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さんぽセンター東京でアルコールの研修を行いました

 2019年から年2回、東京産業保健総合支援センターで、産業医の先生向けの研修会を担当しているのですが、去る2023年9月1日、職場のアルコール問題について話をしてきました。参加者は約50名でした。内容は以下の通りです。

▼講義の内容

1.アルコール問題の実態
2.アルコールの身体・精神への影響
3.アルコール依存症とは
4.職場のアルコール問題
5.産業医面接の実際
6.職場のアルコール問題対策

▼アルコール問題に苦労する産業医

 2019年から5回、アルコール問題の研修を行ってきましたが、毎回研修終了後に、先生方が日頃困っているアルコールの個別相談を受けます。いずれも一筋縄ではいかないケースで、職場でお酒のトラブルをいくつも起こしているのに問題を認めないとか、お酒で肝臓を悪くしているのに受診しないとか、同僚からなぜ酒をやめさせないんだと苦情が出ているなど、先生方の苦労が伝わってきます。そんなこともあり、昨年までの講義はアルコール依存症者への対応に重点を置いていました。

▼産業医こそアルコール依存症を予防できる

 しかし20年以上アルコール臨床を経験してきてつくづく思うのは、「アルコール依存症にならないでほしい」ということです。依存症になるまでに仕事や家族など大切なものをいくつも失い、断酒しなければ命も落とします。しかし酒を飲み過ぎなければ依存症にはなりません。酒を飲み過ぎない指導ができる場がどこかというと、職場なのです。そしてその役割を担えるのが産業医や保健師などの産業保健職です。産業医の先生方がアルコール問題への理解を深めてほしい。そういう思いからこの講義を引き受けてきたのですが、今年はさらに一歩踏み込んで、まだ依存症レベルまで進行していない人に、どのような対応をしたら飲酒量を減らすことができるか、実際のやり取りを再現し、お見せすることにしました。できれば小グループに分かれ、シナリオ・ロールプレイとしてセリフを読んでみて、相談する側と相談を受ける側がそれぞれどのように感じるか、体験していただこうと思ったのですが、コロナ第9波ピークの時期でしたので、私の方で読み上げるだけにしました。

▼やはり具体例は大事

 終了後のアンケートでは、
・実践的ですぐ使える
・とてもわかりやすい内容で産業医業務に役立ちそうなことばかりだった
・事例のやり取りを各種面談で活用したい
・面白かったのでもっと聞きたかった
といったありがたいご感想をたくさんいただきました。
 モデル面接のシナリオに加え、実際の面接場面で、「また酒の話でしょ?」とか、「どうせ飲み過ぎなんでしょ?」とか、「酒なんか減らしてもいいことないですよ」みたいな否定的な反応が返ってきたときにどう答えるか、具体例をお示ししたのもよかったようです。これは肥前精神医療センターの杠先生たちが作られた「ABCDプログラム」の手引きを参考にアレンジしたものです。杠先生のグループは20年以上減酒指導に取り組まれており、HAPPYプログラムなど、この分野で大きな実績を残されています。先生方の活動に感謝申し上げます。
 今回いただいたフィードバックを踏まえ、内容をさらにブラッシュアップしていきたいと考えています。
 次回担当する研修は来年3月で、テーマは「復職支援の勘どころ」です。前の月に東京産業保健総合支援センターのホームページに募集が出ます。無料のためか、例年、募集開始半日くらいで埋まってしまうようですので、時々ご確認ください。アルコールの研修はまた9月を予定しています。 

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