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3.11 体験記 ジャパニーズサムライ
私が宿泊しているホテルに、ある国の外国人ご家族が宿泊していた。
挨拶をするとそこから会話するようになった。私の拙い英語に合わせてくれて助かる。
聞けば旦那さんは柔術をしていて日本に稽古に来た。そして奥様と小さなお子様2人も旅行がてら来たそうである。
震災の為、ホテルでも食事が用意できない。どこからか手に入れたシャケのおむすびは、異国の小さな子供には口に合わないようで残してあった。
私、何を考えたのか?
おそらく何も考えなかったのだろう。
やっと手に入れたチョコレート二つを小さな子供さんにプレゼントしてしまった。
幸い、スーパーで手に入れた食料もあるので口にするものはある。
『武士は食わねど高楊枝』
と言うが私は、武士ではない。
ただのカウンセラー(当時)だ。
でも心の中で
(日本に柔術の稽古に来た。楽しい家族旅行にしようと思ったら震災にあってご飯も食べられない。日本に来なければ良かった)
そう柔術家の家族が思ったとしても不思議ではない。
私としては、日本に来て最悪だと思うかもしれないが日本で会った変な空手家(私の事)カウンセラーにチョコレートをもらった。
それだけが唯一の嬉しいでき事だと思ってもらいたい。
そんな気持ちであった。
次の日、異国の家族がホテル前でテレビ局のインタビューに答えていた。
後日知ったが異国の人の母国から緊急でお迎えがあったらしい。
異国の柔術家は、私を見つけるとインタビューアーの前に連れ出し、様々な言葉で微笑んでいた。
何が何だかわからない私。
どうやら昨日の子供達にチョコレートをくれた事、そして拙い英語でジョークを言い楽しませてくれた事を言っていたらしい。
そして異国の柔術家はインタビューアーに私を見て
『ヒーイズ、ジャパニーズサムライ』
と言っていた。
電気、水道、ガスも止まり私はヒゲも剃らなかったから私の風貌を見て
『ヒーイズ、ジャパニーズサムライ』
と言ったのだろうか?
私は、照れて
『スィー ユー アゲイン』
と拙い英語で答え
立ち去ったのであった。
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