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雲南日本商工会通信2019年1月号「編集後記」

 新年を迎えたので、恐れ多くも「今後の世界で日本企業がどう生きるべきか」というテーマで放談したいと思います。
 世界的に進む所得の二極化。すると、消費も二極化することになります。先日読んだある記事では、車を例にとりながら、高価格帯の車と低価格帯の車は今後も市場が伸びる一方、中価格帯の車は伸び悩むと予測していました。その上で、もしそうだとするなら、日本のメーカーの多くは今後苦戦するのではないかと指摘します。
 なぜなら、日本のグローバル企業の製品は中価格帯を主とし、高価格帯と低価格帯に弱いという傾向があるからです。
 記事では、「この中価格帯での戦い方に(中略)成功した(グローバル展開する日本の)会社はないように感じます」と書かれていましたが、私には思いあたる企業がありました。無印良品です。
 かつての無印良品のキャッチコピーに「わけあって、安い」があります。このコピーを同僚の若い中国人に教えると、「え? ムジって高いじゃないですか!」と言いました。私は、「このコピーは、君のような屌丝(負け組)に対してではなく、金持ちに向けて呼びかけているのだ」と説明しました。
 つまり無印良品は、高価格帯を買うような人々に向けて商品を売っているのです。本来は高価格帯商品だけど、無印、つまりブランドがないので、その分安いのだと訴えているわけです。そして、それにつられ、中低価格帯の消費者も思わず手を伸ばしてしまうという流れです。
 実のところ中国の消費者は、無印良品だけでなく、日本の商品全般に対しても、「わけあって、安い」というイメージを持っているように思います。その「わけ」については、「金に左右されて作るのではなく『職人精神』やら『決まりを守る性格』、『几帳面さ』があるから良い製品を安く作れる」など、彼ら自身で勝手に解釈してくれています。ある人は日本まで行ってそれを理解しようとします。
 先の記事では、日本企業が今後もグローバルに活躍するためには、ローカルなハイコンテクスト(高暗黙知)の中でやるのではなく、グローバルなローコンテクスト(低暗黙知)の中でやるべきだと話が続いていました。たとえばスマホのOSが世界中ほぼ同じなのは、誰でも直感的にわかるローコンテクスト化が施されているからですね。
 しかし私は思うのです。ハイコンテクストの中にこそ物語があり文化(こだわり)があるのだ、と。
 今後、世界がローコンテクスト化するならば、あえてその逆を行くのが日本の道です。全体縮小に向かう日本は、大量生産や技術競争力ではなく、背景にある物語や文化(こだわり)を売りにするべきです。そして高価格帯商品を買う人々に向けて「わけあって、安い」商品であるというPRをもっとするべきだと思うのです。
 ちなみに、縮小する経済体ではなかなか抜けられないデフレ構造もまた、「わけあって、安い」の「わけ」のひとつです。世界の潮流に合わせるだけではなく、自らの弱みを自覚した上で、それを強みに変えるようなストーリー作りが、日本企業に求められます。
 これは、実は先の「コンテクスト」の議論と矛盾しません。ハイコンテクスト社会を日本の弱みとするなら、ストーリー作りはそのローコンテクスト化への取り組み(説明PR)に他ならないからです。

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