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雲南日本商工会通信2019年9月号「副会長の挨拶」

 「地球上の生物はすべて、自分の遺伝子を拡散し、後世に残すために行動し、一生を終える」というのが進化論とか、進化心理学などで言われていることで、それに適したように機能を獲得してきた、だから現在存在しているものは全て、競争を生き残るだけの合理的な資質を持っている、という進化論の論理は一定の説得力を持ちます。
 これは主に個体とか種とかの話ですが、拡大すれば、文化とか民族とか国家とか政治体制とか習慣とか、近いところでは企業においても、「生き残っているモノはそれなりに合理的な意味や機能を持っている」とも言えるのかもしれません。
 石器時代や農耕時代の進歩のような、環境が緩やかに変化するだけなら「温故知新」だけで十分。つまり過去の成功パターンを学習、強化することで優位を確保できたのですが、この150年ほどは、軍事技術でも生産技術でも情報技術でも、過去からの連続がないようなイノベーションが続出し、環境とこれまでの常識が激変するものだから、「適者生存」の「適者の条件」が目まぐるしく変わりすぎて、淘汰の脅威が増しています。
 「理」や「論理」、「環境影響」だけで人間が動くなら、この「適者の条件」も数学的、論理的にベストな処方箋を設定できるのでしょうが、人間が「情」や「感覚」、「伝統」という「非論理的回路」を行動や判断に利用する、「必ずしも合理的選択を選ぶとは限らない動物」であるということが、さらにこれを複雑にしており、「適者の条件」の全体像をぼやかしているのかもしれません。
 
 適者生存の原則を以て地球上で競争しているからには、他の生物間との競争、民族間との競争、個体間との競争においても、この遺伝子をいかに残すかというのが唯一の目的になっていると、進化心理学は主張します。人類愛とか、ロマンとか、無償の愛とか、ヒューマニティーなど、人間らしい高度な感情も、「遺伝子を残すため」というこの単純な論理のみで貫きます。「すべての行動はエッチする為だけ」と言われると文化、文明、教養を自負する人間にとっては抵抗があるかもしれませんが、この論理はかなり強力で、これによって多くの現象や習慣、事象を、シンプルかつ説得力を持って説明できます。
 「歩く生殖器」としての人間から言えば次のようになります。
 尖閣諸島や竹島や北方領土など領土というのは、生物でいう「縄張り」ですから自分の縄張りが自分の種族、血縁の生活範囲、食料の調達力を決めます。自分の縄張り、テリトリーを持つことは、生物が数億年の進化で変化することのなかった基本的特徴ですから、縄張り拡張は生物の本能といえます。縄張りへの侵入者が生殖対象でなければ基本的には攻撃のスイッチはオンになります。この本能を合理化するために理屈があるだけで、縄張りに入って来たものは敵、すぐに攻撃せよ、というのがDNAでしょう。だとすれば、尖閣や竹島の歴史的経緯がどうであろうと、熊や犬が毎日境界を見回り、オシッコや体臭を付けてマーキングするように、不定期に侵入してきては、相手の出方を見てうなり合っています。そのたびに自衛隊や海上警備隊が緊急出動したり、「遺憾の意」を表明していますが、こう考えると、国家の行動も熊や犬の縄張りの延長にあり、どこまで進化しているのか、疑問にもなります。話し合いによる領土返還というのは、テリトリーを持つ生物の本能に逆行した行動なので、国民の反発なしに政府が実行するのは、ほぼ困難なのでしょう。生物学的に解決するなら、「発情期に交尾を求めてテリトリーに入ってくるものは攻撃しない」という性質を利用することでしか領土問題は解決しないのかもしれません。そういう意味では、竹島と尖閣を「国境歓楽保税区」にすれば、双方が領土意識を棚上げできるかもしれません。
 
 GAFAとは、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンというアメリカ系覇権IT企業を略して言われます。
 BATHとは、百度、アリババ、テンセント、ファーウェイという中国系覇権IT企業ですが、中国14億市場を政府が囲い込んで発展、保護させるものだから、GAFAに対抗するほどの勢力になりそうで、アメリカが慌てています。
 覇権というのは要するに縄張りのことで、情報のプラットフォーム、ハード、ソフトを握れば、人々はその中で購入、移動、位置情報、入出金をするわけですから、ほとんどの生活状態は丸裸になり莫大な経済的利益が見込めます。「歩く生殖器」人間とすれば、多くの「丸裸」を牛耳り、経済力を持つことは、遺伝子拡散に極めて有利ですから、当然この縄張り競争では、譲れない戦いをすることになります。
 
 縄張り概念はさらに拡大されます。キリスト教やイスラム教など宗教を拡散することも、交流を増やし、エッチの機会と頻度を増す機会となります。「宗教的縄張り拡大はエッチの機会増大で善、縄張り減少はエッチの機会減少で悪」、と考えると、かつての宗教戦争や十字軍、宣教師の派遣など「命を賭した戦い」の動機も説明しやすくなります。
 
 「価値観を同じくする民主主義国、または社会主義国を増やす」というのも、交流拡大により遺伝子拡散に有利な行動で、そのためにイデオロギーによる戦争がありました。「価値観を共有する」というのも、「共有しておけばエッチの機会が増える」というように置き換えできるかもしれません。
 
 グローバル化、インターナショナルという言葉が、無条件に正しいことのように感じるのはやはり、遺伝子が広くばらまけるという人間の本能に合致しているという内在的動機を類推できるためかもしれません。
 
 このグローバル化に、中東などイスラムの国々が反対するのは、宗教で囲って教育も受けさせない自国の女性を他宗教の男に犯(や)られる危険が増すことに本質があるのかもしれません。逆に世界をイスラム化するなら、自分達が他国の女性を犯れる機会が増えるので、世界のイスラム化、イスラム教による世界統一が正義となります。
 お隣の文在寅大統領も南北統一というのは縄張り拡大ですから、国民本能に忠実になれば「南北統一」というお題目は支持率上昇への念仏でしょう。反日、抗日発言はかつて朝鮮という縄張りに入って来た「敵」国、日本への批判ですから、国民本能に忠実で、この念仏も支持率へのプラスとなっています。
 
 雄としての男性が事業、政治、軍事、仕事に血道を上げるのも、大きな声で鳴くヒバリやキレイな羽根を競う孔雀と同じく、ツガイを作り遺伝子をばらまくのに有利な魅力を得ようとする行動と言えます。女性が着飾り容姿を整えるのも実力のある優秀な遺伝子を獲得する機会と有利な子育てができる経済環境の機会を増やすためという見方ができます。ですからお金持ちがメカケを持つのは、雄の欲求と雌の欲求が一致しているわけですが、正妻がそれを認めないのは、雄の関心や資産が他の雌に流出すると、自分の遺伝子(子供)への投資が脅かされるという論理によって、見事に生理的嫌悪の合理的説明が可能です。
 
 女性が隣の太郎さんではなく、白馬の王子様に惹かれるのも、隣の太郎さんとの子供では、その子供の結婚相手も隣の花子さんになってしまい、血が濃くなることで長期的には遺伝として不利になります。そこで女性は、隣の太郎さんよりも、白馬の王子さまが来て連れ去ってくれないと困るわけで、本能的によそ者に惹かれる理由に説明ができます。
 
 「歩く生殖器」の遺伝子淘汰競争の中では、現代社会では完全に悪となった「強姦」というのも雌雄双方にとって一つの手段として成り立つ背景はあります。遺伝子を残すことだけを唯一の行動目的とすれば、「魅力」という価値観で相手を見つけるのが正攻法とはいえ、その価値観競争で有利でない一定比率の個体は、力ずくや無理やりで、ドサクサ紛れに遺伝子を残してきたわけで、強姦は弱者の武器と設定できるのかもしれません。セクハラやMeToo運動は、今までの習慣が、社会の変化によって悪として表面化してきた現象です。しかし多様性という価値観で見れば、人間のポテンシャルを限定する傾向と言えるかもしれません(野蛮な思想の持ち主という批判はあるでしょうが、700万年の人間の歴史で699万9900年は野蛮だったわけで、私が急に特異的に野蛮思想になったわけではなく、現代の社会常識が人間の生理を越えて急速に流行的変化をしているという事と思います)。
 
 中国のように「子供の面倒を見るのは、祖父母の役割」というのが徹底されているのも極めて合理的な遺伝子拡散戦略で、生殖能力がなくなった祖父母は、自分の子供を早期に育児から解放することで、彼らに次の子供を作りやすくするわけで、祖父母は子供を通じ、間接的に自分の遺伝子の拡散を助けていると理解されます。日本で核家族の増加と出生率の低下が一致していることからも、中国のような祖父母が子供の面倒を見る習慣が正しい社会で、日本のように孫を祖父母から離して、老人が孤独に過ごすのは、本来の人間の生理からは逸脱しているのかもしれません。
 
 よしなしごとを記しましたが、「急速に変化する生活環境」と「石器時代から変わらない遺伝子」。言い換えると「変わる世の中」と「生物としての変わらない習性」。この二つの軸の中で、右往左往して生きなくてはならないのが現代人となりました。
 
 韓国と日本の関係や、米中の貿易問題、香港問題、イギリス問題、イラン問題など、世の中は複雑さを増していて、解決は容易ではありませんが、「歩く生殖器、人間の本能」という尺度で見れば、案外、単純に可能と不可能は見えてくるのかもしれません。
 生物の本能や生理に反したことを社会で実行しようとしても困難なわけで、本能に沿った形でどのように最悪(戦争)を避けるかという事しか方法はないのかもしれません。

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