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雲南日本商工会通信2021年4月号「編集後記」

 「雲南東京組」の会食時のこと。何の話か分かりませんが、テーブルの向こうで大理の山口さんが「ウォンツが……。ウォンツが……」と誰かに言っていました。そのシーンがなぜか、数日経っても頭を離れません。
 そして「ウォンツって結局なんだっけ?」と思い、ネットで調べてみました。それがマーケティングの言葉であり、ニーズという言葉と一緒に使われることは知っていましたが、意味をまともに知らなかったのです。
 賢者のみなさんはご存じと思いますが、ニーズとは、顧客の「~したい」を指します。一方のウォンツとは「~が欲しい(~を買いたい)」を指します。有名なたとえを借りると、ある顧客が「電動ドリルを買いたい」と言いました。これはニーズではなくウォンツです。ニーズは「壁に穴を開けたい」となります。つまりウォンツとは、ニーズを満たすための具体的手段と言っていいでしょう。
 では「ガールズバーに行きたい」というのはニーズ? ウォンツ? 答えはウォンツでしょう。そのニーズは「かわいい女の子とおしゃべりしたい」となります(ふつうはね)。
 ニーズというのは奥深いもので、顕在ニーズと潜在ニーズに分けることもできます。顧客が気づいているニーズとまだ気づいていないニーズのことですね。
 それ以外に「複数のニーズの合わせ技」というのもあり得ます。表のニーズと裏のニーズと言い換えてもいいでしょう。コンビニの顧客は、「空腹を満足したい」「喉を潤したい」というニーズがあって店に行きます。しかし以下のような例もあります。近所のセブンイレブンは午前中に多くの高齢者が来店しますが、彼らには「1日に1度は人と話をしたい」「寂しさを紛らわせたい」という二つ目のニーズもあります。店員たちはそれをよく知っているので、他の客の邪魔にならない範囲で彼らに優しく声掛けしています。
 話は変わりますが先日、「特定保健指導」を受けてきました。健診で生活習慣病リスクの高い人が受けなければならない健康保険のサービスです。
 私は健康維持の方法について、宮本副会長からいろいろ学んでいます。「俺の方が知識は上だ。バカバカしい。誰が行くか」といつもの口調で老母に言うと、「せっかくだから行きなよ」と溜息をつかれました。その困った顔を見て自分の大人げなさを反省し、やはり行くことにしました。
 予約した日。すっかり忘れていたところに担当者から電話があり、それでやっと思い出し、30分遅れで会場に着きました。
 担当者の女性が入口で立って待っていました。私がすっぽかさずにやって来たのを喜んでくれました。参加者は私だけ。どうやら、みんなバカにしてなかなか指導を受けないようです。
 私は遅れたことを深く詫び、席に着きました。マスクをしていたのでよく分からなかったのですが、よく見ると担当の方は美しく若い女性でした。彼女は親身になって、私の今後の健康について考えてくれています。
 「そういえば、こうして近くで二人きりで女性と話すのは久しぶりだな……。しかも、こんなに親身になって俺のことを考えてくれている……」。そんなことを考えながら、彼女の質問に答えていきました。
 「私からのアドバイスなんですが、これからは間食を控えませんか?」と彼女。
 「はい!」と即答すると、彼女は面食らったような顔をしました。他のヤツらはきっと、自分の知識をひけらかしたり無益な言い訳をしたりして困らせてきたのでしょう。
 「では2週間後、お電話して途中経過をお伺いします。3か月後にまた対面でお会いしましょう」と言われ、心の中で「やった~!」と叫びました。
 「特定保健指導」は私にとって、「健康を維持したい」と「異性と親密におしゃべりしたい」という「複数のニーズの合わせ技」のサービスだったのでした。

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