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ロールキャベツとフレンチトースト

わが家のちょと変わった
ロールキャベツ・ロールしないキャベツを紹介したが

どうしてわが家のロールキャベツが和風のしょう油味なのかというと
私が実家でこういうロールキャベツを食べていたからだ。

母のロールキャベツはしょう油味で
一つが大人の握りこぶしほどあって、どんぶりに入れて食べるものだった。
キャベツの中身はひき肉と玉ねぎと干しシイタケの戻したもので
大鍋の中にぎっしりと詰めて煮込んでいた。
もちろん煮込むスープには干しシイタケの戻し汁が入っていた。
ご飯をよそって、どんぶりにロールキャベツを入れて
家族それぞれが入れ替わりでテーブルを離れて
台所にお替りを取りに行った。

もうひとつ母の味を。
子どもの頃、母が台所で見たことのないものを作っていた。
食パンを深皿に入れて、牛乳を注ぎ
パンにしっかりと牛乳を吸わせてから
フライパンを火にかけて、バターを入れた。
フライパンの中の溶けたバターを軽く一回ししたところに
たっぷりと牛乳を含んだ食パンを入れると派手な音がした。
パンの上に薄切りのハムとチーズを乗せておいてしばらく焼いたところで
もう1枚のパンを載せて
二つのフライ返しで2枚のパンをはさんでそのままひっくり返し
またしばらく焼くと出来上がりだった。
牛乳を吸って柔らかくなったパンにバターのおいしい焦げ目がついて
パンの間から溶けたチーズがちょと顔を出していた。
ナイフとフォークで食べたが
それまで食べたことのない食感と味で、有頂天になった。
「これはね、フレンチトーストっていうの。」
そうか、このおいしいパンの料理はフレンチトーストっていうんだ。
テレビの料理番組でやっていたらしい。
その後
ロールキャベツが手の平にちょこんと乗る大きさで
ケチャップ味かコンソメ味で
フレンチトーストが卵も使って焼いていて
そこにグラニュー糖とシナモンを振ったものだと知ったのは
大人になってさらに数十年経ってからのことだった。

それでも自分にとってのフレンチトーストとロールキャベツは
母が作ってくれた、あの料理なのだ。
これが家庭料理というものなのでないかい。

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