見出し画像

「ひとりの人間にとって大切な問題は、必ず多くの人間にとって、大切な問題とつながっている」

と言ったのは、社会学者・見田宗介さんです。見田さんは、真木悠介というペンネームをもっていて、そちらの名でも素晴らしい本を書かれています。

見田宗介さんは、多くの社会学者のみならず市井の人びとから愛された人で、彼に負けまいとした社会学者はいましたが、彼を悪く言う人を私は知りません。

その見田宗介さんが書かれた本の中に、『社会学入門――人間と社会の未来』という本があります。

その中で、彼は「越境する知」とは、「現在の人類にとって、切実にアクチュアルであると思われる問題について、手放すことなく追求しつづける、という覚悟の結果」と述べています。

社会学は〈越境する知〉とよばれてきたように、その学の初心において、社会現象のこういうさまざまな側面を、横断的に踏破し統合する学問として成立しました。・・・・・・ほんとうに大切な問題、自分にとって、あるいは現在の人類にとって、切実にアクチュアルな問題をどこまでも追求しようとする人間は、やむにやまれず境界を突破するのです。・・・・・・ほんとうに大切な問題をどこまでも追求してゆく中で、気がついたら立て札を踏み破っていた、という時にだけ、それは迫力のあるものであり、真実のこもったものとなるのです。

見田宗介 2006年『社会学入門――人間と社会の未来』

見田さんは、この本の中で「近代という狂気」を越えて、情報化と消費化という現代のさらに向こう側に、「いっそう原的ということもできる転回」を見ることができると述べています。

そしてそれは、「どのように思いがけない形態をとるものであっても、それは一つの永続する〈共存〉の技術でありシステムであるはずである」と書かれています。

こんな風に、見田さんは、不安や不確実性ばかりが優勢する現代社会の中でも、いつも豊かな想像力をもって未来を切り開く言説を紡いでおられてきました。

ナワール・ガーデンという場所で、一度だけ、私は見田さんとお会いしたことがあって、そのときにお話を交わさせていただいたあの夏の日のことを、ひまわりの花を見る度に想い出すのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?