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雲南日本商工会通信2018年1月号「副会長の挨拶」

 中国の電子決済は、スマホを媒体に日本を差し置いてめざましい進化を続けています。
 パソコンやADSLなどが普及する前に無線とスマホがいきなり主力になったことで、先進国を一気に追い抜いた感があります。国としてもグーグルなど海外企業を閉め出したので、14億人のネット市場が中国企業の独壇場になるのも無理ありません。
 しかし、この進歩、すばらしい、すばらしい、と手放しで喜べることだけではない、怖い要素もありそうです。
 すべての決裁が電子化されてくる、それも中国企業が行うということになると、これは決済だけに止まらず、電子化された購入履歴や位置情報、信用状況が、ピンポイントのマーケティングに利用されたり、商品開発に利用されたりする事に止まらず、共産党政府がすべての個人の動きを把握することになるでしょう。
 どんなサイトを見ているか、誰と情報を共有しているか、誰と接触したか、何を買ったか、趣味はなにか、誰と不倫しているか、金の動き、人の動き、発言内容など、これらの情報がAIや監視カメラ、顔認証、位置情報と結びつくと、全てのプライバシーは丸裸になるでしょう。
 統治する側がこれを利用できれば、批判勢力の芽や反対勢力の動きを事前に察知し、対策や処理をすることが極めて容易になるでしょう。
 この辺の議論や懸念や法整備が何もない中で、「利便」から動き始めた総電子化は一時的に政府の安定には繋がるのでしょうが、それが可視化された時にはどこかでアナログへの回帰が起きるのかもしれません。
 その一方で、人の動きや決裁も電子化されて動くようになれば、税関の機能も、銀行の機能も、徴税の機能も、どうなるのでしょうか。
 ボーダレスとかグローバルという事が言われて久しいですが、このように機能的に人や物やお金が自由に動くようになれば、最終的には「人やお金や物が最も居心地の良い所に集まる」という当然のことが起きるのでしょう。
 
人が集まる所
・治安が良い/良い学校、教育施設がある/気候が良い/食べ物が美味しい/医療レベルが高い/空気が良い/同質レベルの人が集まる
 
お金が集まる所
・企業所得税が安い/個人所得税が安い/相続税がない/海外収益への課税がない
 
物(製造業)が集まる所
・消費地に近い/高度な機械のメインテナンスができる/企業所得税が安い/良質な原料が入手できる/高度なワーカーを確保できる
 
 こうしてみると、税金が高いという問題さえ解決できれば、日本に生活レベルの高い人や企業が集まる可能性もあるように思います。
 中国が電子化の先進国であるということは、電子化がもたらす問題においても先進国であるということで、その意味で中国はHOTな国になり始めました。

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