー・スノーボーダーにとって憧れの地。
その地に25年間住んでいた。


誰に教わったかも分からないが、気付けばスノボで飛んだり跳ねたり回ったりするほどには滑れるようになっていた。

平らなゲレンデでは物足りなくなってきた20歳の頃。ツリーランを知った。そしてその魅力にはまった。


ツリーラン。自然の中に。


通常、ゲレンデというのは安全のため障害物が何もない。
コースは丁寧に整備され、木がそびえたつ林の方には行かないよう柵がはられている。


ツリーランは、整備されたコースではなく、森の中を木々をぬって自由に滑る行為だ。

もちろんほとんどのゲレンデでは禁止されている。危険だからだ。木に激突すると命の危険すらある。

とあるゲレンデのツリーラン専用コースでは、入り口に警備員がいてスノボの技術を一目見て「君は無理」「君はいい」と許可をもらわないと入れない。


私と夫は信州でのツリーランをしばらく楽しんだ後、どちらともなく考えるようになった。


「八甲田山で滑りたい」


八甲田山といえば、死の雪中行軍遭難事件でも有名なあの山だ。夫はすでに友人と何回も八甲田山に出かけていた。


「私も行きたい」


2013年。
2人で八甲田山へと向かった。


八甲田山まで、車で10時間かかった。
オヤツを食べても寝ても休憩を挟んでも。
ご飯を食べてもまた寝ても、まだつかない。

想像以上にに八甲田山は遠かった。



豪雪で有名な酸ヶ湯についた。
信州の山もすごいけどここもすごい。

せっかく来たので酸ヶ湯温泉に入る。
とてつもなく広い。

そして味噌おでんを食べた。
うまい。


目的地、八甲田山が見えてきた。
雪中行軍の銅像があった。
予習のため映画を見てから来たけれど、スカッと晴れた日の八甲田山に恐ろしげな雰囲気はなかった。

ロープウェーで山頂へ。


初めて足を踏み入れた八甲田山は、静かで、荘厳な雰囲気に包まれていた。
私が信州で慣れ親しんだゲレンデとはひと味違う。そもそも音が一切ない。どこからどこまでがゲレンデなのか分からない。というか、ゲレンデなんてものはない。木に雪がうずたかく積もって、大きな雪のモンスターがあちこちに立っている。


木に巻かれたリボンを目印に滑り降りていく。迫り来る雪のモンスターを右に左に避けながら真っ白な世界をすすむ。



自分の滑走音と風の音しか聞こえない。

この山の中に一人ぼっちの気がして、最高だった。怖さも、寒さも、心細さも、自然への脅威も、感動も、全部私だけのもの。

ザワザワとした不安と高揚を混ぜたような感情が、足の先から頭の先まで突き抜けた。


舞い散った雪の飛沫が、私の感情と混ざって空で弾けた。



#私のこだわり旅





※初めて八甲田山に行く際はツアーガイドさんなどの同行をおすすめします。単独で行くと危険です。山に慣れている人と必ず行動してください。

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本田すのうl書いて読む主婦
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