5. 面白いアイデアの作り方【ゲーム制作日記】
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団地で夏祭りを開催するゲーム、『Danchi Days』を本格的に作り始めてから1ヶ月、創作の楽しさに胸がいっぱいになり、朝4時になるとドキドキで目が覚めてしまう今日この頃です。
創作の何がそんなに楽しいのか、それはやはりアイデアが思いついた時の快感につきると私は思います。
『Danchi Days』では、総勢151人のNPCを団地の夏祭りに招待して夏祭りを開催することが主人公(プレイヤー)の目的です。これらNPCの中には、2000年代のインターネットを彷彿させる個人HPを持ってるキャラもいます。
シナリオライターとして私の役割は151人分のキャラとキャラ達の個人HPを考ることなのですが、このプロセスがとっても楽しいんです!何も思い浮かばずモヤモヤする日もありますが、良いアイデアが思いついた日の喜びはそれの何倍にも勝ります。
今のところ、20人ほどのNPCをつくりましたが、これからあと130人つくる過程の中で、創作のプロセスが苦しくなったり、やり方が突然わからなくなったり、万が一楽しめなくなった時の為に、この記事では、自分のアイデアづくりのプロセスを振り返りながら、創作の楽しさ忘れないように記録したいです。
私のアイデアづくりのプロセスには3つのステップがあり、さらには準備段階のステップ0があり、これらをサイクルとして繰り返すとアイデア作りが上手くいくように感じています。
ステップ1:アイデアがひらめく。
ステップ2:そのアイデアを調べる。
ステップ3:調べた情報をもとにアイデアを練る。
ステップ0:アイデアがひらめく土壌を耕す→ステップ①に戻り、繰り返す。
では実際に、私が最近思いついた一人のNPCを例に出しながら、最初のアイデア発想からアイデアを作り込むまでの過程を振り返りたいと思います。
ステップ1:アイデアがひらめく
このアイデアがひらめいた瞬間、それは2024年7月9日、本業の職場での朝の出来事でした。職場には常温のお水と冷水が出るウォーターサーバーがあるのですが、とある方が常温と冷水のお水をまぜて水筒に入れていたのをぼーっと見ていた瞬間、アイデアが突然降りてきました。
水と水をブレンドして、水カクテルを提供するバーを経営する「ウォーターバーテンダー」キャラがいたら面白いんじゃ…?
どうですか?思いついた瞬間、一人でニヤニヤしちゃいました。
ステップ2:アイデアを調べる
次に、思いついたアイデアをネットで調べてみたら、驚きの事実が次々と発覚しました。
アクアソムリエ
最初にびっくりしたのが「アクアソムリエ」という資格があることです。日本アクアソムリエ協会によると…
…なるほど!確かに、水に関する正しい知識がないと水素水ビジネスのような似非科学に騙される危険性がありますね。
更に調査を進めると、アクアソムリエの鶴田雅人さんがミネラルウォーター15種を飲み比べしている記事が見つかりました。
水なんてどれも似たようなものだと思ったら大間違い。ミネラルウォーターの飲み比べでは注目するポイントが多々あるようで、たとえば記事ではワインソムリエさながら、「浮遊物を確認」する鶴田さんの写真も掲載されています。
ん?この真剣なまなざし…どっかで見たことがあるぞ…あっ!
(((完全一致)))
リンツチョコレートの人だ!
お二人とも、何かを極めたプロの目をしています。私たちのゲームに登場する「ウォーターバーテンダー」キャラも水に関する知識が豊富なキャラにしたい!それにはまず、私が水の知識に詳しくならなければ。
そこで記事を読み進めると、よく聞く「軟水」「硬水」の定義を学びました。
ふむふむ。ミネラルウォーターの味の違いは、カルシウムとマグネシウムの含有が硬度を決定して、そのほかにもナトリウムやシリカのようなミネラルが味に影響を与えるようです。
この知識は『Danchi Days』に応用できそうです。ゲーム制作日記#2で説明しましたが、ゲーム内でプレイヤーは五感を研ぎ澄まして、聴覚や味覚などの感覚を敏感に感じ取ることができます。
これを、ミネラルウォーターの味に応用すると、たとえば「マグネシウム」の味覚は●の形をしたグラフィックにMgという文字、「カルシウム」は■にCaの文字で、「感覚ゲーム」に登場させます。まずは「●Mg」を避けながら「■Ca」を集める、次にその逆を成功させる、という感じの「感覚ゲーム」のルールを設定します。プレイヤーがクリアすれば主人公はミネラルウォーターの味を、カルシウムとマグネシウムの味を分別して、味わいながら正確に感じ取った!ということになります。
いわば、「利き水」ゲームです。
利き水大会
さて、「利き水」を主人公にミニゲームとしてクリアさせよう!と思いついた後、「利き水」というキーワードもネットで調べてみると、あらびっくり、すでに「利き水大会」を社内で実施している会社がありました!
なんて楽しそうな会社なんだ!
そして、「利き水」がすでに世の中にあるアイデアだとしたら、「ウォーターバーテンダー」というアイデアもすでにあるんじゃ…?と思い「水バー」とググってみたら、なんと…
日本全国の水道水を味わうバー
「日本全国の水道水を味わうバー」なるものが2013年に期間限定で代官山にオープンしていました…!
いやぁ…
水の世界ってほんとうに奥深い…!
最初に水と水をブレンドして、水カクテルを提供するバーを経営する「ウォーターバーテンダー」キャラを思いついた時は、とってもユニークなアイデアだと思ったのに、調べてみたら、似ているアイデアの前例が少なくとも3つもありました。
しかしながら、似ている前例があるからといってつまらないアイデアだ、ということではありません。そして、水と水をブレンドする「水カクテル」、という点で私のアイデアは前例には無いオリジナリティがあると思います。
ステップ3:アイデアを練る
さて、アイデア作りの次のステップではキルアのごとく、アイデアを練ります!
アイデアを練る、というのは、調べたものをベースにアイデアを発展させながら、自分たちのゲームに合うようにアイデアを作り込むことです。
まずは、上記で調べたことをもとにNPCの名前を決めました!
ウォーターバーテンダーのイズミさん
名前:水道橋 和泉(スイドウバシ イズミ)
年齢:20代後半
職業:ウォーターバーテンダー
どうでしょうか?水道水とミネラルウォーター、という二つの要素を苗字と名前に詰め込んでみました。ちなみに、イズミさんのグラフィックはまだ開発中なので、『さくらももこのウキウキカーニバル』から、水色の髪のキャラのドット絵を拝借しています。
主人公が最初にイズミさんに出会うのは彼女が経営するウォーターバーです。そこで夏祭り開催のお知らせチラシを渡して招待すると、新規オープンしたウォーターバーが忙しくて、夏祭りにいけるか分からないと言われます。果てして彼女を夏祭りに参加させる方法とは…?!
ウォーターバー公式HP
次に、彼女が経営するウォーターバーの公式HPを考えました。ゲーム画面は開発中のため、Google Sheetsのスクショをご覧ください。
どうでしょうか?関西弁のキャラにしてみました。モデルはもちろん、この方です。
ウォーターバーのキャッチフレーズ、「水って200種類あんねん」はアンミカさんの名言「白って200色あんねん」を転用させていただきました。
ウォーターバーの裏メニュー
更に、『さくらももこのウキウキカーニバル』に登場する、ナスミンというキャラクターのかくしページにも触発されました。
ナスミンのHPのように、ウォーターバーの公式HPのどこかにも、目立たないリンクを置こうと思います。そしてこの隠しリンクをクリックすると…
上記のような裏メニューのページに行けます!この裏メニュー通りに注文すると、主人公はウォーターバーで「利き水ゲーム」ができます。利き水に成功したら、イズミさんは主人公の水に対する知識と感度に感激して、夏祭りに来てれくれるでしょう。
ちなみに、裏メニューの用語などは実際のカクテルづくりの技法やグラスの名前を参考にしています。
そして、この裏メニューの注文方法は大好きな、『HUNTER × HUNTER』一巻のこのシーンに影響されてます。
間違えて、プレイヤーが裏メニューを注文してしまわないようにウォーターバーの通常メニューを考えました。ベースウォーター(10種類)× アクセントウォーター(10種類)× 混ぜ方(4技法) x グラス(10種類)で4000通りものコンビネーションが可能です!これで、隠しページをみつけないと、正確に裏メニューは注文できないでしょう。
こうして、NPCの「ウォーターバーテンダーのスイドウバシイズミ」さんが誕生しました。自分で言うのもなんですが、結構面白いキャラができたと思います。まさか、職場で見かけたウォーターサーバーの日常の一コマから得たヒラメキが、最終的にいのちを持ったキャラクターになるなんて!このように予想外の着地点につく時、私は創作が本当に楽しいと感じます。
ステップ0:アイデアがひらめく土壌を耕やす
以上、最初にアイデアをひらめいた瞬間からキャラの誕生までの道のりを辿りましたが、最初のひらめき以前にも、このキャラの誕生は「準備」されていたんだな、と感じています。
ひらめく前からひらめく準備していた、というのはどういうことかというと、吉冨賢介さんのアイデアづくりの説明が分かりやすいです。
本格的にゲームプランナーとして活動し始めてまだ1ヶ月程度ですが、吉冨さんのいうクリエイターの経験則、とっても共感できます。以下、吉冨さんの言う①②③が今回のアイデアにどう当てはまるか振り返ります。
「水を飲む」というテーマをゲームにどう結びつけるか
まず、「①普段からひたすら[ゲームの]アイデアを考えている」ですが、『Danchi Days』には、水飲み場を登場させようと、ゲーム制作当初からずっと考えていました。「水を飲む」というテーマをどう、ゲームに結びつかせるかという問題はずっと私の頭の中にあったようです。
そして、「②ゲームの情報、それ以外の情報をたくさんインプットする」に関しては、ここ数ヶ月の間に私が触れた情報を振り返ってみると、いろんな関連情報が密接に繋がり、今回の発想に至ったんだなと発見しました。一つずつ紹介します。
闘茶
まず、「利き水」を思いついたのは、先月「闘茶」という古代中国から日本に伝わった利き茶を応用したギャンブルゲームを知ったことが深く影響していると思います。お茶でギャンブル?!何それ!と印象深く心に残りました。
井戸水
更に、自分の記憶を探ると、私は今から4ヶ月前にも「水を飲むということ」に対して深く感動した出来事があったことを思い出しました。
それは災害復興学が専門の宮本匠先生が新潟県の旧川口町(現長岡市)の人々と接する中で聞いた一つのエピソードを読んでる時のことでした。
私はこの文章を読んだときハッとしました、なぜなら、数日前に全国の古民家を屋外展示している、川崎市立日本民家園でたくさんの古井戸を見て、特に何も考えず素通りしていたからです。
当時の日記を読み返すと自分が感じた衝撃についてテンション高めに綴られていました。
こうやって書き出してみると、2024年7月9日に職場のウォーターサーバーを見てNPCキャラをひらめいた瞬間よりもずっと前から私は「水を飲む」というテーマを考え、意識してきたようです。今回の制作日記を書くまで全然気づかなかったです。
こう振り返ってみると、何がどう将来のアイデアに結びつくか、予想がつきませんね!これからもゲーム制作でアウトプットをしながらも、①お出かけする、②読書する、③人の話を聞く、という多様なインプット活動も欠かさずしたい、という思いを新たにしました!
多様なインプットがあったからこそ、吉冨賢介さんが言うアイデアづくり最後のステップ、「③①②を満たした上でリラックスすると②で集めた情報をゲームと組み合わせたアイデアを脳が勝手に思いつく」ということができたのでしょう。いわば、アイデアがひらめく土壌を耕す、面白いアイデアづくりのステップ0です。
「あれはもう知っているよ」ではなく「あれって面白くない?」
ふぅ…書けば書くほどアイディアがアイディアを呼び、予想外に記事が長くなってしまいました。
最後に、創作する上で、心がけたい姿勢についての引用で記事を終わりたいと思います。
「あれって面白くない?」、このセリフが表している、「何ごとも面白がる姿勢」というのは私たちが『Danchi Days』のゲームプレイで表現したいことでもあります。
「水を飲む」って面白くない?「ミネラル成分によって水の味が違う」って面白くない?「水の味が結婚の決め手になった時代」って面白くない?「ウォーターバーテンダーという職業があったら面白くない?」などなど、今回は「水」というテーマから出発しましたが、Danchi Daysではもっとたくさんのテーマを詰め込みたいです。ご興味のある方は、制作活動の応援、よろしくお願いします!
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