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事務処理能力

読書
実用

10年ほど前に
「武士の家計簿」磯田道史著 新潮新書 を非常に面白く読んだ。
加賀藩御算用者「猪山(いのやま)家」の物語で
刀ではなく、そろばんと筆で奉公するという生き方が面白い。
当時の一般的な武士にとっては
損得勘定や金銭の計算などは賤しいもの、だったのである。
さて
武士というものはその身分にともなう決まった支出があるのだが
実質的な収入が時代とともに減少し
時代劇によくあるように次第に困窮していった。
猪山家はあるときついに、このままでは破産すると考えて
なんと
家財道具をほぼすべて、売れるものは欠け茶碗まで売り払い
借金の4割を返済し、残りの6割は10年間無利子で分割返済
ということで切り抜けた。

なにしろ利息が年18パーセントにもなっていたので
手を打つのが遅くなればなるほど加速度的に破たんに向かうのである。
それでも計算をする気のない・できない・考えない武士たちは
いたずらに借財を増やして
ついには町人に武士の地位を売り渡すということもあったという。
家財を売り払うなど武士として非常に恥ずかしいのだが
これを家族全員一致協力して断行したのは
代々算用者の家らしく、データをもとに判断・決断できたからだろう。
読み進んでいくうちに
こまごまと記された「やりくり」を
猪山家の人たちと一緒になってやっているような気持になって
何だかものすごい達成感を感じてしまうのは私だけではないと思う。
この本は、猪山家の算用者らしい詳細な「家計簿」が元になっている。
あ、これは堺雅人主演で映画にもなりましたな。
というワケで
PTAでもボランティアグループでも
こういう事務処理能力に長けた人が「一人」いるかどうかで
その活動の質は大きく違うのを見てきたのでござる。
仕事はサクサク淡々と。


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