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『自由をつくる自由に生きる』/ 森博嗣 | 自由と支配に対する考え方…

『すべてがFになる』『スカイ・クロラ』などが有名な森博嗣の新書。元理系大学教授の書く自由論に興味があったので読んでみる。
人生の目的は自由という話から始まる。
自由という言葉は確かにいろんな意味があるけど、自由になろう!というよりは、自由の反対、支配に対する自分の在り方を考えることに重きを置いているように感じた。
昔は社会のシステム的に支配されているとわかりやすかったけど、現代は巧妙になっている、という指摘はなるほどその通りとは思う。大きな話ではなく、身近な例として常識による支配の話もある。たしかに常識を疑わず、すんなり受け入れていることで、視野は狭くなるとは思う。ただ支配を疑う、常識を疑う例として、葬式って必要?みたいな例を挙げられると、正直うーん…となる。

"そんなに愛している人なら、死ぬまえに訪ねていって、本人と話をしたり、挨拶でもすれば良かったのではないか、死んでしまったら本人はいないのだから、わざわざ行く意味がない、と考えてしまう"

『自由をつくる 自由に生きる 』より

作者はそもそも『式』自体に懐疑的なようだけど、思想を押し付けているわけではない。ただ、本人はいないと言われると確かにそうかもしれないけど、お葬式って死んだ人に会いに行くというよりは、生きている人、家族や友人が故人を偲んで、亡くなったことを消化する側面が大きい気がするけどな…逆に、亡くなった人に会いに行くものという決めつけが、支配された思考のように感じた…

また、支配にも外的な支配と自分による支配があると書いてある。自分自身からの支配、〜が食べたい、〜が欲しいなどの欲求や、いろんな固定観念・・・たしかにいろんなものに支配されている。そこから逃れるためには、好奇心を持ち、無垢な感性をもつことが大事と言われると確かにその通りだと思う。ただ、ここまで読んできて感じたのは、けっこう自分は自由だな、ということ。無垢な感性とまでは言わないけど、支配と呼ばれることにそこまで当てはまってない気がした。

最後は自由を得るためには少しずつでも前進すること、といいことが書いてある・・・

この本を読んでよかったことは、けっこう自分は自由だということが再確認できたことだ。なんというか、お葬式の話は極端だけど、その極端な思考が似てる部分があって、実践できていることが多かった。逆に、自由に生きていない実感がない人は読んだ方がいいのかも…
いろいろツッコミどころはあったけど、けっこう楽しくは読めた。というのも啓発本というより、作家森博嗣の仕事術として読むのが正解な気がする。「スカイ・クロラ」の映画化について、かなり肯定的な意見だったりしたのは意外だったし、逆に「トーマの心臓」を小説化した時の話があり、原作本があるときの映像化、小説化についての話を作家側から聞けるのは貴重だと思った。
自由になりたい人、森博嗣の価値観に興味がある人にオススメです!

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