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彼のランウェイとラナウェイ

少し横長の手提げ鞄を両手に持ってショッピングモールを歩いていく髪の長い男は笑いを堪えきれない、これから起こる大惨事を想像して。これだけの爆弾が一度に爆発したらどんな事になるんだろうな、歩くリズムに合わせてカチャカチャと鞄の中から聞こえる音に耳をくすぐられながら男はそんな風に思った。すれ違う家族連れや恋人達の楽しそうな顔を視界の端に感じながら、この中のどれぐらいの奴が絶望の色にまみれて外に飛び出してきて、どの顔は見当たらないんだろう。そんな事を考えながら歩き回り、男は車に戻って鞄を開け、子供みたいに笑った。今や誰も使わないような大きな電卓がみっちり詰まっていた。

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