昔話研究者の小澤俊夫さんという方は、私に「その人の力を信じること」を教えてくれた人のひとりです。それはもう、私に「大人というのはこういうものか」と感じさせるものでした。
言葉で表現するのはなかなか難しくて、あの体験をずっと書けないままでいるのですが。
小澤さんは、昔話が伝えている子どもの成長過程と大人の態度のあり方をいくつかの本で書かれています。
若い人たちと接していると、彼女たち彼らたちの力を信じることの大切さを、こちらが驚くほどに思い知らされることがあります。
そうやって、新しい世界へと向かっていた彼女たち彼らたちのことを、ふと想う日があります。
そして、まだ私自身が若かった頃に、「絵本作家になりたい」と言った彼女を、まっすぐに応援してあげることのできなかった自分を、いまも悔いています。
小澤さんの『ときを紡ぐ』という本は、ご自身の戦争体験を解離することなく言葉にされていて、生々しいはずのものが、昔話のようにすっと心に入ってくる本です。