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意味はなくても意義のある選択がしたい。 Rootsコレクションの裏側

厄介な美しさを持つセルロースアセテートという素材


今年初めにリリースしたRootsコレクション、実は念願叶って商品化できたアイテムたちで、思い入れのある愛おしいシリーズです。

昨年、まだジュエリーのブランドを立ち上げる前、廃棄を減らす活動を色々していました。
もともとプロダクトデザイナーをしていたこともあり、次は端材を使った物作りにチャレンジしたい、と知人に伝えると「近所の工房にメガネフレームの端材がたくさんある」という情報を教えてくれました。

こちらの工房さん
https://meganeya-strike.com

すぐに連絡をとりその工房に伺ってメガネフレーム製作の現場を見せていただきました。オーダーメイドのメガネ制作における高い技術を持った工房で、一点一点職人さんが作り上げていく工程は、目を見張るような光景でした。
そこで生まれるメガネフレームは形から色合い、質感まで心打たれる美しさで感動しました…!
そしてお話に聞いていた通り、片隅には山盛りのメガネフレームのカケラが。

ここの工房では「セルロースアステート」という植物由来の素材でできた板をメガネの形に切り出して作っています。その際にどうしても端材が出てしまうそう。
溶かして型に流し込んで鋳造する製法では加工ができず、職人さんが切り出して研磨しなければならない、少し手のかかる素材です。

加工が難しいとはいえ、こんなに素敵な素材を使い切らずに捨ててしまうなんてもったいない、どうにか生まれ変わらせたい!と思いました。
小さい頃から物に対する執着がすごい私は何かを廃棄するということが悲しくて仕方ないのです。物を生み出す「デザイナー」という立場になってからは余計にその思いが強くなりました。それが埋立地の問題や気候変動につながっていると考えるとどうしても湧き出てくる使命感と衝動に突き動かされ、今こうして廃棄の問題に取り組んでいます。

この端材で何か作りたい、と思ったは良いものの、自分で試行錯誤してもやはり加工が難しく、思うようなクオリティには到達できなかったので、その時は渋々あきらめました。アップサイクルが注目される昨今、質の低いものやすぐに壊れてしまうものをたくさん見てきたので、物作りをするなら「次世代に受け継いでいけるもの」と決めていたからです。

半年ほど経ったある日、ジュエリーブランドの立ち上げを進めている中で「あの時のメガネフレームの素材、ジュエリー職人さんなら加工できるかもしれない」と思いつきました。
ダメもとで頼んでみたところ、やってみましょうとお返事が!無茶なお願いにいつも柔軟に挑戦してくださるジュエリー職人さんに感謝…。

試しに研磨してもらった端材と、デザイン画を元に作っていただいた最初のサンプルがこちら

お〜〜〜ツヤツヤ!オニキスの石みたい!だけど透明感もあって独特の見たことのない綺麗な質感!感動です。
その後カラーやフォルム、サイズ感の微妙な調整を繰り返し、このRootsコレクションが出来上がりました。

意味はなくても意義のある選択を


メタル部分には他のコレクションと同様、レントゲン写真などに含まれる銀を抽出した銀純度99.9%のリサイクルシルバーを使っています。

本当は、端材を使わない方が簡単に安定した素材の調達ができるし
リサイクルシルバーでない普通のシルバーの方が安いし、
銀の純度を落とした方が量産しやすいです。

でもこの世界に本当に生み出したいものかどうかを考えた時「意味はなくても意義のあるものを」という想いでこの選択をしています。このジュエリーには機能(意味)はないけれど、存在する意義はあると思っています。

強さを身につけるという体験

私のブランドRINMOは自然界の強さをコンセプトにしています。身につけた瞬間強くなれる気がする、ジュエリーを着ける瞬間の体験を大切にデザインをしています。

このシリーズのイメージソースに選んだのは「植物の根」。根は見えない部分でありながら、植物の地表部を支え、栄養を吸い上げて全体に送り、力強く地下を掘り進む根幹でもあります。土の下でひっそりと、植物の生存を支える根を本質や支えの象徴と捉え「根」の断面をモチーフにしました。


このシリーズはリング、イヤカフ、ピアスのラインナップです。
中でもイヤカフは自分でも「今日はどのアクセつけようかな」と悩んだとき必ず手に取ってしまうアイテムです。鼈甲とも琥珀とも思えるこの透明感がたまりません。ダークな色味とメタルの組み合わせが毒っ気があって可愛いんです。

それからこちらのリングもこだわりにこだわってデザインしました。

石部分が台座から突き出した形になっており、生命感と躍動感溢れるデザインに。少し複雑なフォルムのため、通常のリングとは工程が異なり、アナログな彫金技術で制作されます。
職人の手により既定の号数に徐々に近づけながら細かな調整と切削、鍛造を行っています。


メガネの端材を使った石部分は今はブラウンとブラックを展開しています。
現在、限定のカラーを製作中です。


端材を提供していただいた工房の方からは「綺麗な素材なので捨てるのが忍びないと思っていたが、加工する余力がなかったので新たな命を与えてくれてよかった」とお声をいただき、嬉しい限りでした。

またこのシリーズのアイテムはネックレス、チョーカー、ブレスレットなど増やしていきたいと思っているので、お楽しみにお待ちください。

Rootsアイテムの一覧はこちらからご覧いただけます :)





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