2-5 無痛、神っす!最高のお産・無痛とうつは関係があるのか?

●まだまだ、と言われた翌日、突然の陣痛

  予定日約10日前。ベテランの男性医師の内診で「まだまだ赤ちゃん下りてきていませんので、どんどん歩いていください」と言われ、まだ先か、なんて思いつつも、夫が出張中に陣痛が来たら・・ということで、翌日から1泊2日で義母に泊まり込みで来てもらっていた。

 妊娠中から、上の子の甘えもあり、添い寝生活(寝室が狭いので夫は別部屋)であったのだが、午前4時ごろ、ん?なんかお腹が痛い。

 ん?前駆陣痛か?ん?いや、この休み休みくる感じ・・。

 私は、第1子を産んだ際は、陣痛が5分を切ってから来いと言われて、入院セットもって陣痛タクシーで行っていったん入院したら、陣痛がひいて帰宅させられた経験がある。 陣痛はそして10分くらい間隔で続き、10分ごとくらいに痛いよーとうずくまりながら、夫と近所を散歩していた珍経験)ので、今回は慎重にと思っていたが、痛くなっていく。

 陣痛アプリ(陣痛の間隔をタップするだけで記録できるもので、陣痛来る前にDLしておくと便利ですよ。)で測る。

 これは、規則的だ。そして、もう7分切ってない?やばい。麻酔遅れになっちゃうと自然分娩になるーーー!

 ちょうど夫が出張に行くために別室で準備をしている時だった。

 「陣痛、来たわ!たぶん。間隔7分。行ってくる」

 というと、夫がいきなりハンディカメラを回し始めた。あほか、と思うが、経産婦だとそれくらい余裕があるのだ。A病院は出産中の動画撮影が可能で、記録に残しておきたいな、と充電しておいた。

 病院に電話をしたら、すぐ来いとのこと。(車で30分~40分かかる)

 陣痛タクシーに電話して、用意していたスーツケースを用意する。まさか昨日のきょうで来るとは思っていないので、上の子にもしっかりお別れが言えなかったのが心残りだった。やっぱりいつ陣痛は来るかわからない。もうすぐ2歳児だって話せばわかる。

 「お母さんのお腹の赤ちゃんがユウちゃんが眠っている間に、お外に出たい!ってなったらお母さんは病院に行くかもしれないから、お母さんが朝起きていなくても心配しないでね。ばあばか、お父さんがいつからね」ともっと先に言っておけばよかった。

 麻酔分娩の際の食事の取り時だが、経産婦だとしてもある程度、子宮口が開くには時間がかかるので麻酔まで時間があるケース、麻酔が間に合わなくて自然分娩になるケース両極端の確率を考えで、何か食べえておいた方がいいと思い、バナナと野菜ジュースを流し込んだ。

 (結果論からすると、麻酔は、食事後4時間あかないと麻酔を入れられないので、後から後悔)

 「朝起きてお母さんがいない、と大変でしょうが、お義母さん、お願いします」と義母に上の子を託し、

夫からは「まさかの出張の日に、出てこようとはこの子は、おてんばだね、きっと」なんて笑って送ってくれました。

 陣痛タクシーはすぐに来てくれた。破水もしていないし、陣痛もまだまだ、こんなもんか(経験済みなんで)と思いつつも痛むときは痛み、でも痛みが引いているときは、夜にタクシー乗るなんてわーい、久々♪ 東京タワーもきれー♪ なんて思いながら30分くらいで病院についた。

●激痛からの麻酔、「麻酔、神っすね!」(コウノドリと同じ)

 夜間出入口から入り、LDR(陣痛から分娩、その後の回復まで1部屋でできる)に入る。

 助産師さんは、30代後半くらいの方だろうか。ほんの少しぽっちゃりした笑顔のキュートな方だった。

 「いい感じで陣痛来ていますが、お食事とったのが午前4時(30分ごまかした)ですので、麻酔を入れるのは午前8時以降になりますね。でも、さすが経産婦さんですね、落ち着いていますね。きょはこれからお産の予定がバンバン入っていますから忙しくなりますよ!」と言われ、

 「私、早めに終わらせてみなさんの仕事早めに無くしますから」など軽口たたくほど、痛みがない時は平然。

 荷解きをして、コンドウアキさんの育児コミックエッセイ「トリペト⑥てんてこしまい」を取り出して読み、きょうだいができるんだよなー、いやー可愛いよなーなんて(第1巻から、トリぺと、大ファン)を読んだり、夫にLINEしたりと余裕をかます。

  しかし、陣痛の痛さはどんどん増していく。やばいこれは麻酔までの数時間、動けなくなる前に、飲み物を買いに行こう。

 ナースステーションの横を通り、自販機の前に立ったら、来たー陣痛。この時には間隔が5分を切っていた。這いつくばりながら、硬貨を投入口に伸ばそうとプルプルしている私を不憫に思ったのか、外国人の男性(たぶん、立ち会い出産の休憩で外ソファにいた)が「ガンバッテクダサイ」と激励してくれた。センキュー!とほぼ這ってナースステーションに行くが誰も助けてくれないあたり、やっぱり陣痛は何をどうやっても痛いし、逆に動いてください、くらいの勢いなんだよね。これ、1人目の出産だったらさみしかったかも。手にポカリ2本と緑茶2本抱えて。

 痛みの加速が、早い。とにかく、痛い。冷や汗が出で「ギャー」と叫んでしまう。第1子の時のあの痛いお産のフラッシュバック。

時計ばかり見る。あと8時半まで2時間もこれ、やるの?まじ?陣痛が来るたびに、分娩台の横にあるバーにしがみついて、痛い!!!と、一人叫ぶ。

 とはいっても、痛みが治まる瞬間があるのが、陣痛。夫に「いま子宮口5センチあたり」とか余裕でLINEする。

 あまりにも痛がるので、助産師さんが「藤田さん、8時まで待たずに、午前7時半すぎに、麻酔の先生来たらもう入れましょう」と見逃しOKが出て歓喜した。

 とかいいつつ、結果的に午前8時に麻酔医の先生が来る。超絶痛い中、「うわー小柄な美人さん!」なんて思っていた。

 麻酔の先生と助産師さんといろいろ話した後、「藤田さん、麻酔入れますね~」

 うおーーー!!来た。この時を待っていました。この時のためにここを選んだんだ!第1子を産むときに「次はA病院で!」と叫んだときのことを思い出してしみじみしてしまう。

 「藤田さん、相当痛がっていますから、硬膜外ではなく、脊椎に入れますね。経産婦さんですしいいでしょう。あんまり体力消耗しないように、それで行きましょう」

 「ありがとうございます!!」もう硬膜外だろうが脊椎だろうがどうてもいい。

 そこからは、神。背中からすーっと何か冷たいものが入ってくるような感覚の後、陣痛は消えた。

 「麻酔、神っすね」麻酔医さんに思わず言ってしまった。

 (同じようなシーンがコウノドリシーズン2の無痛分娩の回にある。妊婦「麻酔、神っすね」麻酔医「よく言われる」、のあのシーンです)

 その後、短髪の男性麻酔医も立ち会い、さすがA病院!麻酔医2人態勢かよー潤沢すぎー!なんて感動していた。

 麻酔の管が通された後は、陣痛の痛みがきついなと思ったら、左手でボタンを押せば自動で麻酔が投下される仕組みだ。これも、投下しすぎないように自動制限がかかる。A病院には、麻酔分娩に関してその仕組みやリスクなどを説明する会があり、それに出席していると料金が5万円減額される仕組みがあり、かなりの確率でこの麻酔学級に希望者は参加する。私は、その説明会でもあったように、麻酔が効きすぎるといきめなくなり、陣痛促進剤(子宮収縮薬)を投入する率が高くなると覚えていたので、痛みは我慢で切る程度に収めていた。それでも、LINEで旦那と「いま麻酔入った、まじ神」とか、「助産師さん、熊本出身らしい」とかどうでもいいやりとりを延々とできたくらい、最高に楽なお産だった。

  この麻酔を受けている間に、女性麻酔医とも結構長く話をした。私は、職業柄、ひとに興味があるので、なぜこの人がどういう人生や経路をたどってこの場にいるのかというのが好きな性分である。結構ひとによっては厄介なやつだと思われるでしょうが・・・

 麻酔医の宿命は、宿直である。担当の女性医師は、2人子どもがいて月2回の宿直をこなしていること、そのために義母に泊まり込んでもらっていること、休みの日に家事をしたくないので家事代行を頼んでいることなど、いろいろためになる話を聞けた。携帯でメモしていたくらいだ。

 助産師さんも、とても良い方だった。あまりにも無痛が楽なので暇だったので、なぜこの病院で働くことになったのか、などの話をお聞きした。意外に思ったのが、第1子の病院も今回もそうだが、未婚でお子さんのいない助産師さんは結構多い。コウノドリの小松助産師もそうだった。この助産師さんは、地方でやっていたが、結婚して引退も考えたが、一回東京の大きな病院でで自分の腕を試してみたくて応募した、ということ。

 道がそれるが、おっぱいが出ないで助産師と攻防する「おっぱいポリス」の回で助産師さんのことをある種、酷評してしまったが、彼らには敬意を持っている。助産師になるには、看護師になった後に、さらに2年の研修があり、国家試験を通って初めて名乗れるのだ。そうしている間に、30代に突入して、一線で修行していたら、赤ちゃんの産み時って難しんですよ、と言っていた。それは女性医師もそうだろうし、私のようなマスコミ勤務もそうだった。一人前になるのはだいたい30過ぎたころ。仕事も体力も脂がのっていることろには、医師なら専門医の資格をとったらもう30半ば、はて結婚・出産どうしよう、となる。

 

●お産の進みをよくするのにおっぱいを揉めとな

 肝心のお産の進みだが、赤ちゃんの旋回(赤ちゃんは少しずつ回りながら子宮口まで下りてくる)が途中で止まっているので陣痛促進剤を使うことになるかもしれない、その場合は産科医が最終判断をするとのこと。了解しました。

 私は、赤ちゃんの健康が最優先で途中で麻酔を打ち切ろうが、帝王切開になってもなんでも構いませんからと言っておいた。陣痛促進剤を打つ同意書にサインをする。そのあと、助産師さんから、そこで、へ?と言われるミッションが出される。

 「お母さん、乳首のあたりを暇な時に刺激してください。オキシトシンというホルモンが出てお産の進みがよくなるので」

 Nスペ(ママたちが非常事態!?最新科学でみるニッポンの子育て →本にもなってます!)でも有名になったあの幸せホルモン「オキシトシン」かーなんて納得しながら、無言で、自分の乳首をつまむのを繰り返す。変な構図だ。このオキシトシンは愛情ホルモンともいわれる、授乳の際に出たり、スキンシップなどでも分泌が促進されるとか。

 ほどなくして、男性のマッチョな産科医がやっと来た。基本、順調なお産ほど産科医がLDRに来ることは産まれる直前くらいだ。助産師さんと何やら話している。

 「赤ちゃん回らないなら粘らないで促進剤入れてもいいと思うよ」

 助産師さんが「あともうちょっとやれば回る気がするんです。ちょっと待ってもいいですか?」

 (このひと、私のお産のこと、本気で考えてくれてるんだ・・・ジーン)

 ドラマ「コウノドリ」の大ファンなので、勝手にマッチョ医師を星野源演じる産科医・四宮先生と私は心で名付け、この助産師さんを吉田羊演じる助産師・小松さんと心の中で呼び、「コウノドリみたい♪」なんて上機嫌。(詳しくはシーズン1の第7話「母との約束 理想の出産って何?」をぜひ見てください!)

●イキむ度に「ウンコでそうなんですけど、いいですか?」と聞ける最終局面

 最終的に、赤ちゃんは無事に旋回して、さぁ出てくるということに。

 マッチョ四宮先生が、「手を入れて、破水、させますので~」

 ばちんと切れて、じょわーと羊水が流れてくる。上の子の時には陣痛がマックス痛くて何が何だかわからなかった。破水したときに、「何かでましたー漏れましたー」とか絶叫していたな、と思い出す。それに比べてなんて楽なお産なのだ。

 そこからは、軽い生理痛くらいに感じる陣痛に合わせてイキむを繰り返す。

 そのたびに、「すみません、イキむとウンコでそうなんですがいいですか?」

 マッチョ四宮先生もも、小松さん風助産師も

 「大丈夫です。かなり赤ちゃんで圧迫されていて、出ませんし、たぶん、出たとしてもごく少量ですから」

と何度も押し問答するほどの余裕。

 そして・・・ぬるんと、またから大きなものが出た。やったー生まれた!!

 すぐに赤ちゃんはきれいにされ、何か異常がないかチェックされる。それを横でニヤニヤしながら見ていた。

 助産師さんに、

 「すみません、実は、この病院を選んだ『隠れうれしいポイント』でLDR内で動画撮影OKとあったんですが、この通り、旦那もいないので撮ってもらえますか?」とダメ元で言うと、「もちろん!」とiPhoneを手に取って、体重を測る様子まで2分ほど動画を撮ってくれた。写真も撮ってくれ、その間に、会陰の縫合など産科医がしていたが、縫われている間隔はあるが痛くない。

 「藤田さんの赤ちゃん、妊娠糖尿病の影響も特にはなさそうです。よかったですね。おめでとうございます」。

 笑顔の少ないマッチョ四宮先生だが、

 「最後までウンコ出てもいいですか、を連呼してすみませんでした」と言ったらくしゃっと笑ってくれた。

 そのあとは、カンガルルーケア。小さな小さな、黄色いニット帽をかかぶった、ふにゃふにゃの首も座っていない、目も開いているのか開いていないのかも微妙な新生児。ふあぁという泣き方も可愛くていとしい。満面の笑顔で写真も収めてもらい、早速夫にLINEを送る。

 「最後の最後には、きちんと旋回して安産で本当にいい子ちゃんですね!」

 助産師の祝福の言葉に、私は幸せをかみしめていた。

 昼間のお産だったので、担当してくれた女性麻酔医も祝福に来てくれた。お産早くてよかったですね、これからまだまだこのフロアはお産ありますからね!藤田さんの幸先いいお産でよかったですと言われて嬉しかった。

 私は無痛分娩がぴったりといろんなタイミングがあたり本当に幸運だった。麻酔科医が日勤でいる時間帯だったこともだ。いかに、第1子と比べて余裕があるかおわかりいただけるだろう。

●「無痛分娩だから『うつ』になった?

 無痛分娩については、その仕組みやリスクなどは、順天堂大学がwebで公開している冊子がよくまとまっているので参考にしてもらいたい。

私は、出産時は、A病院を選んで無痛分娩にしてよかったと心底出産時に思った。

 しかし、産後うつに陥った時に、夫が「無痛だったのが産後うつにも繋がったのでは?陣痛を経験して産むと、大量のオキシトシンが出るっていうじゃない。まだ無痛分娩はその結果と関連性に関しては材料不足だけど、海外ではそれを指摘する論文もあるにはある(→これでしょうか)」と言われ、ショックを受けた。

 そして、反論した。「そんなこと言ったら、フランスでは約8割が、アメリカだと約6割が無痛なわけで、しかもそれは何十年か前からトレンドだし、それが産後うつやってたら今頃大問題ジャン。じゃ、帝王切開だとどうなの?」と。夫は押し黙った。

 もしかしたら何十年かあとにそういう研究結果が出る可能性はゼロではない。でも、いまそんなエビデンスに基づかない反「無痛」自然で産むのがよろし、は受け流しておいてください。

 また、 無痛分娩の妊産婦さんの死亡例などがここ数年、メディアでも取り上げられ、無痛怖くないか?という方もいるだろう。特に順天堂大学病院にように、無痛分娩のパイオニア的病院(救急体制も整い、24時間麻酔医がいる)で、子宮破裂を起こし死産となった例で訴訟が起きたのには、私もショックを受けた。

 無痛分娩、そのリスクはゼロではありません。東京都立多摩総合医療センター麻酔科医長の田辺瀬良美 医師がBuzzfeedに寄稿している「無痛分娩、過度に恐れる必要はありません 麻酔科医の視点から」を読んでもらいたいです。その結びの文章がすべてを物語っている。

『自然分娩でも帝王切開でも無痛分娩でも、一番素晴らしいお産は「母児ともに安全である出産」だと私は思います』まさにそうだ。

●産後うつで家族は「犯人捜しをしないで」

 夫の「無痛分娩だったのがいけなかったのではないか」発言は一つの例ではあるが、産後うつを発症した場合「何がいけなかったのか」とにかく、本人も家族も追及したくなる。産後うつになる場合、その要因は「1対1」の関係ではないことが多い。なんらかの複合要因だったりする。その環境要素や、心理的不安を医療関係者と一緒に物理的に・心理的に取り除いていくことが必要なのであるが、ついつい「犯人捜し」をしたくなる。しかし、安易な理由捜しは、私はやめておいたほうがいいと思う。本人だったり、周りが傷つくからだ。

 「なんでうつになったのか」この犯人捜しで私は、右往左往、心も揺れ動いていく。これは発症してから書きます。

 

 今回は、第2子の出産の様子を長々と書きました。その後、産後うつになりましたが、私は確実にこの時、本当に心から幸せを感じていました。それを書きながらかみしめました。産まれてきてありがとう。

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