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『コンビニ人間』 / 村田沙耶香 | 生きづらさとエンタメ

コンビニ人間読了。

最初タイトルだけ聞いた時は、SF的な、『狼男』ならぬ『コンビニ人間』みたいなのを想像していた。

芥川賞受賞した後にイメージした『コンビニ人間』は、家とコンビニを往復することが生活の全てであるコンビニ人間の貧困と生活を巧みに描く…みたいな話を想像していたけど、全然違う…


まず思ったのは、芥川賞ってこんな面白かったっけ?という疑問。
いや、「火花」とかもだいぶエンタメ寄りだった気がするけど、阿部和重の「グランドフィナーレ」とか中村文則の「土の中の子供」の頃のイメージとだいぶ変わったな〜と感じた。

あの頃の本も好きだし、このコンビニ人間も好きだけど、なんというか、普通に面白い。
先が気になるからページをめくる手が止まらない。

Netflixとかのサブスクに限らず、昨今のいろんなエンタメって、SNSが今みたいに活発になる前に比べると格段に面白いと思う。
最初は年齢のせいで、昔はよかった病にかかったかと思ったけど、SNSのおかげで、良くも悪くも質が上がりまくってるんじゃないかと思ってる。

昔はこんなに人の意見をリアルタイムで見ることなんかできなかったしな…


話が逸れたけどコンビニ人間。
漫画みたいに、というのはまたおかしな話だけど、漫画みたいに面白かった。

漫画と言えば、最近「阿武ノーマル」って漫画がマガポケで読めるけど、最初読んだ時、
「あぁコンビニ人間も漫画になったか〜漫画にしやすそうだったもんな」
と思ったら原作ですらなくてびっくりした…

序盤の展開そっくりだし、後々問題にならないんかな…と勝手に心配したけど、コメントにも全然コンビニ人間と似てるって指摘もなく…
いやしかし…あまりにも…


まぁ自分も含めてみんなサイコパスが好きなんだろうな、サイコパス診断だったり、芸人春とヒコーキの土岡のサイコパス感も、見てて楽しいもんな〜。

主人公は喧嘩を止めてと言われてスコップで叩いたり、死んだ鳥を焼き鳥にしようとしたり、サイコパスエピソードが山盛りで、その思考の異様さが気になって、ガンガンページをめくってしまう。

そんな主人公にとって、唯一社会と接点が持てる場所がコンビニ。コンビニってイレギュラーなことが起こりやすい場所というイメージだったけど、本人的には異物は排除され、常に正常化される場所と受け止められている。

意外だったけど、確かにコンビニの仕事内容としては基本的にマニュアル通りの接客業プラス発注みたいな感じなのかな。


コンビニバイトの経験が無くて詳しくはわからないけど、作者はしっかり取材してるのがわかるし、勝手客に話しかける客とか、陳列方法とか、なにかと楽しく読めた。
コンビニバイト経験者は、さらにあるある物としても楽しめそう…

そしてコンビニに入ってくるクズ人間白羽。
まるでスカッとジャパンに出てきそうな、男尊女卑の意識だけ高いやつ。読んでて大抵の人がイライラさせられるけど、主人公はこの白羽と同棲を始める。
結婚したら?彼氏は?みたいな質問をかわすことができるなら誰でもいい、と合理的な思考で一緒に住み始めるけど…

流石に白羽のキャラ感が強くて、フィクション臭さが増したか…?
とちょっとだけ思ったけど、たまにこんな人本当に現実にいたりするんだよな〜とも思うんで、矛盾した気持ちで読み進める。

ネットのノリを現実に持ち込む人が身近にいると、こういう事態を引き起こすのね。


とまぁエンタメ的に楽しい要素がてんこ盛りの上に芥川賞受賞作、そりゃ売れるよな〜と思う。

読みながら、スッキリした終わり方ではなさそう、という気がしていたけど、結末は不思議と明るい終わり方だった。
社会的にどうなのかわからないけど、自分にはコレしかないと思える仕事があるっていいよね、とポジティブな読後感。

不思議な本だな〜。

作者は他にも「信仰」って本も出してて、洗脳されたい主人公の話らしい…また面白そうな本書いてる…めちゃくちゃ楽しみ。


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