始めました(JES通信【vol.145】2022.04.11. Mr.榎本の徒然ダイアリーより)
今回はJES通信【vol.145】に掲載された当社社長、榎本正己のコラムを転載します。これを読んで、自分が医者になって仕事を始めたばかりの、右も左もわからず不安だった頃を思い出しました。みなさんはどのような経験を経て今の仕事を自分のものとされましたか。
「社長も何か書きたいんじゃない?」
意欲を巧妙に刺激するセリフでJES通信の担当者にけしかけられたのは2か月前。<提案・改善大歓迎>と言っている身としてこれを断るのは忍びない。実際、書きたくないわけでもない。<何書けば良いかな?>「何でも良いんじゃないですか?」おぉ何という全幅の信頼(丸投げ)!<じゃ内容を考えておきます>
そして先日。「原稿まだですか」<う…>「書きたいこと書けばなんでも正解ですよ。社長が書くのが大事。社内向けに書いているコラムみたいなものでもいいし、先日の学会発表でも」<学会!それはいいかも!>作業の遅い部下を上手に動かす上司の鑑かな?と感心しながら筆を執っています。正確に言うと、嬉しさでニヤニヤしています。小さいながらも会社のトップに、一スタッフが意見や督促ができる組織はそんなに悪いものではないだろうと。スタッフの責任感と積極性に感謝です。
さて本題。3月末に名古屋で行われた産業ストレス学会のシンポジウムに出演しました。全体テーマは「ポストコロナを見据えたセルフマネジメント」。私のお題は「キャリア(つながり)」。働き方が大きく変わりつつある中、自律性、自発性、主体性など様々な「セルフ」の重要性が高まっている。ここにキャリアの観点から話題提供するのが私の役割でしたが、スタッフにお尻を叩かれている私が「自律性」を語ってよいのか…と思いながら以下のような話をしました。
「社会人になる」という言葉の通り、就職はそれまでの自分から新しく生まれかわる側面があり、心理学を学ぶ身としては「死と再生のプロセス」なんて言いたくなります。以前の自分のままではうまくいかないと悟り(リアリティショック)、何かができる(業務適応、効力感、有効性)ようにならなければならない。しかし一朝一夕には進まない。「ずっとできないのでは」「ここに居て良いのか」と自分を疑う時、「最初はそんなもの」と受け入れ励ましてくれる周囲との関係(社会的受容)に救われて踏みとどまり、何だかんだと揉まれるうちに徐々に成果を得て自信がついてくる。それが入社1~2年目の職場適応、キャリア課題といえると思います。
上記(1)の取り組みはこの一連の流れを振り返るものですが、単に「できるようになったこと」の確認だけでなく、奮闘の中で発揮された「自分らしさ」の発見も企図しています。踏ん張り、立ち上がってきた経過に昔からの性分が役立っていたり、はたまた今まで知らなかった自分に出会ったり。一度破壊された自己像を再構築して自分と「つながる」と、「大変だったが意義深い一年だった」と物語はリフレームされ、経験を糧に働いていく活力が生まれるように感じています。
一方、「できている」感覚は他者からのフィードバックで実感できるものであり、自分だけで感じているなら危ういものと言えます。できていること(ポジティブ)と伸びしろ(ネガティブ)の両方のフィードバックがあって初めて、人は自分の相対的な立ち位置が見えてきます。テレワークでは周囲の人の言動を観察して知見を得たり答え合わせしたりといった自己学習が行いづらく、周囲のフィードバックの重要性は高まると考えられますが、見えない相手への指示指導の難しさは皆さん強く感じられているかと思います。
ただ、業務に関する成否や正誤、変化・成長に関する正確な情報は、EAPカウンセラーがいくら頑張ってもわからないですし伝えられません。難しいとは思うのですが、ここはやはり上司や同僚の方々にお願いするしかありません。1on1、メンター制、チームミーティング、社内SNS。上司のみが育成を担うのは大変ですので、チームメンバーも関われるとベターでしょう。
主観的やりがいや幸福感と客観的な自己認識。きっとどちらも大事です。日常のフィードバックは企業内で。EAP相談や研修は人間関係からのドロップアウトを防ぎつつ、非日常での振り返り・内省を担う。そんな役割分担もしながら「個人間」と「個人内」の両方の「つながり」を支援することが、働く方々の適応や成長につながればと考えております。今年度もどうぞよろしくお願い申し上げます。
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