印象深かったお店の話

食事は、今も続いている。人類の営みは、食事の連続だったと言っても、意義を唱えるものは、そう多くはあるまい。人類に進歩という表現があるとすれば、進歩が食事という母体の中から誕生したと言っても、暴言だと言いきれる人は今はもういまい。大航海時代は、ヴェネツィア商人の香辛料の値上げに対して、ジェノヴァ商人が香辛料を自分達で追い求めたという側面もあるかもしれない。肉の保存のために膨大な量の血と涙と知恵が費やされていく。その中で、様々な人々の夢と野望が燃え尽きていく。だが、いつの世も、その中で世界を良きにしろ悪しきにしろ、変えようとする野望を持った人間がいた。その野望が世界をどう変えたか、それを評価するのはその時代の人々に任すしかないのかもしれない。なぜなら、世の歴史家の評価など、歴史家の生きた時代によって様々に変化して行くものだからだ。これはただ私が思い出す、一番印象深いお店の話だ

銀河英雄伝説のパクリです

BGMにどうぞ~

数年前に新宿の幡ヶ谷勤務していた。

当時の仕事は、ITの保守点検とクレカなどのカードの普及、メンテナンス要員で、商店街をとっても巡っていました。住んでもいなければ、遊びに行ったこともない地域だったので、Twitter、インスタで、かの地にある店舗を鬼のように調べて、店名は何で、何を扱って~と全て覚えました。

その折に、インスタグラムで、どうやら、木曜日のお昼だけに、ランチ営業をしているという謎の定食屋さんを見つけました。

投稿にはいつも、お料理は載せていない。メニュー表だけ。

書道をやられていたんでしょうね…とっても達筆なメニュー表でした。

タグ付けをするでもない、投稿に#を付けて文章にするでもない。
間違いなく素人が投稿していた。

インスタは基本的に写真で画を心に訴えかけるものなに、文字だけだ。この文字を投稿にしている書道家なのか…
それにしてもあまりにも分不相応な使い方だ。ポテンシャルが高そうなこのお店に対してとても興味が湧いてきた。

当時の私は自前で作った弁当族でした。お昼休みに外に出ると伝えた日には、社長から、体調が悪いのかと聞かれました。それ程レアだったのでしょう…w

いざお店に向かおうと思ったのですが、とんでもないことがわかりました。

住所がない!

スクロールしていくうちに最初の投稿まできてしまった。住所がない。
思い返せば、グーグルマップのピン立てた記憶ない!ジーザス!
今までみんなどうやって行ってたんだよwww

慌ててコメントしました。レスが来るかな…とりま、駅の方に向かっておこう…

3分後に連絡がきた…

「駅の北口を左手にいってー」

おっい!言葉のみかよ!!!笑

「投稿に、地図を載せたので良ければご覧くださいませ。」

(全米が思った) #それを先に頼む

達筆な地図だ。水墨画の人物画をみている時の気分と同じだった。人間の感受性とはこうも豊かに表せるものかと驚いた。□をなんと柔らかくかいていたか…朝の起きたときにあったあの温かな日差しを思わせる温かい四角…忘れてしまった(いっておきますが私は美術には基本的に造形はないです)

地図の示すところに行くと、インスタの名前とは明らかに違う喫茶店がでてきた。間借りしてるのだろうか…お店の前にはA看板があった。インスタの投稿のメニュー表である。

これだ!

全面ガラスの扉を開けて、木製の家財がひしめく店内に入った。漫画棚やラジカセがある。雰囲気だ。掃除は行き届いてない。いい意味で。

店内には、お客さんは私以外に1人しかいなかった。既に召し上がっておられた。

60は超えたであろうばあさんが2人カウンターにいた。

だからというわけでないが、カウンター席に座った。
私の体重を支え切れそうな椅子が他になかったことは内緒にしておきたい。

ばあさん:「注文はどうしましょうか」

私:「Aセットでお願いします!」

ばあさん:「はいよ~」

ばあさん達は、2人で話をしながら用意していた。

私の後に来たお客さんは2人だけであった。

常連であるかはわからない。皆話はしないのだ。2人の会話している声のせいか静かなのに緊張しない落ち着ける雰囲気だった。

私はインスタを見て来ました。と話しかけるタイミングを見失っていたがそれはそれでいいと思わせる雰囲気だった。ベートーヴェンの悲愴の序盤が流れててもいい。(最初にあった動画である)

味も良かった。当時弁当族であるからして、基本冷凍と作り置きのおかずだったので、温かいうえに、匂いがあるものは最高だ。私の場合、この空気感だけで、リラックスできる環境だった。喫茶店ならまだしも、定食屋なのだから…

私よ ここは喫茶店です…そうだった…

話をしながら料理を盛り付け配膳していたり、料理人自体がタバコを吸いながら厨房で鍋を握っていたり、ああゆうお店にしかないゆったりと和める環境は好きだ。信頼できる。


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