アルバム
アルバムをめくると幼い自分や若い両親の写真が並ぶ。入学式のような記念の日や家族旅行のときに撮った集合写真と風景がほとんどだ。
写真には記憶の引き出しを開けるための鍵という役割がある。その写真を見れば旅行の思い出も家族や友人との思い出も瞬時に思い出せる。
アルバムには楽しかった幸せな思い出か詰まっている。
幸せ?
このアルバムに詰まった幸せとはただの楽しい思い出だろうか?
東京に行って鳩を追いかけた、東京タワーを階段で登った。沖縄に行ってマングローブを見た、社会の教科書の写真と同じ場所を見つけた。和歌山で鯨を見た、パンダはそっぽを向いて寝ていた。
これは、この写真に写っている子どもが持つ思い出だ。
全ての写真を俯瞰して見る。
産まれたばかりの赤ちゃんがみるみる成長して幼稚園へ、小学校へ、中学校へ。旅行先でピースサインをする子どもの身長はいつしか親を超える。若かった両親の顔には皺が増え、髪が減る。
家族の歴史が刻まれている。別のアルバムには私が生まれる前の写真が入っている。祖父母が持つアルバムには両親が出会う前の写真が入っている。
アルバムを開く度、何十年も昔の記憶が語られる。家族の歴史が語られる。
何を写真に撮ろう。
歳を取った時、何を思い出したいだろう。
私は日常を思い出したい。ひとりでいるときも、大切な人といるときも、これが幸せだと思える瞬間を残しておきたい。決して忘れないために。