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[SANDスクープ:平壌公開裁判映像] 現地高校生 韓国映画・音楽視聴罪で公開公開裁判「12年労働教化刑」

平壌で高校生たちが韓国映画やミュージックビデオの視聴などにより「反動思想文化排斥法」違反罪で公開裁判を受け、12年の労働教化刑の判決を受けた場面が公開された。

SAND研究所が入手した北朝鮮内部の映像資料「首都であらゆる反社会主義、非社会主義現象を一掃するための闘争をさらに強化しよう」の内容だ。

この映像は北朝鮮当局が北朝鮮内で蔓延する韓流(K-カルチャー)の掃討のため、2020年12月に制定した「反動思想文化排斥法」の実施過程で摘発された事例を集めて編集した内部用住民の教育用映像である。

映像には平壌の高校生たちが韓国映画やドラマ、ミュージックビデオ、音楽などを視聴、流布し、韓国の話し方まで模倣したという内容が登場する。また、韓流の影響を受けた平壌の女性たちの服装やヘアスタイルを批判し、顔や実名、自宅住所まで公開して恥をかかせる場面もある。その他にも平壌に現れた「事実婚」現象などについて「社会の雰囲気を汚染する」と非難している。

この映像を通じて韓流文化が北朝鮮自ら「革命の心臓」と呼ぶ平壌まで広がった事実が確認された。北朝鮮内部の思想・文化的変化が全域に強く広がっている点を示唆している。

韓国映画視聴罪で公開裁判を受け、12年の刑を宣告されたリ・クァンボク、ムン・グァンリムの写真と学校の担任教師、青年同盟責任指導員の名前まで公開している。 (写真:映像キャプチャ SAND研究所)

懲役12年(労働教化刑)「若者たちは傀儡(韓国)文化のせいで未来を台無しに」

映像のナレーションでは「腐敗した傀儡(韓国)文化は学生少年たちにまで伝播し、成長する新世代を反動思想文化の犠牲にしている」と述べ、具体的な事例を公開している。

映像によると、昨年平壌市青年公園野外劇場で1000人以上の学生たちが集まった中、東大院区域三馬高級中学校(高等中学校)の学生、リ・クァンボクとムン・グァンリムに対する公開裁判が行われた。判決文によると、彼らは2021年11月から2022年1月のあいだ、韓国映画や音楽、ミュージックビデオ20曲を視聴または流布を手伝ったという。

彼らは16歳の未成年者であるにもかかわらず「反動思想文化排斥法」によってそれぞれ12年の労働教化刑を受けた。映像には頭を丸刈りにして囚人服を着たリ・クァンボクとムン・グァンリムが頭を下げて裁判を受ける姿や、安全員(警察)たちが彼らに手錠をかける場面が映っている。また、中学生と思われる女子生徒に安全員が手錠をかける場面も登場する。

映像は彼らが「傀儡文化(韓流文化)に誘惑されて分別なく振る舞い、最終的には自分の前途を台無しにした」と非難している。

北朝鮮は2020年12月に反動思想文化排斥法を採択し、韓流に対する取締りと処罰を強化している。映像で公開された事例以外にも地方で韓国の映像物を視聴、流布して摘発・処罰された事例が複数のルートを通じて伝えられている。

韓国映画視聴罪で公開裁判を受け、12年の刑を宣告されたリ・クァンボク、ムン・グァンリムの写真と学校の担任教師、青年同盟責任指導員の名前まで公開している。 (写真:映像キャプチャ SAND研究所)

処罰の水準も次第に厳しくなっている。今年8月、両江道慶山で10代の少年が「南朝鮮のドラマや音楽を見て聞き、友人に流布した」という理由で公開処刑されたことが伝えられた。

いっぽう11月26日、ソウルでは韓国政府統一部(省)が行った「北朝鮮住民たちの外部世界情報へのアクセス環境と増大方案」をテーマにした討論会で、今年6月黄海南道青端郡でテレビチャンネル固定装置を解除し、韓国の映画やニュースをこっそり見た農場員2人が公開処刑され、それより前の4月には平壌で世界のニュースと街の風景などが入ったファイルを流布した疑いで摘発された偵察総局所属の軍官が公開処刑されたという証言が出た。

女性のファッションも批判 名前住所まで晒し…

また、今回SAND南北コリア研究所が入手した動画では、北朝鮮当局が韓流の影響を受けた住民たちの服装やヘアスタイルも取り締まりの対象としている様子も収録されている。

映像では「一部の市民や青少年学生たちが南朝鮮の傀儡たちと資本主義国の出版宣伝物を見て広める過程で、社会に傀儡文化や西洋文化、洋風が浸透し、人々の中で服装や髪型を奇怪にし、聞くに堪えない傀儡言葉のアクセントまで真似し、事実婚生活をするような異色の現象が現れ、首都の健全な雰囲気を汚染している」と述べている。

映像は平壌市大城区域英北洞41人民班に住むチェ・オクヒョン氏が膝が露わになるズボンを履いて街に出たことを「異色の服装」と問題視し、顔と名前、住所まで公開している。

チェ氏が取り締まり員に「何が悪いのか」と尋ねたところ、「自分は何も悪くないとして厚かましく振る舞うチェ・オクヒョンの態度は、彼が腐った西洋文化、洋風にしっかり浸っていることを如実に示している」とし、「異色の服装に対して何の恥じらいも感じない彼の精神状態は更に哀れだ」と非難している。そして「平壌市民の資格がない」とした。

こういった様子について、平壌出身の脱北者は「こんなふうに公開放送で批判されると平壌から追放される」と話す。

韓流視聴罪で公開裁判を受けた後、手錠をかけられる平壌市の青少年たち。(写真: 映像キャプチャ SAND研究所)

その他、映像は女性たちがタイトパンツを履く問題も指摘している。映像は万景台区域英山洞37人民班に住むシン・ヤンシム氏がタイトパンツを履いて街に出た様子を映し出し、「高尚で文明的な我々の美しさとは到底見当たらない服装」と批判している。

現地では自首を奨励も…

SAND南北コリア研究所の独自調査によると、北朝鮮は韓流取り締まりと同時に住民たちの自首を奨励していることが明らかになった。北朝鮮当局は住民に対し「金正恩元帥が今回、自ら罪を告白した人々に対しては誰であれ問題視せずに許してやるように」という指示を出していると宣伝していると伝えられている。

住民対しては家庭や職場、学校に保管している宗教や迷信関連の冊子や映像物、韓国や外国の映画やドラマなどの不純な宣伝物を全て安全保衛機関に自ら捧げるよう求めているとされる。また、麻薬を使用、密売する者や性録画物(ポルノ)を見たり広めたりする人々にも正直に自首するようにという指示が出されている。

北朝鮮はこのような宣伝動員事業の結果、平壌市西城区域だけでも1000人以上の住民と学生が自首したと主張している。しかし、北朝鮮が「自首すれば許す」という誘いを使うようになったのは、一方的な統制政策が失敗したことを示唆している。過去にも韓流取り締まりを強化し、処罰の水準を高めたが、減少するどころかかえって拡大すると、強硬策と和解策を併用することになった事例があった、という見方が出ている。

ここ最近、政権10年を超えた金正恩政権の独裁性が強化され、時代に逆行した過去回帰政策が続いている。北朝鮮の文化芸術界も変化を求める民心を反映した革新的な芸術作品の創作より、退屈な金正恩讃歌と愛国心に包まれた作品しか作り出していない。

「壊れたレコード」を繰り返し再生するような古臭い北朝鮮の文化芸術が青少年や住民から無視されるのは当然である。韓流を通じて韓国の発展状況を知った北朝鮮住民の心は、既に韓国主導の朝鮮半島統一を期待しているといえる。

(了)

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