見出し画像

産業医に安全衛生委員会に出席してもらうとき人事はどうすればいいの?

事例

 産業医の執務日。人事の朝倉は安全衛生委員会が開催される日であることを思い出した。

朝倉「(面談もないし、とりあえず参加してもらうか)今日はちょうど安全衛生委員会が予定されていますので、佐々木先生に是非とも出席していただこうと思います。」

佐々木「承知しました。(そういえば、今まで委員会に参加することなかったなぁ。)」
 
会議室にて・・・

朝倉「それでは、みなさんお揃いですね。安全衛生委員会をはじめます。今日は丁度、佐々木先生の執務日だったので出席してもらいました。よろしくお願いいたします。」
 
佐々木「よろしくお願いします。」
 
佐々木は、ふと手元の配布資料に目をやった。


佐々木(だいぶ簡単な資料なんだな。)
 
朝倉「では、まず、健康診断の受診状況です。営業が6人、開発が4人とまだ受診していない人がいます。必ず、今月中に受診させてください。」
 
山田「すみません。管理職として、きちんと受診させます。」
 
西尾「もう2人は受診しているのでほかの2名も早めに受診させます。」
 
朝倉「次に、安全衛生管理者の巡視の指摘事項とその対策を確認します。先週、共用スペースのシンクが汚れていたので、業者に頼んで清掃してもらいました。」
 
・・・・(会議は淡々と進んでいく)・・・・
 
朝倉「年末年始になりますので、飲酒には気を付けたいですね。そういえば、佐々木先生、健康上どれくらいまでなら飲酒していいんでしょうか?」
 
佐々木「(えーっと。たしか1日30gだっけ?)そうですね。アルコール量で30g程度までと思います。ビールで言うと500mlくらいまでにしましょう。(これでよかったっけ?)」
 
朝倉「ありがとうございます。その他、何かありますか?」

・・・・(沈黙)
朝倉「あ、急ですみませんが、せっかくなので佐々木先生、全体通して何かコメントいただけますか?」
 
佐々木「はい。年末にむけて大変な中、皆さんがお仕事をされていることがわかりました。長時間労働はくも膜下出血などの病気の原因となるので、なるべく避けましょう。忙しい月の翌月は有休をとるなど工夫しましょう。」
 
朝倉「そうですね。IT業界では皆さん長時間残業してますから、健康には悪いですね。」
 
佐々木「そういえば、先月の喫煙所の指摘は報告になかったですね。受動喫煙の問題は特に注目されているので、少なくともきちんと分煙することを検討してください。」
 
朝倉「(あ、やばい。僕以外、みんな喫煙者だから議事録に入れるのを避けたんだよなぁ。事前に伝えとけばよかった。)すみません。次回までには何とか対策しておきます。では、今日はこの辺にしますか。来月は1月15日にします。」
 
全員「ありがとうございました。」
 
朝倉(せっかく佐々木先生に参加してもらったけど、もうちょっといい感じにできなかったかなぁ)

朝倉は安全衛生委員会をもやもやした気持ちで終えたのだった。

事例の解説

 せっかく佐々木が参加する機会でしたが、朝倉は産業医を活かしきれずに安全衛生委員会を終えることになりました。
 産業医には、安全衛生委員会に出席してもらうことが好ましいとされています。事業所として産業医に何を期待し、どのような準備をすればよいでしょうか?

安全衛生委員会に参加してもらう前に準備すること

  • 産業医への期待を伝えよう

 安全衛生委員会がどのような機能をもっているのか、産業医にどんなコメントをしてもらいたいのかを事前に伝えるようにしましょう。事例では、開催時期が年末だったため、朝倉はアルコール摂取に関して話をすると参加者の関心をつかめると思ったのでしょう。事前に、佐々木にアルコールの摂取に関して話題にすることを伝えておけば、佐々木もより的確にアドバイスをする準備ができたかもしれません。時期に合わせた情報提供をすることで安全衛生委員会の議論も活性化が期待できます。年間を通じて産業医にこんな話をしてもらいたいということを事前に伝えておくと良いかもしれません。例えば、1年間の話題には以下のようなテーマがあげられます。



参考)岩崎明夫, 衛生委員会の進め方, 産業保健21, 第79号, 2015.1
  • タブーを伝えよう

 言ってはいけないことを産業医に言わせないようにサポートしましょう。事例では、以前指摘していた受動喫煙への対応が議事録に入っていませんでした。背景として、朝倉が参加者の特性に配慮した意図がありました。是非はともかくとして、事前に情報共有ができていれば、佐々木も話し方を工夫できたかもしれません。たまにしか参加できないにもかかわらず、意図しないかたちで参加者のひんしゅくをかってしまった可能性があります。産業医をうまく活用するためには、根回しも大事です。会社のこれまでの経緯や関係者のくせなども産業医と共有して、産業医が無意識のうちにタブーを犯さないようにサポートすると良いでしょう。

産業医が安全衛生委員会に参加できない場合

  • 安全衛生委員会の議事録を見せておこう

 産業医が参加できない場合もあると思います。産業医が安全衛生委員会に出席できない場合は、その月の安全衛生委員会の議事録を後日確認してもらうようにしましょう。必要に応じて、専門的な立場から意見を期待することができます。議事録に産業医のコメントや捺印があることで、労働基準監督署が監査にはいった場合などに、産業医から意見を得ていることの証明になります。産業医が参加できるとなった場合に、これまでの議論を踏まえた上でのコメントが期待できます。

まとめ

 安全衛生委員会は安全衛生活動を行っていく上で、重要な会議体です。産業医は専門知識をもつメンバーとして、大いに貢献が期待できます。事例にあげた内容の他に、他職場での改善事例を教えてもらったり、年間計画の立案や効果的な目標の設定に関して意見をもらったりもできるでしょう。まずは、事前の準備をしっかりすることで最大限産業医に貢献してもらいましょう。

本記事担当:@mepdaw19

 記事は、産業医のトリセツプロジェクトのメンバーで作成・チェックし公開しております。メンバーは以下の通りです。
@hidenori_peaks, @fightingSANGYOI, @ta2norik, @tszk_283, @norimaru_n, @ohpforsme, @djbboytt, @NorimitsuNishi1@norimaru_n
現役の人事担当者からもアドバイスをいただいております。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?