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『そして生活はつづく』 / 星野源 | どんなスターにも生活がある

星野源のことはまず歌手として好きだ。
POP VURISは超名盤だと思うし、素晴らしい曲を作る人だと思う。

そんな星野源の初エッセイ集。今じゃドームツアーをしてる星野源がまだ庶民的な生活をしていた時代の話を知ることができる。単身赴任のお父さんが住むようなマンションに住んでおり、乾燥機を使いに共有スペースに行ったら、大量の女性用下着が入っていてあせったり、皿洗いがめんどくさいと言いつつ、生活自体が苦手なんで楽しもうとする星野源の姿に共感できる。

クスッと笑える話が多いけど、けっこうぶっちゃけた話もしている。一番はやっぱりウォーターボーイズの話だろう。はっきりとウォーターボーイズの話と書いてはいないけど、まあ今までのキャリアを考えると間違いないはず。
そんなに運動が得意でもないのにオーディションに受かってしまい、みんなの足を引っ張り連帯責任。読んでるこっちも胃が痛くなるような合宿の描写が続き、最終的にはみんなの前で「星野くんには友達がいません」と言われ、ダメ出しをされる・・・考えただけで恐ろしい。

こんなことがあったら役者はやめて、音楽一本でいく選択をしてしまいそうなものだけど、ご存知の通り、星野源は今も第一線で役者として活動している。素直に尊敬する。

あくまで星野源視点での話なので、ドラマスタッフ側にも何か言い分はあるのかもしれないけど、それにしても辛い・・・

幸いにもその後撮影をしっかりやりきったようだけど、数年後出演俳優から「あ、全然頑張らなかった人だ」と言われて「そうだねえ」と答えたやりとりがあったことが最後に書かれていて、やりきれない気持ちになる。

ネットではそれが誰かとかいろいろ特定しようとしてそうだな。個人的には悲しくなるんで誰か知りたくもないけど、傷ついた過去を軽い気持ちでいじってくる人っているよな・・・とさみしい気持ちになる話だった。だからどうするという話ではない。タイトルの「そして生活はつづく」が沁みる・・・

「はたち」という、星野源が原作の小田扉さんの漫画も収録されており、これがいい話で、本当にほんとにあった話なのか、と疑いたくなるくらいコンパクトにいい話が凝縮された漫画ですごくよかった。

あとは、とある歌の歌詞である「手と手をつないでふたつになろう」という歌詞についての話があり、これは星野源の歌を聴いているとすごく理解できる考え方だった。ダイレクトに結局ひとつにはなれない的な歌詞があったような・・人見知りだったり、集団生活になじめない人に、マジョリティ側に行くよう勧めるのではなく、マイノリティの状態で受け入れることを星野源は大切にしていることがよくわかる。
ただ、真面目な話より、キンタマとかうんこみたいな話が多いので、馬鹿馬鹿しい話を聞きたい、でもやる気を出したい、みたいな本を求めている人におすすめです!

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