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【TOKYO FASHION AWARD 受賞 SPECIAL INTERVIEW: malamute 小高真理】世界に届け!メイドインジャパンのニット

文化学園 国際ファッション産学推進機構

デザイナーの小高真理さんが、ニットをメインとしたブランド、マラミュート(malamute)をスタートさせて今年で7年目。2017年にはTokyo新人デザイナーファッション大賞プロ部門(以下、プロ部門)に入賞。3年間6シーズンのサポートを受けながら、ブランドを着実に成長させてきました。そしてブランドを支えるチーム作りが整った今、さらなる飛躍を遂げるために『TOKYO FASHION AWARD 2022』にチャレンジ! 見事、受賞を果たし、パリ行きのチケットを手にしました。今回のインタビューでは、受賞の喜びと併せて、今後の抱負を伺いました。

「ブランドを立上げて、1番最初に作ったアイテムは大切にしてください、それがきっとブランドの核になっていくからと審査員に言われました。その言葉はとても印象的でしたし、とても納得のいく言葉でした。」

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―まずは『TOKYO FASHION AWARD 2022』受賞おめでとうございます! このアワードに応募しようと思ったきっかけから教えてください。

これまで、このアワードに選ばれたデザイナーは、パリのメンズコレクション時期(1月と6月)に開催される合同展示会に出展することができたのですが、今回からはウィメンズのコレクション時期(2月と9月)にも出展できると知り、それなら!と思い応募しました。だんだん国内のセールスも伸びてきて、ここ数シーズン海外に挑戦したいという想いが強くなリました。

―何が受賞の決め手になったと思いますか?

ニットをメインでブランドを始めて、7年が経つのですが、作ることに関しては本当に、国内のニッターさんの知識や技術力に支えられています。経験値の高いプロの方々に助けていただきながら、自分のデザインを形にしてこられたので、審査員の方にはやはり、商品そのものを見て納得して選んでいただけたのではないかなと感じています。マラミュートのコレクションはハイゲージからローゲージまで、バリエーションが豊富なので、自分で言うのも何ですが、そこがちょっと面白い。審査員からも、立体的な編み方や、他ではあまり見ることのないデザインがあるとも言われました。ニットでここまでできるんだといった、醍醐味みたいなものを感じていただけたのかなと思います。

―審査員から受けた質問や感想などで、心に残っている言葉はありますか?

「1番最初、1シーズン目にどういうアイテムを作ってましたか?」と聞かれました。ジャカードで表現した花柄のアイテムを1番最初に作りましたと答えたんですけれど。そのジャカードと、ホールガーメントの無縫製のアイテムがブランド初期のアイテムで、本当に10型ぐらいから始めたんです。そうしたら「その最初のアイテムは大切にしてください、それがきっとブランドの核になっていくから」と。その言葉はとても印象的でしたし、とても納得のいく言葉でした。続けて、2021年秋冬のラインナップを見ていただいた時も「ずっと核の部分を守って、作り続けてるんですね」と言われて、とても嬉しかったです。

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2014年秋冬のファーストコレクションから。花柄モチーフをジャカードで表現した。

「PRやセールスといった、ブランドを取り巻くチームがまとまってきたので、必然的にセールスも伸びて、国内の売り上げもだんだん固まってきた。色んな意味で、次のステップにチャレンジするには、ちょうど良いタイミングだと感じています。」


―ニットメインのデザイナーズブランドという世界観をしっかりと確立するまで、途中、いろいろチャレンジしてきましたよね? たとえば布帛のアイテムを強化してみたり、単独のショーをしてみたり。ある種の覚悟も必要だったんじゃないかなと感じています。

プロ部門に入賞した2017年頃は、まだブランドの規模もとても小さかったので、ちょっと上の先輩のブランドを見ながら、どうやったらステップアップできるのかな?と、本当に試行錯誤していました。だからサポートをしてもらうことで、たとえ失敗したとしてもチャレンジする勇気がいただけたんですよね。毎シーズンの展示会の会場費へのサポートや、ファッションショーへの金銭的なサポートも、とても心強かった。「産地コラボ」サポートでは、オリジナルのプリント地やジャカード、オパールといった生地を作る経験もさせていただけて、テキスタイルのことが、よく理解できました。もともとテクスチャーが好きでニットの世界に入ったのですが、テキスタイルも奥が深くて、“やり過ぎ"と“やり過ぎない"のバランスについて、とても勉強になりました。

「産地コラボ」で初めてオリジナルテキスタイルを作り、布帛にも挑戦した2019年春夏コレクションから

今は自分で見ても、コレクション全体に安定感があると感じています。毎回全部壊してイチから作ることが無くなり、コレクションの柱ができてきました。以前は、一点一点に頑張りすぎていて俯瞰することができなかった時もあったんです。特にショーをしたときは、コレクション全体がショーピース寄りになってしまって、せっかく評判になっても売り上げが伸び悩んだりしたことも。でも、そういった経験を経て、今はPRやセールスといった、ブランドを取り巻くチームがまとまってきたので、必然的にセールスも伸びて、国内の売り上げもだんだん固まってきた。色んな意味で、次のステップにチャレンジするには、ちょうど良いタイミングだと感じています。

―パリでは『showroom.tokyo』に出展しますが、海外のバイヤーを意識して、何か強化していこうと考えている点などはありますか?たとえば、サイズ感とか?

もともと大きいシルエットが好きなので、大幅なサイズ感の変更は考えていないのですが。まずはとにかく、プレゼン力を上げられるように頑張ります。 自分が現場に行かなければいけないので、素材に関する説明だったり、日本のニットのクオリティの高さがきちんと伝わるようなプレゼンが、できたらいいなと思っています。あと、アジアのバイヤーさんにも見てもらえたら嬉しい。

―個人的には2020年春夏シーズンの野外で行われたショーとコレクションがとても好きです。

もともとマラミュートのブランドコンセプトは「強さと柔らかさを併せ持つ女性のためのデイリーウェア」なんですけれど、最近は特に、自分の意思で服を選ぶ女性の方に、手に取ってもらえているなと感じています。ちょうど、その2020年春夏シーズンぐらいから、洋服を作る工程をちょっと見直したんです。再生繊維のキュプラを使ってみたり、買っていただいた商品のお直しの企画や、ホールガーメントの再生プロジェクト、エコバッグの「sherbet bag」といった商品を提案し、取組み始めました。服の魅力プラス、そういった、ものづくりに対しての姿勢や考え方といった、ブランド側が発信することに対して、理解して受け取ってくださるファンの方々が増えてきたと感じています。

ショー会場の黒いオブジェは、空間デザイナーでアーティストの吉添裕人さんが制作。リサイクルできる、PVCが使用されている。

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ホールガーメントの再生プロジェクト、エコバッグの「sherbet bag」

―どのブランドもシーズンテーマがありますが、マラミュートの場合は、それがとても感覚的というか、右脳的というか、毎回、小高さんの脳内に引っ張られるような不思議な気持ちになります。最新の2022年春夏コレクションについて、お話を伺っても良いですか?

今回のインスピレーション源は建築です。アイルランド人のインテリアデザイナーアイリーン・グレイが初めて建てた建築、コート・ダ・ジュールの別荘<E1027>と、韓国のアーティスト、ス・ドホの建築『パーフェクトホーム』からインスピレーションを受けました。どちらも写真集を持っています。

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アイリーングレイ<E1027>『EILEEN GRAY HER LIFE AND WORK』Thames & Hudsonより

アイリーン・グレイは建築家であり家具やインテリアも手掛けるインテリアデザイナーでもあって、1920年代、アールデコの時代ですが、日本の漆職人に弟子入りしていた時期があるんです。その影響で、初期の作品には螺鈿(らでん)や漆(うるし)を使っているんですよ。青色の漆を自分で開発したりして、和と洋が混じったモダンなデザインに落とし込んでいる。その影響は、1929年、南仏、ロクブリュンヌ・カップ・マルタンに当時の恋人と過ごすために建てられた家〈E1027〉の中にある、インテリアにも反映されていて。

その家の中にある家具は全部、アイリーンがデザインしています。一つ一つは精工な職人技からできていながら、ひとつのテイストではくくれない世界観で。けれど部屋の中にレイアウトされると、私自身、削ぎ落とされたデザインも好きなんですけど、もうちょっと遊び心が欲しいなと思うときもあるから、とても親近感を感じました。写真を細かく見ると、随所にちょっとした物を置く場所とかがあるんですよ。多分、アクセサリーとかをちょっと外して置いておくんじゃないかと思うんですけど。そういうのが、すごく素敵だなと思って。それは私から見ると、とても女性的な感覚。さらにこの家が持っている独特の解放感や空気が、窓の外に広がるコート・ダ・ジュールの光や風と相まっていて、モノクロの写真なのに、そこには色が発見できる。その空間に住みたい!といった気持ちも含めて、そのリゾートの雰囲気を今回のコレクションに織り込みました。

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ス・ドホ:パーフェクト・ホーム『DO HO SUH PERFECT HOME』金沢21世紀美術館より

ス・ドホの『パーフェクト・ホーム』からは、色使いや透け感といったテクスチャ―に影響を受けましたが、彼は「衣服というものは最小かつ最も親密な空間であり、1人の人間が持ち運ぶことができる。この考えを膨張させると建築に至る」と言っていて、そういった考え方にも、とても共感できるんですよね。

アイリーン・グレイ、そしてス・ドホの2人からのインスピレーションを、『swimming light(スイミングライト)』という言葉に集約しました。確かに、とても感覚的ですね(笑)。

ー最後に、今シーズンの一押しは、どのアイテムですか?

ボーダーのシリーズです。ロング丈のサマードレスは自信作です。

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小高真理 Mari Odaka
1987年、埼玉県生まれ。2010年 文化女子大学(現・文化学園大学)卒業。2011年 文化ファッション大学院大学修了。2015春夏コレクションから「マラミュート(malamute)」を本格的にスタート。「強さと柔らかさを併せもつ現代女性のためのデイリーウェア」をコンセプトに、国内の職人と生み出す精緻なニット表現が特徴。テクスチャーやフォルムを活かしたガーリッシュな甘さに、大人の落ち着きが混在することで、新しいエレガンスを表現。2017年「Tokyo新人デザイナーファッション大賞プロ部門」入賞。「TOKYO FASHION AWARD 2022」受賞。2022年2月と9月に、パリにて開催の「showroom.tokyo」に出展の予定。

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学校法人文化学園 国際ファッション産学推進機構が、毎月配信する『産学ニュース』から、インタビュー記事を抜粋して掲載します。不定期で国際コンテストに挑戦した学生インタビューも。