2023年75冊の本を読んだ人がおすすめの本を8冊、分野別に紹介してみた

本年2023年も終わりに近づいてきたので、ふと今年読んで良かった本をまとめてみようと思った。読んだ本は読書メーターに記録していて、2023年に読んだ本は75冊だった。もちろん、全部ちゃんと読んでいるわけではなく、ざっと読んでいるだけの本もたくさんあるが。週一冊読んだときには年間52冊程度になるはずなので、そのペースを上回っていたし、"AI分析でわかったトップ5%リーダーの習慣より"に紹介されていたトップ5%リーダーの年間平均49冊を超えていた。数えたときに少し嬉しくなった。

さて、この記事では今年読んだ本の中で面白かった本を分野別に紹介していこうと思う。全部で8冊、最後には論文も3本紹介!



ライフハック

習慣って大事ですよね。毎日の習慣があなたを形作り、いわゆるプロフェッショナルな人は才能ももちろんあるけど、持っている習慣が卓越している。そんな習慣に関する本から1冊、"なぜ、あなたの仕事は終わらないのか"。

なぜ、あなたの仕事は終わらないのか

マイクロソフトで仕事をしていた中島聡というプログラマーの方が言う、仕事を期限内に終わらせるための心得だ。まず第一に、締め切りに絶対間に合わせることが99%の人が出来ないこと (僕も含む。。。)であり、間に合わせることが大事である。そこで中島聡さんが提唱する方法は「ロケットスタート時間術」。締め切りの前半20%で本気の本気でやって終わらなければ、最大限のアラームを鳴り響かせること、という意識だった。締め切りを守るための技術本の中で、感覚論を述べる本が多い中、実践に基づいた具体的で定量的な方法が、頭に入ってくるように紹介されているのが印象深かった。

習慣に関して、もう一冊、"時間術大全 人生が本当に変わる「87の時間ワザ」"。グーグルとYouTubeで働いていたITの人二人による具体的にどのようにすれば、時間を効率的に使えるのか、そのTipsについて超具体的に書かれている本。かつ、最終章のチューニングにある毎日のメモのテンプレートは、実際に僕も改造して使うようになった。毎日の振り返ることで、毎日を少し良くするために、何か新しいことを一つ取り組むようになった。1ヵ月だけでも大分、行動が良い方向に変わってきたと実感できた。

プロの心構え

巷に出回っている本には、プロフェッショナルとは、トップになるためには、という本が多くある。しかし、Ben Bergeronの"Chasing Excellence: A Story About Building the World's Fittest Athletes" は、努力をするのが当たり前のトップの世界の中で、頂点を取るためには何をしなければいけないか、教えてくれる。

Ben BergeronはCrossFit gamesという複数日程にかけて総合的な体の能力を競う大会の優勝者のコーチをしており、その選手たちの様子、努力、マインドセットを事細やかに書き連ねることで、頂点を目指すのに努力の量ではなく、とくに人格やマインドセットがいかに大事かを伝えてくれる。これは何かの分野で上を目指そうという人には是非、おすすめの一冊だ。勉強になる部分が多い。

注: 邦訳は残念ながらまだないよう。

Chasing Excellence: A Story About Building the World's Fittest Athletes

自伝

伝記には、リチャード・ファインマンさんの生涯を面白くおかしくまとめた"
ご冗談でしょう,ファインマンさん"。彼の人生は間違いなく面白い変なことをいっぱいやっているし、それを楽しませてくれる形でまとめた訳者の方にもあっぱれだ。個人的には、ファインマンは、「科学とは最善を尽くし続けることである」という名言で覚えていたため、堅物なのかと思っていたが全然そんなことはなかった。めっちゃユーモアに溢れた人物だった。

ご冗談でしょう,ファインマンさん

投資

投資の分野からは、"バフェットからの手紙 第5版" 。ウォーレン・バフェットは世界一の投資家、オマハの賢人など偉大な2つ名で語られる。この本は編者によって、バークシャーハザウェイの年次報告書の冒頭で書かれる「株主への手紙」を主題に分けてまとめてあるもの。彼の思考や哲学がガッツリ伝わってきて、長期投資において何が大切か、ひいては人として何が大切かを教えてくれる。
注意点としては、数字や理論などをたくさん振りかざすわけではないが、ある程度の基礎知識がないと読みこなせない本のため、投資初心者にはお勧めしない。

バフェットからの手紙 第5版

プレゼン方法について

プレゼン方法について、いわゆる教科書的な良書に出会いました。それは、Steven E Lucasによる"アメリカの大学生が学んでいる「伝え方」の教科書"。この本は、突飛なことが書いてあるわけではなくて、プレゼンテーションを準備する段階から発表するまで要点が非常にまとまっている。読んでいるときに、「そうそう、それ大事だよね!」とひたすらうなづいていたし、取り入れなければ、と思う部分も多かった。プレゼン慣れしている人も、確認用にざっと目を通す価値あり。

アメリカの大学生が学んでいる「伝え方」の教科書

小説

小説に関しては、個人的に官能小説が好きということもあり、2冊官能小説から紹介。官能小説にも幅があって、エロい表現がやたら入っているものから、ほとんどないものがある。

花房観音さんの"花祀り (はなまつり)"。男女平等社会が叫ばれている中からすれば、こういった本は凄まじい批判の対象になりそうだが、人間の本能の部分を生々しく抉り出すようなキャラクターや表現、展開が良かった。また、官能表現は上質でありかつ官能が濃厚に伝わってきて強烈であった。SMの大御所の団鬼六さん方の名前を冠した第1回団鬼六賞大賞受賞作。

花祀り (幻冬舎文庫)

2冊目は、"毛皮を着たヴィーナス"というザッヘル・マゾッホが著者の小説。はい、SMのSはマルキド・サドから来ており、Mはこの方、ザッヘル・マゾッホのマゾから来ています。この小説の中身自体も、もちろん面白いのだが、ぶっちゃけあとがきに書かれていたマゾッホの人生記のまとめが実に面白かった。小説に出てきた女性やストーリーに書かれていることを現実世界で自分で体現し、本に現われる女性に関する内容で我儘を押し通したり、本の執筆ペースが影響されていたそう。是非、河立文庫の種村 季弘訳の版のあとがきまで目を通してほしい。いわゆるエロはほとんどなく、鞭で叩かれるとか奴隷になるといったSMに終始する。

毛皮を着たヴィーナス

ギャグ論文

ギャグ論文部門では2本がノミネート。一本目は"Every Author as First Author" by Erik D. Dmeaine and Martin L. Demaine。もう画像を見てもらえれば、分かります。

そして、Referenceの部分も。

はい、これで僕たちは2度と著者の順番で悩む必要がなくなりますね!

ギャグ論文2本目は、2018年に書かれた"Parachute use to prevent death and major trauma when jumping from aircraft: randomized controlled trial" という論文。飛行機からパラシュートを付けて飛ぶと怪我を防げるか、ランダム化比較化実験をした論文です。ランダム化比較化実験ということで、片方の群には正しく動くパラシュートを、もう片方の群には空のバッグを背負って飛行機から飛び乗ってもらう。

この論文の肝は、本文中には、あたかも頭上高くから飛び降りたかと"思わせるような"記述をしているにも関わらず、Fig 2での画像の中でのみ実際に飛び降りる高さは地上で行うことが分かるようになっている。 

こんなやる意味が全くないような、研究が著名なBMJという医学雑誌に載るかというと2つ理由がある。1つ目は、BMJではクリスマスイベントとしてジョーク論文を毎年紹介している。2つ目は、2003年に書かれたGordon SmithとJill Pellの論文が関係している。この論文は、ランダム化比較化実験の証拠がないものは介入として使ってはならないという極端論者への皮肉論文で、システマティックレビューのお作法に乗っ取って、パラシュートの効果を検証した論文がないかどうかを調べている。もちろん、そんな論文はない。そして極端な論者への批判として締めくくりに一文、"もし証拠に基づいた医学を啓蒙し、(ランダム化比較実験を用いた)証拠がない介入を批判するならば、彼らはためらわずに、このパラシュートが怪我を防ぐかに対するどちらの群にも参加するランダム化比較実験に参加すべきだ"とある。そう、まさにこの内容を体現したのが、ギャグ論文2本目として紹介した論文である!という文脈を知っていると大変笑える論文でした。

医学・公衆衛生論文

専門の領域に降りると、ニッチな感動を覚える論文など非常に多くあるのだが、他の人に紹介するということで、2023年10月に起きたハマスに対するイスラエルのパレスチナのガザ地区への攻撃による被害を定量的に示した簡単なレターかなと思った。Zeina JamaluddineとFrancesco Checciによる12月9日にLancetに載った論文

上はFigureはGaza地区による死亡率を示したもの。低いU字カーブは、2021年の年間死亡率、他の線は、10月7-26日の間の死亡率を年間に直したもの、すなわち、10月7-26日の惨状が1年間続いた状態の数値だ。パッと見るだけで、死亡率が劇的に向上していること、また、右の死亡率の比を見ると特に影響を受けているのが、1-4歳から35-39歳までのこどもから若年の青年たちということが良く分かる。パッと図表を見せるだけで、事実の重大さがパッと分かるのが、統計を用いる疫学という分野の強さですね。

まとめ

めちゃくちゃな分野の本の詰め合わせですが参考になったら幸いです! 
「この本は他と比べて一線を画する!」と思うような良書に当たるのは10冊に1冊くらいのペースかなぁと感じた。


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