スポーツ科学の視点から考えるハムストリング肉離れの予防
これからオフシーズンになる様々なスポーツ競技では、シーズン中に蓄積された疲労に加え、寒さも相まってアップ不足や無理な力発揮により肉離れが起こる可能性が高まります。中でもサッカーとラグビーで発生する全外傷の約15%を占めるとされるハムストリングの肉離れは、選手個人とクラブにとって大きな損失をもたらすため、その予防は極めて重要です。ハムストリングの肉離れは、スプリントの遊脚後期から立脚初期、ボールキック時等の高レベルのエクセントリック筋活動時に主として大腿二頭筋に発生します。発生原因としては、加齢、受傷暦、柔軟性の欠如、疲労の蓄積、ウォームアップ不足等が指摘されていますが、とりわけエクセントリック筋力とその左右差は、発生リスクに大きく影響するとともに、トレーニングよって改善可能な要因であることが最近の研究によって明らかにされています(Opar et al., Hamstring Strain Injuries, Sports Med. 2012)。
発生リスクに対する年齢と筋力の関係
下のグラフは、ハムストリングのためのエクセントリック筋力評価システム ”Nordbord” を用いて、500名を超えるサッカーやラグビーの選手を対象として実施された研究結果(Timmins et al: 2015, Opar et al: 2015, Bourne et al.: 2015) をまとめたものです。
これを見ると各年齢におけるハムストリングの筋力とケガの発生リスクの傾向が見えてきます。縦軸が発生リスクで、1.0が発生可能性100%を意味します。横軸がNordbordによって計測されたプレシーズン終了時点、すなわちシーズン開始直前のハムストリングのエクセントリック筋力です。
年齢別の曲線から、筋力が高ければ高いほど(グラフの右端に行けば行くほど)、肉離れのリスクが低下し、逆にある一定の筋力水準に満たない場合、急激に肉離れのリスクが高まることがわかります。ちなみに種目ごとのラインはその種目の平均値を示します。
また、年齢が高くても、筋力を高めることで肉離れのリスクを低く抑えることが可能なことがわかります。
これらの指標と測定したハムストリングの筋力を比較することで肉離れのリスクを大幅に減少させることができます。
受傷暦のある選手は特に筋力向上が重要
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